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静かで収束的な日々に長めのハグを

「下の歯の裏側に少し歯石があるので、削っていきますね」

13時間フライトを経て、ヘトヘトを過ぎた体にわざわざ鞭を打って、歯医者にきた。口を大きく開くには、まだまだ力不足なほどに疲れているのがわかる。そんな状況でも、するすると耳を伝ってくる日本語と安心感。このくらい英語やフィンランド語も私にとって容易いものであれば、世界はまた違ったのかもしれない。

今朝、テレビにふと目をやると、番組内のとあるコーナーでクイズをやっていた。「⚫︎⚫︎に加えると合う飲みものは?」みたいな問題だったと思う。タレントが4人いて、順番にAかBのフリップを上げてそれぞれが答える。"自然と"左側の大御所芸人から順番にフリップを上げていく。右側の一番若い女性は最後に、他の3人が上げなかったBのフリップを上げる。

私はそれを見て、やっと、泣いた。なんなんでしょうね。「ま〜た、遠くまできちゃったな〜」と深い部分で感じたのかもしれない。いちいち感傷的になるタイプの典型です。


今は実家の奈良に帰ってきています。セミの声とマンションを工事する音が聞こえる。当たり前だけど、森の小鳥の鳴き声や、カモメの羽ばたく音は聞こえない。あ〜、にしても、このぶわっとくる夏の匂いが大好きだなあ。湿度が関係してるんかなやっぱり。

暗くなる夕方。1500円くらいで食べられるお刺身定食。車は左側を走る。

当たり前で自分に馴染んでいることです。でも、何をするにも空気を通り抜けるような、そんな感覚で。意識はまだ飛行機の中に置いてけぼりなのかもしれない。(めちゃくちゃ満杯のフィンエアーの中にね🛩✌️)

人が往来する気配が感じられて、うれしかった。

いつだって私たちは空を飛べるはずなんや

まあ、なんか多分恋しがりたいだけなんだと思う。今しか感じられないこの寂しさを私だけが知っていて、それこそがフィンランドと私の間にできた関係なのかもしれません。

空港で買ったストロベリーバジルアイス。味もそんな感じ

フィンランドでの生活は、いわばパラレルワールドでした。非日常ではなく、もしかしたらこうなる世界線もあったのかもしれないという、その一片を体験できた日々でした。余裕がないことが多かったけど、こじんまりと、静々としていた、そんな愛おしい時間でした。

ただそこに佇む、ある所へ収束していきそうになる日々には、きちんと終わりがあったからこそ、こんなにも素敵だったと思えるのかもしれません。

それでも今は、なんだかあの日々や時間を、ゆっくりとじんわりと抱きしめてあげたいなあ、とそんな風に思っています。

ここまで、読んでくださり、ありがとうございます。またどうぞ、よろしくお願いします。

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