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与沢翼の功罪 フリーエージェントスタイルは敗北したのか?

はじめに

2014年4月26日の夕方、与沢翼氏が自身のフェイスブックで突然、「税金が払えない」と破綻を宣言した。その直前、私は彼の友人の七星明氏のセミナーに出ていて、七星氏は「明日、与沢さんに会うんですよ」と語っていた。

この段階では彼を知る日本中の大多数の人が、与沢翼=小太りの金持ちという認識だったに違いない。おそらく七星氏も与沢氏のフェイスブックの記事を読んでびっくりしたことだろう。

「秒速で1億円を稼ぐ」と豪語していた男が秒速でホームレスに!

とマスコミは騒いだ。

私は5月19日に渦中の与沢氏に会う機会を得た。

知人の天野雅博氏が与沢氏と対談したいとブログで公開オファーをしていたのを見て知人のライターに相談し東京スポーツでの紙上対談が実現した。この対談は、まもなく、皆様の目に触れることだろう。

(対談の裏話をラジオトークで語ったので追加)

本書では与沢氏が提唱していた「フリーエージェントスタイル」について検証したい。

2014年5月21日 ハイパーノマドクリエイター、作家、臼井正己

2020年5月24日つのだゆうきさんが購入してくれたので加筆・修正

1 2012年8月22日

 2012年8月22日、私はサンクチュアリ出版で「第1回臼井正己トークライブ」を開催した。このトークライブのサブタイトルは「フリーエージェント時代を幸せに生きるヒント」というものだった。

当時、与沢翼氏はネットビジネスに興味のある人以外には、さほど知られてはいない存在だった。

また、処女作『スーパーフリーエージェントスタイル』もまだ世に出ていなかった。そして、奇しくも前年の2011年の8月22日は与沢氏の最初の会社が倒産した日だった。

それから、わずか半年の間にたった1人で彼は5億円を稼いだ(自称)とされている。そして、そのノウハウを売ることで彼は最高月収1億5000万円を稼ぐことに成功する。流行語にもなった「秒速で1億円稼ぐ」の根拠となる数字である。

厳密に言うと月商をそのまま月収にカウントし、それを12倍して「年収12億円稼いだ」と宣伝していた可能性が高い。

また、直近に放送されたテレビ番組によると彼の会社の昨年の年商は25億円という表記になっていて(25億円が正しいのは本人に確認済み)、一部のテレビ番組で紹介されていた年商50億円からは数字が半減しているなど、数字遊びの感は否めない。

しかし、彼がネットを使ってビジネスをし、億単位のお金が彼の預金通帳に振り込まれたのは間違いのない事実だろう。そして、彼が失敗した理由は、自ら唱えるフリーエージェントスタイルを「結果的に貫けなかった」からである。

どこのフリーエージェントがスタッフを雇用するというのだろう。

仮にスタッフを使う場合でも固定給を払うのではなく、完全出来高制にするべきであったと思う。

2 自営業とビジネスオーナーの違い

ベストセラーになった『金持ち父さん 貧乏父さん』のシリーズ第2作にキャッシュフロークワドラントという概念が出てくる。

キャッシュフロークワドラントを、ざっくり言うと、人が収入を得る方法は4つあると著者のロバート・キヨサキは説いている。その4つとはサラリーマン、自営業、ビジネスオーナー、投資家だ。

そして、与沢氏は自営業の中でフリーエージェントスタイルという稼ぎ方をとり成功した。そして、自営業からビジネスオーナーに転身したつもりが、結局、自営業の枠から抜けきれずに失敗したと言えるだろう。

それでは自営業とビジネスオーナーはどう違うのか。1人で商売するから自営業で社員を雇えばビジネスオーナーなのだろうか?

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