自己分析の仕方

こんにちは。ぜんこうです。

国公立前期試験が終わりました。受験生の皆さんはお疲れ様でした。そしてこれは同時に、現高2の皆さんの国公立前期試験まであと1年ということです。

ここでは、1年半余り東大入試研究会の質問箱の「中の人」の一人として活動し、1万件以上の質問を見てきた立場として、自己分析の方法、具体的には、①弱点を見つけ、その克服を図るために何をすればいいか、②質問ツールをどのように活用すればいいかをお伝えしたいと思います。

このnoteが対象としているのは、受験勉強をしている人です。(なお、ここでの「受験勉強」というのは、何かしらの目標を持って、そこを目指して高校課程の勉強をしている、という意味です。従って、高1、高2の人の多くも対象になると思います。)

漫然と勉強しない、また弱点を早期に克服するためにも、自己分析の力は早いうちに、確実につけてほしいです。

1.弱点を見つけ、克服する一連の過程

まず、基本的な過程を示し、それを基にいろいろと補足していきたいと思います。弱点を見つけるきっかけは、模擬試験・定期テストを想定しています。

①模試・テストの受験
②(返却前)試験時間の挙動についての反省・解説を用いての不明点の確認
③(返却後)弱点分野の確認
④失点原因の分析
⑤要強化ポイントの抽出
⑥⑤を充足する参考書の購入・勉強法改善
⑦次回の試験・確認問題で適宜フィードバック

→①に戻る

②③「状況」の確認
④弱点の具体化
⑤目標の創出
⑥具体的手段の探索

適宜解説を加えます。

まずは、ここで使う用語を定義しておきましょう。

状況:得意・不得意含めた、受験生の現状。
弱点:状況の一部で、受験生の足を引っ張っているもの。
失点原因:弱点からさらに踏み込んで、受験生の失点の直接的原因になっているもの。

⑴「状況」の確認

弱点を見つける際の大前提となるのが、状況の確認です。弱点は状況の一部ですから、まず自分の結果と向き合い、その中で弱点を発見・明確化していきます。

②(返却前)試験時間の挙動についての反省・解説を用いての不明点の確認

これは模試・テスト終了後すぐ、前者はその日のうちにやってください。前者は例えば、「焦って計算ミスをしてしまった」とか、「難問にのめりこみ、得点源にできたはずの問題に手をつけられなかった」「集中力が切れて、字面読みになってしまった」などです。こうした記憶は刻一刻と消えて行くので、しっかり振り返って、心に刻み込んでおくなり、反省をノートにまとめるなどしてください。

後者は頭を使うので当日でなくていいですが、なるべく早くやってください。時間がない、面倒くさい場合は、最低でも試験時間中に迷ったところを見直してください。もしそこが偶然正解していた場合、その弱点は埋まることがなくなってしまいます。入試以外の試験は、「点を取ればOK」な試験ではありません。

<重要度>
迷って、とりあえず解答を書いたもの>全くできなかったもの>できたもの

※全くできなかったものは答案返却時にわかるのでいいです。試験時の記憶が残っているうちにしかできないものをやりましょう。

③(返却後)弱点分野の確認・失点原因の確認

模試返却後は、答案と分析資料が返ってきます。2回目の状況確認です。

まずは、答案を見てやることです。マーク模試の場合、やることといえば復習から逃げていた部分の復習くらいです。対して記述模試の場合は、想像していた点数と実際の点数の乖離が見られるときがあります。その場合は、そこを検討しましょう。他人から見て読みにくい日本語になっている場合があります(模試によっては、単なる採点基準の拡大/縮小解釈による、採点ミスに近いものの場合もあります)。

次に分析資料を見てやることです。分析資料は、
文法・語法15/20点
英作文14/20点
長文問題①9/30点
長文問題②11/30点
のようになっているのが一般的です。ここでは、弱点が数字になって表れてきます。この人の場合、長文になるとなぜか弱いようです。

⑵弱点の具体化

④失点原因の分析

⑴の工程でやってきたことの多くは、(知識的なものなど、解答を見るだけで解決が図れるものを除き)あくまで状況の分析に過ぎません。つまり、「古文が読めません」「英語長文が読めません」「集中力が持ちません」などです。

ここが、皆さんの腕の見せどころです。というのも、ここが、周囲がほとんど手助けできない所だからです。状況の分析は最悪、分析資料や答案を見せてもらえばなんとか可能ですが、失点原因を解明するには、自分の解答過程(頭の使い方)と向き合わない限り不可能です。個人個人の性格・答案とたっぷり時間をかけて向き合う個人塾ならば、あるいは手助け可能かもしれませんが。東大入試研究会の質問箱で「状況を詳しく教えてください」「漠然としていてお答えできません」と回答されている質問は大抵、この作業を経ないで状況だけを送ってきている質問です。

さて、それでは具体的に何をするのか見ていきましょう。まず前提として、弱点という状況の原因には、複数考えられます。「英語長文が読めない」という弱点一つとってみても、①単語を知らない、②文法を知らない、③文法は辛うじてできるが、構文解釈ができない、④段落の読み方が身についていない、などなど...

