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今日のたとえば006 曲がるときの合図

金曜日は駅前のスーパーのヨーグルトが安くなるので、いつも4つほどまとめて買って帰ります。ほかにもバナナ2房とキウイフルーツが2つ、妻に頼まれた生蕎麦が1束入ったビニル袋を右手にぶらさげながら歩いていると、うしろからカゴが前にも後にもついているタイプの自転車に乗った小柄なおばさんがぼくの右側から追い抜き、すっと左手を真っ直ぐ、飛行機の翼のように伸ばしたので、何かと思ってみていたらそのまますーっと左側に曲がっていきました。

あれは合図だったのかと気づくのに少し時間がかかったけれど、左手を指先までピンと伸ばす仕草のおくに日常にはないハリのある線が見えました。声をかけるでも、ベルを鳴らすでもなく、ぼくの歩く速さからしてもぶつかるような危険のない距離だったけれど、その合図のおかげで、左に曲がる彼女を見送ることができました。小さなやりとりをしたくなって、どうも、とかるくおじぎしてみました。

見知らぬ人の手と語る2秒の話でした。

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