創造性を育む「ゆるい空間」とは

今朝、ある若者たちが中学生の頃から居場所として使っていた建物をリノベーションしている写真をFacebookで見て、ふと思いました。「何かしらの空間づくりの経験は、創造性に対する自信をあげるよなぁ」と。建築物の成り立ちを知ることができるだけでなく「空間って作り変えていいんだ」という驚きと、自信のようなものを育むんじゃないかなと。

そう考えてみたら「空間と創造性って、めちゃくちゃ関係が深いし、ぼくが今やっている子育て家庭の間取りリサーチにもつながる話だ」と思い、バーっとキーボードを叩いていたらざっと4000字になったので、3つに分けて投稿します。次回の投稿は明日の夜!

1つめの今日の内容は以下のとおりです

・創造性とは「未知への勇気」である
・創造性がないのではなく、創造性への自信がない
・「固い空間」と「ゆるい空間」
・固い教室のなかのゆるいソファ
・「ゆるい空間」の3つの条件

創造性とは「未知への勇気」である

まず、創造性とは何か。これはぼくの偉大な先輩であるミュージアム・エデュケーターの会田大也さんのうけうりですが、創造性とは「未知への勇気」つまり「未知のものを前に身をこわばらせるのではなく、観察から見通しを立てて一歩踏み出す勇気のこと」であるといいます。「絵がうまい」とか「キレイな物をつくる」とかは、創造性の一部であって全てではないという話です。
(参照:「ものの見方のクリエイティビティを喚起する この街の未来をつくるアートスクール」会田大也

生きるということは大小さまざまな未知との遭遇の連続です。「他の人はこうしている」「前にこういうやり方で成功したことがある」というように、他者や過去を参照しながら毎日小さな勇気を出してなんとかやっていきます。

創造性がないのではなく、創造性への自信がない

創造性が高い人は、未知の状況を前にした時に目の前の課題を広い視点から把握し、過去・他者を参照しながら新しい解決法を編み出します。創造性を育むために、「メタ認知を高めよう」とか「歴史に学ぼう」とか、いろんなことを言えますが、最も重要なことは「自信」なのだと思います。

そんなわけで、創造性が高い/低いはありますが、「創造性がない人」はいないと思います。しかし「創造性に対する自信がない人」はたくさんいます。その自信をそぎ落とすのも、育むのも「空間」であるという仮説を提案したいと思います。

固い空間とゆるい空間

「空間とはなんぞや」という話ですが、面積やレイアウトなどの物性、そこにいる人、ルールや出来事やそれにともなう感情など、いくつかの側面から考えられます。そこに置かれる物が決められ、同じような出来事が繰り返される空間を「固い空間」と呼び、逆に物の置かれ方や、そこで起きる出来事が多様である空間を「ゆるい空間」と呼んでみたいと思います。

固い空間  : 物とその配置が決められ、同じような出来事を繰り返す
ゆるい空間 : 物とその配置が流動的で、さまざまな出来事が起こる

例えば「学校の教室」。授業のときは30~40個の机がキチンと並び、給食の時は6つや4つをセットにし、掃除するときは前後に集めます。こうしたレイアウトに対して「先生の授業を聞く」「クラスメイトと給食を食べる」「掃除をする」といった出来事がそれぞれ対応しています。

予想できることしか起こらず、ワクワクもハラハラもない「固い空間」は、見ず知らずのうちにそこを使う人の創造性をそぎ落としていきます。(学校の教室では「席替え」や「給食のメニュー」など、空間や出来事に変化があるものにはワクワクできましたけども!)

固い教室の中のゆるいソファ

では「ゆるい空間」とは何か。

ぼくが高校三年生の頃、文化祭の小道具で使ったソファと本棚がそのまま教室の隅に置かれていました。当然ながら、そこに人が群がります。漫画を置いたり、クッションを持ってきたり、放課後にカップ麺を食べたりして、ダラダラと過ごす場所ができあがっていきました。

教室は「固い空間」なのですが、そこにソファと本棚が現れたことで「ゆるい空間」が生成しました。誰もが気軽に使え、「この隅っこなら好きにいい」という暗黙の了解がありました。

ゆるい空間の3つの条件

このソファの周りに多種多様な出来事をつくった創造性は、誰か個人の爆発的なスキルではありません。ちょっとした偶然と「ゆるさ」です。創造性を発動させる「ゆるい空間」の条件について考えてみました。

可変性:置いてある物が動かしやすく、空間の構成要素をいじりやすい
安心感:物を動かしたりいじったりする行動に対して、安心感が得られる
許容量:関わる人の許容量が大きく、行動を後押ししてくれる

こうした「ゆるい空間」を見つけ、参加することが、創造性に対する自信を育んでいくはずです。創造性に対する自信が高い人は、「固い空間」と思われている場所を「ゆるい空間」に変える実践をしていると共に、他者が「ゆるい空間」を見つけ参加することを手助けしていると思われます。

これは、子育てにおいて「家」をどう選ぶか、「家」でどう暮らすか、という問題とも深く結びついていると思われるのです。

次の記事は、こちら。


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臼井 隆志|ワークショップデザイン

子ども向けワークショップの企画・運営が得意です。noteでは発達心理学や認知科学をベースにした「赤ちゃんの探索」、ワークショップの作り方やアートの見方についての「アート・ワークショップコラム」を連載しています。株式会社Mimicry Designディレクター

アート/ワークショップコラム

臼井隆志のコラムをまとめています。アート、ワークショップ、ファシリテーションについて書いています。
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コメント4件

めっちゃ面白かったです!!大学で、空間コースってのがあったのですが、空間って何?とずっと不思議に思っていました。建築畑の人はうんちくくさく空間について語りがちだけど、臼井さんの言葉は柔らかくてわかりやすくて好きです。次回も楽しみにしています🤦‍♀️💕
安心して学べる場所と「自らつくる」という行為は結びついているような気がします。"ゆるい空間"良い表現ですね。"ゆるさ"が誰によってどのようにもたらされるか、もしくは参加者が発見し掴み取るものなのか、そのあたり自分でも考えてみたいと思いました。
>ウルトラマン母さんありがとうございます!いま目の前にある空間が「ゆるい」か「固い」か、考えてみると発見がありそうです。
>うさこさん「ゆるさ」は誰にもたらされるのか!いい問いですね〜。管理者による許諾の問題でもあり、ユーザーによる介入の問題でもありますね。その両方が交わる感じというか。
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