このような原因の候補を絞って行くのが、ここでの作業です。原因を突き止めないことには、学力向上も見込めません。伸び悩んでいる受験生は、このプロセスを怠っている人が多いのではないかと考えています。

例えば「プリンターが動かない」となったとしましょう。そして原因が単なるコンセントの差し忘れであったとしましょう。そのとき、プリンターを分解して内部の掃除をしたり、基盤を確認しても、(復活後の動作は多少良くなるかもしれませんが)プリンターは動き出しません。的外れなことはしないように、ちょっと立ち止まろうというわけです。(かといって、完璧を求めて慎重になりすぎてもいけません。少し寄り道してしまうくらいのことは、試行錯誤の過程で必ずあります。少なくとも、正反対の方向に全力疾走するようなことはやめようというわけです。)

一例を挙げましょう。模試・テストにおける失点原因には、大きく分けて「力不足」「時間制約」の二つが考えられます。例えば東大英語や共通テスト数学など、時間制約が厳しく、慣れが必要な試験を初めて解いたとき、「英語/数学が得意なのに半分を切ってしまった」という人はけっこういますが、だからといって「実は自分は英語/数学は苦手だったのだ」と判断するのは違います。そのときに分析のために利用したのが、対照実験です。共通テスト同日の点数がひどく、相談しに来た方には、「時間無制限でもう一回解くこと」を推奨しました。すると、初見ではないという理由で片付けられないくらい点数がアップしました(ほぼ満点)。この方の場合、問題は力ではなく、時間制約にあったというわけです。

こうした、対照実験による原因のあぶり出しはいろいろなところで使えます。例えば「英語長文が読めない」場合、
①単語帳や辞書を脇に置いて読んだら読めた→原因は単語
②内容をメモしながら読んだら読めた→長文の読み方が身についていない
③丁寧に構文を分析したら読めた→英文解釈に慣れていない

⑶目標の創出

⑤要強化ポイントの抽出

失点原因が解明できたら、それを克服するためのゴールを定めましょう。つまり、「英単語が定着していない」であれば「シス単を全部覚え直す」でもいいし、「やはり暗記は自分には向かないから語源からしっかり理解することで定着させたい」でもいいです。ただし、フィードバックができるよう、短期的な目標です。「これから鉄壁を買って、二周三周して完璧にする!」のような、時間がかかる目標はやめましょう。

⑷具体的手段の探索

⑥⑤を充足する参考書の購入・勉強法改善

⑤までできたら、あとはそれを実行に移すだけです。⑤で購入する教材が決まったのであればそれを買ってやれば良いし、⑤が抽象的なものであれば、⑤を満たすおすすめ参考書を誰かに質問すれば良いし、所持の教材の使い方を変えるのでも良いと思います。

もしそれが合わなかったら柔軟に変更しましょう。

この成果は、模試・テスト・問題集の問題を解く...など自分の実力を知ることができる段階で適宜確認しましょう。→⑦次回の試験・確認問題で適宜フィードバック

⑸振り返り

以上の過程を振り返り、再度まとめます。全体を通して使用した、英語長文の例を出しつつ説明します。

①模試・テストの受験
②(返却前)試験時間の挙動についての反省・解説を用いての不明点の確認
③(返却後)弱点分野の確認
「英語長文ができなかった」
④失点原因の分析
「多分英単語が十分に入っていない」
⑤要強化ポイントの抽出
「語源からしっかり理解したい」
⑥⑤を充足する参考書の購入・勉強法改善
「鉄壁をとりあえず一周してみよう」
⑦次回の試験・確認問題で適宜フィードバック

なお、②、③から即⑤に向かえる場合もあります。上に示したのは十分条件ですから、必ずしも全て通過する必要はありません。あくまで目的は、

「弱点→原因の特定→対策の立案→実行」

により弱点を潰すことです。例えば②の段階で「計算ミスをしてしまう」「漢字ができない」とわかったら、計算ミスや語彙力はそれ以上でもそれ以下でもないんですから、⑤に飛んで構いません。

