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オペラとマーマレード

エンジンが上手くかからない車に慌てる。大好きなYUKIが流れても口ずさんでいない自分に気がついて、そんなに口が固く閉ざされていることに驚いた。今多分、私は車を運転してはいけないぐらいに、この世界・空間のどこにも存在していない。それくらい曖昧になってしまっている。

自分の中にある湖の水面が、なんてことないことで乱れる。歯に衣着せず申し上げると、自分が思う妊娠出産の弊害はそこにある。会いたくもなかった自分の本性に出会わざるを得ないのだ。

かからないエンジン、煽る車、終わらないタスク、ちゃんとしたいと思いすぎる家事、待ってはくれない出産、想像もつかないこれからの生活。

今すぐここから逃げたい、こんな攻撃的な自分を誰にも見せたくない。最後に一筋残る、あたかも自分の芯のようなものが、こんなに醜いなんて。知りたくなかった、気がつきたくなかった。

私のお腹が大きくなって、気がつかないうちに生命が育まれている事実。そんなことは私以外の他の誰にも関係のないことで、知ったこっちゃないことだと思う。

それでいいはずなんです。何も関係なくて、何も気にしなくて。

言葉は容易い。あまりにもやさしくて、こびりつきやすいので、ひどいものでもある。

こうしているうちに、逃げ場に辿り着いた。いつもは何かを気にして飲まないようにしていたけど、今日はホットコーヒーを頼んだ。オペラだってつけた。

そういう選択が、私の水面を撫でてくれるのだと信じている。

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