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都議選各党の公約を比較する②-社会政策・教育-

 都議選が告示されたことを受け、都議選における各党の公約について比較検討をしたい。2回目の今回は社会保障、教育に対する自民党、公明党、都民ファーストの会、日本共産党、立憲民主党の主要政党の見解を比較検討する。

お断り 

 本来であれば、公平性の観点から全政党、候補者の公約を比較検討をすべきところですが、国政政党かつ都議会に一定の議席を持っている政党、または都議会において多数を占めている政党について比較させていただきました。

 なお、日本維新の会、れいわ新選組については国会に議席があること、生活者ネットワークについては都議会に議席があることを鑑み、最終回に公約について掲載をさせていただきます。

1.社会政策(子育て・高齢者・障がい者政策)

1-a)自民党

 出産時の経済支援の充実、不妊治療の自己負担をゼロにすることで子育て支援をするとしている。子育て中の女性の職場復帰、再就職支援のほか、学童保育拡充、学校給食の無償化を実現するとしている。(※1)

 高齢者福祉政策としては、フレイル(虚弱予防)対策を推進するとともに、「認知症支援コーディネーター」をすべての自治体に配置し認知症の早期発見、早期治療を進めるなどにより高齢者が健康で元気な暮らしを送れるようにするとしている。また、高齢者の異変を関係機関につなぐ「見守りサポーター」を設置し、地域体制を強化するほか、施設への入所待ち高齢者ゼロに向けて不足が見込まれる施設の整備を加速するとしている。(※2)

 障がい者福祉政策については、道路、鉄道機関、公共施設などに障がい者の意見を聞きながらバリアフリー化を進めるとし、中小企業への障がい者助成の強化による障がい者の雇用、就労支援の拡大に取り組むとしている。このほかに、障がい児の教育環境を整備し、病院、学校等との連携や相談体制の強化により障がい者の介助者、保護者支援に取り組むとしている。(※3)

1-b) 公明党

 2019年に2歳までの保育料について第2子を半額、第3子以降を無料としてきたとし、今後は第2子を無料化するとしている。また、子どもの医療費について所得制限を設けた上で高校3年生まで無償化するとしている。

 障がい者対策としては、利用者が10万人以下で視覚障がい者の利用が多い駅へホームドアを優先して整備するとしている。(※4)

1-c) 都民ファーストの会

 子ども支援について、民間アパート借り上げ等による児童相談所の人材確保支援、子どもホスピスの推進、子ども食堂・宅食・配食の強化、ヤングケアラー支援を行うとしている。また、少子化対策として、保育・学童の待機児童ゼロ、放課後の居場所確保の強化、不妊治療の適正な実施確保、保育費・給食費・私学授業料の第2子以降の負担軽減により子育ての家計負担の軽減を行うほか、ひとり親の養育費確保支援を行うなどとしている。(※5)

 高齢者福祉政策としては、認知症対策として、認知症検診等を活かした予防アプローチの強化、バリアフリー推進、認知症サポーター養成支援を行うとしている。また、各種高齢者施設の整備、介護施策を強化するとして、特別養護老人ホームなど介護施設の着実な整備、介護人材の処遇改善・育成・確保の強化、ダブルケアへの支援体制の強化を行うとしている。(※6)

 障がい者福祉政策としては、1日あたり利用者10万人未満駅のホームドア整備、駅・生活関連施設に関する都道のバリアフリー化を行うとしている。また、グループホーム・通所施設・在宅サービス等の着実な整備を行うほか、障害者手帳のデジタル化などDXによるバリアフリー推進、障害のある児童の保護者の就労支援を行うとしている。(※7)

1-d) 日本共産党

 「妊婦健診・出産費用」、「国民健康保険料(税)の子どもの均等割」、「保育園の第2子の保育料」、「小中学校の給食費」、「18歳までの医療費」を無料化し、私立高校の入学金、施設費など授業料以外の負担軽減を進めるとしている。また、「隠れ待機児童」も含めた待機児童ゼロへ、4年間で7万人分の認可保育園・公立保育園を増設するとともに、保育の質の充実を進め、園庭のある保育園を増やすとしている(※8)

 高齢者福祉政策としては、高齢者の補聴器購入費への助成制度の実施、シルバーパスは1000円パスに加え3000円パスを発行し、費用負担を軽減するほか、高齢者の肺炎球菌ワクチン接種費用を無料化、特別養護老人ホームの待機者ゼロへ用地費助成を実施し、4年間で1万人分増設するとしている。(※9)

 障がい者福祉政策としては、障害者医療費助成の対象者を、軽度の知的・精神・身体障害者にひろげる、心身障害者福祉手当の対象者を、精神障害者、難病患者にひろげるとしている。(※10)

