東大日本史2021解答速報

第1問

直系の皇位継承が原則となると共に、官人排斥が進んで有力氏族が高官を独占し政争は減少した。彼らは大学別曹で儒教の素養を身につけた官僚であり、格式の整備による国政の制度化と儀式書による政務の儀式化、藤原北家が摂関として天皇権限を代行できることとあいまって、天皇の政務能力に関わらず国政運営が可能になった。(150字)

◯資料文ベースで解答を構成しました。天皇不在でも政治が回った旨が書けることがこの問題最大のポイントです。論の展開の仕方、厳密性などを意識すると、資料文を過不足なく使いまとめるのはなかなか難しく、のめりこみやすい問題でした。解答の締めで問題文との同義反復に陥らないよう注意。

第2問

A地頭が田地の開発を進める中、田地の状況を確認することで増加分の年貢未納を防ぐと共に新領主の影響力を確認しようとした。(59字)
B一定額の年貢納入を課し荘園管理を地頭に一任する地頭請のもと検注は停止され、増加分の収入は地頭が得た。荘民を動員して開発を主導した地頭は現地での指導力を強め、地頭の荘園侵略が進んだ。(90字)

◯両方とも、資料文を反映すれば解答の大枠が完成し合格点は来ると思いますが、知識で補強しようとすると迷うところが多いです。Aは「年貢を納めない、農民を家来のように使役している」(山川『詳説日本史研究』p150)を踏まえてこの二点を挙げました。要検討。

第3問

A金銀産出量減少による減収に加え明暦の大火後の復興と元禄期の寺社造営、朝廷儀式の再興に伴う出費で幕府財政は破綻していた。(60字)
B収穫が見込めない気候である上流の村への支援よりも米の収穫が期待される下流の洪水対策に注力したが、上流の村が捨てた土砂が下流の洪水の一因となっており、根本的な解決とならなかった。(89字)

◯前者は知識問題、後者は読解問題です。Bの最後は「根本的な解決にならない」とビシッとまとめたいところです。⑵⑶の対比が一見しただけではわかりにくく、焦ったでしょう。

第4問

A明治政府に貢献した者を華族に加えた。彼らが貴族院議員となることで、民権派が政府に対抗する恐れがある衆議院を牽制する役割を貴族院に期待し藩閥政府主導の国政運営を円滑にしようとした。(90字)
B閣僚を貴族院から選出した清浦内閣が第二次護憲運動で倒れ、普通選挙や貴族院改革が世間に求められる中、次の政権の一角を担いうる政党の総裁が貴族院議員である事実は不利だと考えられた。(89字)

◯Bは、「隠居をして、貴族院議員を辞職した」ことの意味を説明するか迷いました。⑶⑷で言及されている以上、資料文利用の原則からして使うべきとも考えられますが、⑶⑷がないとこの問題自体が大学受験生に問えるものとして成立しなくなってしまうので、ここではそういう意味での⑶⑷の存在意義だと解釈して、行動の背景に徹した解答としました。

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