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政治に対する雑感4-視察・公務の意義とは


前置き

 参議院議員の松川るい、今井絵理子らのフランス視察が世論の反発を招いている。当初は、エッフェル塔を模したポーズの写真をSNS上に掲載したことに対する「軽さ」に対する反発するものであった。しかし、FLASHがフランス視察中の旅程において、自由行動が多く、クルーズで食事をすることが含まれていることを指摘した記事(※1)を掲載した後は、フランス視察は視察の体を成しておらず、税金で生活をしている国会議員が遊んでいるなどとの批判、反発が出るようになった。当初、松川、今井はSNS上の写真は軽率であったとする一方、視察自体は意義があるものだったと主張していた。しかし、FLASH記事掲載後は説明、釈明がなされることはなく、(※2)松川が「一つの区切りをつける」として、自民党女性局長を辞任した。(※3)

 これではフランス視察は、視察した結果を政策に活かすためのものであると主張しても有権者に伝わらない。政治家として軽率であり、公私混同も甚だしいと世論が反発するのも自然なことである。

公私混同が黙認される社会

 それにしても、今回の松川、今井らのフランス視察に限らず、なぜ、公私混同がまかり通る状況が相次ぐのだろうか。私は公務の大義名分に乗じて、自分の役得があってもいいという体質が日本社会に蔓延していることも大きな原因ではないかと考える。

 昔、私が所属していた部署では、地方でのイベントがあるために年に1回程度出張をしていた。そのイベントでは終了後懇親会や、イベントに関連する施設の視察があるのだが、ときに、現地担当者が東京から来る私たち職員を接待するかのような対応をしたことがあった。

 ある地方では、懇親会で一般の参加者とは別の料亭に連れていったのだが、そこでは豪華な食事がなされ、芸子さんを、招いて遊ぶといったことまでした。同僚からはイベント費用などの諸経費を会社が出しているから、接待の形で現地担当者が楽しみたいのかといった声や、こんな好待遇をして後の現地担当者が豪奢な接待をしないといけないと誤解したらどうするのかといった懸念する声があった。しかし、こうした豪華な飲食や芸子さんとの遊びが大好きな職員もいた。夜10時過ぎになったにも関わらず、二次会をやろうという現地担当者の誘いに喜んで応じて、一晩バーで飲み明かしたという。バーなどの費用も会社の金であり、自身のポケットマネーではない。

 他人の批判ばかりして自己批判がないのは公平ではないので、私自身に対する批判もここでしたい。私個人は冒頭のバナーにもあるように接待などは苦手な気質であり、出張先では会場参加者用の立食形式で十分と考えている。ただ、イベントとは別に東京で行われた主催者や現地担当者を交えた打ち合わせ後の懇親会に際して、懇親会終了後に主催者関係者、現地担当者にホテル、東京近郊に住んでいる主催者関係者には自宅までタクシーを手配した。その際、上司の許可があったとは言え、帰りのタクシーチケットを私を含めた職員自身がもらってタクシーで自宅に帰った。そのときは、家が遠いこともあり、タクシーで家まで帰れることをそのときは喜び、職業倫理上のことまでは考えていなかったのである。

政治家、公人が果たすべきこと

 私は公務員ではないため、イベントなどで使われる金は組織の金であり、組織の問題であると言ってしまえばそれまでなのかもしれない。ただし、職業倫理といった観点からすれば、こうした仕事に付随するお相伴という役得は、不正行為とまでは言えないまでも公私混同であることには違いない。日本社会に蔓延するお相伴を利用した公私混同のあり方をどのように改めるべきかという観点がない限り、形を変えた公私混同は続くだろう。また、交流の場をどのように設定するべきかについて、あまりに厳密に過ぎると実際の業務に支障が生じる可能性もあることも考慮すべきだろう。

 私は個人的には組織のお金での役得は公私混同であり、やめるべきだとは思う。ただ、組織の慣習を排するには相当のエネルギーが必要であるし、周りの反発などを受け止めるだけの覚悟と勇気が必要だ。その覚悟、勇気に欠けている点で、少なくとも私は、完全に「正義」の側に立って松川、今井らを批判する資格はない。

 しかし、だからこそ逆説的な物言いとなるが、政治家や公人などが豪奢な視察という名の旅行や接待、懇親会といった類について、メスを入れ、本当に必要な視察、懇親会は何かということを人々に示してほしいとも思う。欧米のように民衆が自発的かつ主導的に悪習を排していくということが理想であることは言うまでもない。しかし、日本のムラ社会体質からすると、政治家や公人が手本を示すという形をとらないと、なかなか人、社会が動かない現実もある。

 松川、今井らがなすべきことは、これを機に様々な公私混同の様相を持つイベントなどを改めることを行動で示すことではないか。お相伴に預かる役得を試みる者が反発することで、自分たちの政治活動、権力基盤が不安定になる可能性があるとしても、政治家、公人に立つ者はそれらの反発を踏まえ、敢えて行うという責任と覚悟が求められる、そうした観点からの批判がもっとあってもいい。また、私たちの側もムラ社会の馴れ合い体質という自らの行いを省みることが必要だ。公私混同を改めるよう求める場合、自らの行為についても自覚することが求められる。

お知らせ

 次回は、夏季休暇中のため、9月17日日曜日の12時から17時の間とさせていただきます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。また、コメントへの返信が遅れる場合がありますことをご了承ください。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

脚注

(※1)

今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌] (smart-flash.jp)

(※2)

今井絵理子ら「フランス研修」に国民激怒も自民党幹部は〝かん口令〟指示で「説明ナシ」の〝風化〟狙い | FRIDAYデジタル (kodansha.co.jp)

(※3)

自民 松川るい氏 女性局長辞任 仏研修中の写真投稿で批判受け | NHK | IT・ネット


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