②同志との出会いと白衣の顧問激怒

こんにちは、うすまさです。


前回、吹奏楽部に入るつもりだった僕が、ひょんなことから放送部に入部しました。


部室には10何人かの先輩らと、手前に4人の新入生、奥に顧問と思われる白衣の先生がいました。

新入生のいちばん後ろに座ると、とりわけはしゃいでる男の先輩が声をかけてくれました。


「なんかでかい奴きたなぁ。ていうか新入生少なくないw お前増えろよw」


無茶というかなんというか、いきなり絡んでくる先輩に僕は動揺しました。

この人は江上先輩、僕の一個上の人でした。


「部登録の紙、下だけ切って出してね」

部長と思われる人が言いました。


まだ“吹奏楽部”と書いた紙を出し、僕は書き直しました。

ハサミあったかなぁ....

リュックの外ポケットを探すと、たまたま奥に入っていました。

手を突っ込んで取り出すと、前に座っていた細身の男の子が声をかけてきました。


「このハサミ...よかったら、使って...」


「ん、おおう、ありがとう」


僕はもう、自分のハサミを手にしていました。

にも関わらず、ハサミを貸してくれた前の子。


なんなんだこいつ....まあ、気持ちはありがたいし使わせてもらおう。

彼の名前は井上くん。

細身で背が高く、人と話すのが苦手なタイプのようでした。

こいつとこれから一緒に部活か....上手くいくのかな....


その前に座っていたのは女の子3人。大人しい色白の子、背が高くスラッとした子、小さくて元気な子。

この5人でどんな毎日が始まるのか、僕には全く想像できませんでした。



最後の僕が紙を出したところで、部長挨拶が始まりました。特に大したことを言ってなかったので(たぶん)、内容はおろか名前すら覚えていません。


先輩方から順番に挨拶が始まり、各々が自分の分野を言いました。

「個人部門を主にやっています」

「主に番組やってます」

「校内放送メインにやってます」


楽しい雰囲気で進んでいくと、奥の水道橋博士に似た白衣の先生が声をあげていました。

「おい、さっきから聞いとったら個人部門ってなんやねん。アナ朗は個人じゃなくて、みんなでやってくもんや。だからいつも大事なところで他所に負けんねやろが」



全員がいっきに静まりかえり、僕は目が点になりました。

やべ、この先生厳しいタイプかぁ。てか、個人は個人じゃんそれ結局。失敗したかなぁこれ。


そう心の中で呟いた刹那、副部長の上田さんが言いました。

「先生、新入生の前で怒るのはやめて下さい」


いや、この先輩すげ。その度胸どっからくるの。


そしてまもなく次の順番の人が自己紹介をはじめ、僕にまわってきました。

「うすまさです。何ができるかよく分かってないんですが、よろしくお願いします」 


だってそうです、何するか全然知らなかったんですから。何とも言えないんです。

そして前の井上くんが

「井上です。何でもやります。よろしくお願いします」


何でもってなんだよ、バイトかよ。

心の中で僕は小馬鹿にしていました。

そして前の三人が話したあと、顧問の先生に。


「顧問の舟井戸です。今まで30年ほどずっと放送部の顧問をしてきましたし、自分も高校時代は放送部でした。先輩ら色々やってるから、新入生も色々ついていったらいいと思います。さっき誰かが『何でもやります』って言ったよね。うん、それがいいと思います、何でもやってみてください」


小馬鹿にしていた井上が褒められたことが、僕は少し尺でした。今思えば性格悪かったと思います。



その日の部活はそれでほとんど終わり、僕は帰り道、井上に話しかけました。

「よろしく、井上くん」

「あぁ、うん、よろしく」


ちょっと偉そうな返しをされました。どうやら、顧問の先生に少し褒められて鼻が高いようです。そんな彼に僕はますます腹がたちながら、この先の部活動に対しての不安がつのっていきました。

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