  また、全体の問題として、都内区市のすべての鉄道駅にホームドアを整備し、「ホーム転落事故ゼロ」、鉄道駅へのエレベータ・エスカレータの設置促進、「踏切ゼロ」を推進するとしている。このほかに介護職員、保育士、障害者施設職員の賃金引き上げのため、都の補助を拡充するとしている。(※11)

 このほか、住宅に困窮している人や若者を対象に、最大月3万円の家賃助成を行うとしている。(※12)

1-e) 立憲民主党

 子どもの貧困対策として生活保護世帯を含め生活困窮家庭、ひとり親家庭などを必要な支援につなぐ体制づくりを支援するほか、ひとり親家庭へ東京都独自の児童育成手当の増額など支援を拡充するとしている。また、養育費の安定した取得に向けてひとり親家庭への養育費の立替費用を実施する市区町村への支援を進めるとしている。(※13)

 このほか、待機児童ゼロに向けて潜在的な保育需要を踏まえた保育所整備計画を立て、認可保育所、認証保育所での1歳児受け入れ、人材確保支援をするとしている。また、待機児童解消市区町村支援事業による事業者負担の軽減、保育サービス推進事業などへの支援のほか、待機児童となったり、育児休業を1年以上取得した保護者への支援策として、ベビーシッター利用支援事業の継続とサービスの質の確保、利便性の向上に取り組むとしている。また、不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりなど必要な配慮が受けられるようにするとしている。(※14)

 高齢者福祉政策では、特別養護老人ホーム整備促進のための開設準備経費、定期借地にかかる費用、運営費などを補助するほか、サービス付き高齢者向け住宅供給助成を実施するとしている。 また、介護人材確保のための資格取得支援、奨学金返済支援、キャリアパス導入などを行うとしているほか、認知症支援コーディネーターの配置、認知症疾患医療センターを中心とする地域の医療・福祉連携体制の構築など体制整備を推進するとしている。(※15)

 障がい者の一般就労拡充のため、各障がいの就労支援コーディネーター、生活支援コーディネーターの配置、入所施設への地域移行支援コーディネーターの配置を進めるとしている。また、障がい者の地域生活を支えるグループホーム、日中活動の場などの施設整備を進めるため開設準備経費も含めて助成を拡充するとしている。このほか、障がいのある人が社会で活躍できるように職場教育、病院内教育を充実させ、市区町村との連携により、特別支援教育を拡充するとしている。(※16)

 また、低所得者、高齢者、ひとり親家庭など、住宅確保要配慮者への家賃補助(クーポン)などの実施、拡充による住宅セーフティネット機能を強化するとしている。(※17)

2.教育政策

2-a)自民党

 習熟度別授業を算数・数学、英語に導入するほか、小学校5年生、6年生に教科担任制を導入することで基礎教育段階での好奇心、探求心醸成に重点を置き、学ぶ楽しさを磨くとしている。また、進学指導重点校等では大学教育の先を見据えたカリキュラムの充実を図り、専門学科高校(工業、商業、農業など)の独自性を高め、多様な進路選択の魅力を高めるとしている。(※18)

2-c) 都民ファーストの会

 幼少連携プログラムの推進、チャレンジスクール・フリースクール支援、公私間格差の是正推進、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー配置により多様な教育ニーズに対応をするとしている。また、都内の実情に即した少人数学級への対応、少人数指導・教科担当制の強化などにより、学びの個別最適化を行うとしている。(※19)

2-d) 日本共産党

 ①小中学校の35人学級を、全学年で実施し、都独自に30人学級を推進する、②不合理な校則の見直しを、子どもの権利保障の立場から、生徒の参加で進めることを呼びかける、③夜間定時制高校の廃止計画を中止のうえ拡充する、④特別支援学校を増設し、教室不足を解消する、⑤小中学校の特別支援学級、⑥特別支援教室への支援強化、夜間中学や、外国籍の子どもを対象とする日本語学級を増やす、⑦不登校の子どもたちの居場所を支援するなどとしている。(※20)

2-e)  立憲民主党

 東京都独自の給付型奨学金制度の実施、拡充を行うとしている。小・中学校の給食無償化、教育の無償化、私立高校の授業料実質無料化に向け、私立高校の保護者への特別奨学金助成を拡充するとしている。このほか都立オンライン高校の開設など多用な教育機会を確保するとしている。また、都立学校などにおける学校教育に必要な経費のうち、実習、模擬試験、検定試験などの学校活動にかかる保護者負担経費を支援する東京都独自の給付型奨学金制度を拡充するとしている。(※21)