2.自己分析における質問ツールの活用法

さて、自己分析の方法について色々書いてきたわけですが、他人の力を全く借りずしてこれをやれというのも酷な話です。しかし、質問ツール(質問箱)の使い方によっては想定した回答が得られないこともあります。ここではその辺りを解説していきます。

なお、これは「こういう質問をしないと答えないぞ!」というわけではなく、考える機会、自分の状況について知る機会、学習効果を上げる機会を奪わないためのものです。「もう少し分析してください」という回答が返ってくると学習に遅れが出ると思いますので、そういう回答が返ってきてしまう質問はどういうものか、ちゃんとお答えできる質問はどういうものか、あらかじめお示ししたいと思い提示しておきます。

一応言っておきますが、ここで扱っているのは、自己分析に関係のある質問(弱点を埋めるための質問)に限っています。次のステップに進むための参考書の質問、教科をまたいだ大まかな勉強方針などは、得点などの状況だけ書き記して頂ければ結構です。

⑴質問箱ではどうにもできないもの

①状況だけを投げた質問

原因はいくつも考えられます。答えられません。分析して④を終えた状態にしてから質問するか、もっと詳しく状況を記してください。

ex)数学が苦手なんですがどうすればいいですか?
ex2)英語長文が読めません」

「数学が苦手なんですが...」という質問に対して、「これやっておけばいいですよ!」と言えてしまう人は、自分はあまり信頼できないなと感じます。それが根本的解決になる可能性(質問者に効果的に作用する可能性)は低いですし、質問者が分析する機会を奪うことになってしまいます。

②段階を飛ばしているもの

必要な作業をすっ飛ばしていると回答が無数にあることになってしまいます。

ex)おすすめの単語帳はありますか?←どこを強化するためのもの?
ex2)英語長文が読めません。おすすめの参考書を教えてください。←分析を省かないでください。

⑵質問箱で有益情報が見込めるもの

①失点原因分析の手助け

先ほど、「失点原因分析は自分で」という旨のことを述べましたが、少し助言するくらいなら可能です。しかしその場合も、8割型分析が終わって、あと一歩の方向付けの場合に限ります。つまり、状況に分析成果を添えて質問してください。場合によっては言葉での説明だけではどうしようもないものもあります。

ex)英語長文が苦手です。単語はシス単レベルが入っていることが確認できていて、英文解釈はポレポレを終わらせています。長文になるほど読めないような気がしているのですが、それを強化することは可能ですか?

↑「強化することは可能ですか?」という聞き方はあまりせず、参考書の話と絡めた質問が現実的でしょうが、例示の便宜上、そのようになっています。

他に考えられる質問としては、「長文ができない原因には何がありますか」という形で、分析をするにあたって必要な情報を得るものもあります。

②強化のための具体的手段の相談

相談の中で一番多いです。いわゆる「おすすめ参考書」です。ただここで勘違いして欲しくないのが、「要強化ポイントを踏まえた質問でなくてはならない」という意味です。つまり、「○○を強化したいのですがおすすめの参考書はありますか?」という質問は100点です。

ex)英語長文が苦手で、どうも長文になると内容が掴めなくなるようです。おすすめの参考書はありますか?

3.おまけ:心配になってしまう質問

さて、自己分析の方法と大切さを説明したところで、同じようなものとして、心配になってしまう質問、つまり「この人はちゃんと考えているんだろうか...」「この調子でやっていると伸びるか心配」と思ってしまうような質問の例をあげます。

①何でもかんでも指定してほしい質問

「復習の仕方は?」「この問題集/参考書の進め方は?」

→復習の意味は習った内容を定着させることですし、問題集/参考書を使う際は、その本のエッセンスを吸収することが目的です。こうしたゴールから逆算して、自分で考えて決めてください。他人からいちいち指定された方法でやるよりも、自分で考えながらやったほうが定着がいいですし、柔軟に変更していく中で思考力も付きます。参考にしたいということなら、その旨を書き添えてほしいです。ただ聞かれると、その人の学習効果を上げるリスクを奪ってしまう機会を考え、答えないと思います。

②同意への誘導

「〜ですよね?」という質問です。まあそもそも感情的に、こういう口調の質問は回答意欲が一気に下がるのですが、それよりも、こういう質問はタイトルにもあるように「同意への誘導」であり質問ではないので、「いやいや、これはどちらかというと○○だと思いますよ」と言っても聞いてくれるのか心配になってしまいますね。

おわりに

ずいぶんと長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。学習計画を立てる際の参考になったら幸いです。

なお、このnoteの内容でわからないことがあったら質問箱で質問してください。


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