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赤ちゃんの心の探索

このシリーズでは「赤ちゃんの探索とはRPGのレベルあげである」という見立てから、身体の感覚、動かし方、物の運動パターン、人との関わり方をなどを学びうる赤ちゃんの探索環境のデザインについて考えています。

前回の記事では、Baby-Led Weaning=赤ちゃん主導の離乳食という食育の方法を ①好奇心に基づいて探索すること ②手と口の感覚と運動をたくさん使うこと という2つの観点から面白い!ということを書きました。

そして3つめには「心の探索」という面白さがあると思っています。それはいったいなんぞや?ということを書いていきます。

この記事で伝えたいこと
・赤ちゃんは大人の楽しみが伝染することで、事物の楽しみ方を学ぶ
・大人が子どもを面白がることで、子どもは何かを面白がることを学ぶ
・他者から共感されるあたたかさのなかで、探索は活発になっていく

楽しみは伝染する

楽しそうにしている人を見て嬉しくなる。楽しんでいる自分を見て、喜んでくれる人がいる。レモンを齧る人を見て、その酸っぱさを想像して顔をしかめることってありますよね。猫を可愛がっている人を見ると、その人と同じように心の中の「かわいい!」が弾けちゃうことってありますよね。こんなふうに、感覚と感情は他者に伝染します。

それは赤ちゃんでも同じです。大人の行為を真似しようとします。逆に、赤ちゃんの真似をすると喜ぶことがあります。

Baby-Led Weaningの手法を「楽しみの伝染」という観点から考えても面白いです。食べることは人間の偉大な楽しみの一つです。大人が美味しそうに食べるものを、自分も食べられるという喜びは、赤ちゃんを少し背伸びさせるように思います。

面白がり方を真似る

また、大人が子どもが食べる様子を「面白がること」も重要です。苦労をして食べている様子、時に涙目になったり、すっぱいヨーグルトを食べて顔をしかめたりする赤ちゃんを見て、微笑む親の姿が想像できます。

ここでもしお母さんが食べる様子を心配そうに、怪訝な顔で眺めていたら、表情から不安が伝染し、赤ちゃんは食べるのをやめてしまうかもしれません。親が子どもを「面白がる」ことで、子どもは何かを面白がることを学びます。

「学ぶ」の語源は「真似ぶ」にあるといわれています。徒弟制度のように師匠の背中を見て技を盗みながら学ぶことや、面白がり方を学ぶこと、あるいは「好きな人の癖が移る」というのも似ています。(佐伯胖『「学ぶ」ということの意味』に詳しく書かれています)

こんなふうにぼくたちは他者への共感から仕草を真似たり、心の中で「その人のように振る舞うこと」をシミュレーションしたりして、他人の楽しみが自分に伝染することがあります。

まなざしのあたたかさのなかで

赤ちゃんは「他者がどんなことを楽しんでいるのか」を観察し、共感し、楽しみ方を学んでいきます。しかし、誰にでも共感を示すわけではありません。赤ちゃんは自分に共感してくれる他者に共感します。赤ちゃんが探索していることを、怪訝な顔で不安そうに見守るのではなく、真剣な時は真剣な表情を、笑っているときは一緒に笑顔を浮かべて、感情を共有しながら探索を見守ってくれる他者のまなざしのあたたかさのなかでこそ、赤ちゃんの探索は加速していきます。

これって、大人でもそうですよね!安心して失敗できる環境(共感のまなざしエリア)のなかで、ある物を面白がる人を真似したり、物事をいじくりまわして思いつきを形にしたり、そんな自分自身のアイデアやアクションを面白がられたりして、好奇心ドリブンで成長していくってこと、ありますよね!

ぼく自身も「赤ちゃんの探索」について夢中になって研究できているのは、共感のまなざしを向けてくれる仲間がいることや、先端的な研究をしている先生方の存在や、noteをみて面白がってくれるみなさんの存在がいるからこそです。改めて、感謝なのです。

さて、次回はこの「フィジカルの探索」「心の探索」の双方を成立させる環境をデザインする方法について書いてみます!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、赤ちゃんの発達や子育てについてのリサーチのための費用に使わせていただきます。