 このほか、少人数学級の早期実現、学校図書館の機能を充実、強化するための司書の配置の支援、スクールカウンセラーの配置拡充、小中学校におけるソーシャルワーカーの配置支援、学校における体罰の禁止の徹底、子どもの人格を傷つける人権侵害、わいせつ行為に厳しく指導、対応を行うとしている。(※22)

 以上、社会政策、教育について各党の政策を比較検討した。次回は社会インフラ、防災、多摩・島嶼地域に対する各党の政策を比較検討する。

皆が集まっているイラスト1

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

(※1) 自民党都議選公約 「命を守る。東京を動かす。」

「4 子供を産み育てたいまち」P10

(※2) (※1) 前掲 自民党都議選公約 「命を守る。東京を動かす。」

「6 健康長寿都市・東京」P14

(※3) (※1) 前掲 自民党都議選公約 「命を守る。東京を動かす。」

「7 障がい者・児が安心して暮らせるまち」P16

(※4) 公明党都議選公約(政策目標 チャレンジ8)

(※5) 都民ファーストの会都議選公約「都民ファーストの会政策集2021」

(公約) 「5 子ども支援:子ども目線の徹底」P22,「6 少子化対策:世界一子育てしやすい都市・東京」P24

(※6) (※5) 前掲 都民ファーストの会都議選公約「都民ファーストの会政策集2021」

(公約) 「9 健康・シニア活躍:健康長寿で100年活躍」P30

(※7) (※5) 前掲  都民ファーストの会都議選公約「都民ファーストの会政策集2021」

(公約) 「10 ダイバーシティ&インクルージョン:「ちがい」で成長する東京」P32

(※8) 2021都議選 訴えと重点公約

3.日本共産党の重点公約

「[3]貧困・格差を是正し、ケアに手厚い東京に」

「④子どもの貧困対策・子育て支援を強化」 

「⑤待機児童・特養ホーム待機者ゼロへ、保育・介護を充実」

(※9) 前掲(※8)「2021都議選 訴えと重点公約」

3.日本共産党の重点公約

「[3]貧困・格差を是正し、ケアに手厚い東京に」 

「③誰ひとり取り残さない――高齢者や障害者を大事にする東京、生きづらさに寄り添う東京に」 

「⑤待機児童・特養ホーム待機者ゼロへ、保育・介護を充実」

(※10) 前掲(※8)「2021都議選 訴えと重点公約」

3.日本共産党の重点公約

「[3]貧困・格差を是正し、ケアに手厚い東京に」 

「③誰ひとり取り残さない――高齢者や障害者を大事にする東京、生きづらさに寄り添う東京に」 

(※11) 前掲(※8)「2021都議選 訴えと重点公約」

3.日本共産党の重点公約

「[3]貧困・格差を是正し、ケアに手厚い東京に」 

「③誰ひとり取り残さない――高齢者や障害者を大事にする東京、生きづらさに寄り添う東京に」 

「⑤待機児童・特養ホーム待機者ゼロへ、保育・介護を充実」

(※12) 前掲(※8)「2021都議選 訴えと重点公約」

3.日本共産党の重点公約

「[3]貧困・格差を是正し、ケアに手厚い東京に」

「⑥住まいの確保を、都民の権利として保障」

(※13) 立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)

1.貧困・格差の解消 1-① 低所得支援

(※14) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)

3.子ども・子育てを応援する社会の実現 3-① 子ども・子育て支援

(※15) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)
4.高齢者・障がい者の暮らしを守る 4-① 高齢者福祉の推進

(※16) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)
4.高齢者・障がい者の暮らしを守る 4-① 障がい者福祉の推進

(※17) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)

1.貧困・格差の解消 1-① 低所得者支援

(※18) (※1) 前掲 自民党都議選公約 「命を守る。東京を動かす。」
「5 教育への投資」P12

(※19) (※5) 前掲 都民ファーストの会都議選公約「都民ファーストの会政策集2021」

(公約) 「8 教育・人材育成:学びの個別最適化・全世代型化」P28

(※20) 前掲 (※8)「2021都議選 訴えと重点公約」

3.日本共産党の重点公約

[5]ジェンダー平等を推進し、多様性と個人の尊厳を大事にする東京に

「⑤すべての子どもを尊重する教育に」

(※21) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)

1.貧困・格差の解消 1-② 子ども・子育て支援における貧困・格差解消

(※22) 前掲(※12) (立憲民主党東京都連 都議選政策2021(完全版)

3.子ども・子育てを応援する社会の実現 3-③ 学校教育の拡充

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