宴屋六郎

多分小説を書きます。 公式サイト:https://in-geya-head.netli…

宴屋六郎

多分小説を書きます。 公式サイト:https://in-geya-head.netlify.app/ Twitter:@utageya6

マガジン

  • FF14 The Ghost In The Machine

    FF14小説の二作目です。

  • FF14 Open Your Eyes

    FF14小説の一作目

  • FF14 Novel: Paint It, Black

  • 彼女の奇妙な愛情

    誰からも愛され、誰をも愛する少女と、プラスにもマイナスにも振り切れない『普通』の少年が出会うお話。(2012年くらいに書いた小説の投稿)

  • FF14 origin episode

    自作のFF14小説マガジン

最近の記事

FFXIV Original Novel: Paint It, Black #13 Epilogue

前: まとめ読み: 26.エピローグ  照りつける太陽が頭を焦がす。太陽光への対策に布製の帽子を被っているのに、おそろしいほどの熱を感じている。  視界の全ては砂色だ。  粒の細かい砂が、一面に満ち満ちている。一歩進める度に砂が体重を受け止めて沈むため、足元も覚束ない。  加えてこの空気だ。太陽光に熱された空気は非常に熱を持っており、鼻や口から息を吸う度に、己の内側が燃やされているのではないかとさえ思ってしまう。  全く、ダルマスカ砂漠は厳しい土地だ。飛空艇の一つでも用

    • FFXIV Original Novel: Paint It, Black #12

      前: まとめ読み: 24.  二匹の獣が互いの牙をぶつけ合う。  何度も、何度も、何度も。  スリィの刃が右から迫る。ナインの槍が振るわれ、ガンブレードが大きく弾かれる。  槍の勢いを利用して石突がスリィへと迫る。防御は不能と判断して彼女は身をかがめた。柄による攻撃は回避できたが、ナインは軌道を急速に修正。屈んだスリィの頭めがけて石突を振り下ろした。  スリィのガンブレードが戻り、柄を受け止める。かと思いきや、彼女は衝突のタイミングで力を抜き、槍を受け流す。そのまますぐ

      • FFXIV Original Novel: Paint It, Black #11

        前: まとめ読み: 23.  敵の剣が褐色のヴィエラの元に迫る。  槍の柄で左に弾き、わずかにぶれた軌道を修正してそのまま前へと突く。槍斧の刃は鎧に覆われていない喉の柔らかな肌を突き抜け、致命傷を与えた。傷口から勢いよく血が吹き出し、他の味方に血を浴びせた。  血にまみれながら兵士は前へ進む。力任せに剣が振り下ろされるが、考えなしの攻撃はナインにとって無意味だ。喉に突き刺さったままの兵士の死体をそのまま横へと薙ぎ払い、一人の姿勢を崩す。回転を利用して左のもう一人へと右回

        • FFXIV Original Novel: Paint It, Black #10

          前: まとめ読み: 21. 「診断終了。視界システムが損傷、接続解除。任務継続、可能」  ノイズまみれの声が言う。  その声は可憐な少女である彼女とは似ても似つかない。 「お前、スリィ、なのか?」  だがナインは目の前の少女がスリィにしか見えない。  数年を経ていくらか成長した、かつての戦友にしか見えないのだ。 「作戦行動を再開」  対して金髪の女はナインの言葉を意に介さない。まるで彼女の言語が理解できないように、耳に届いていないのだ。  黒い鎧に覆われた女が再びガンブ

        FFXIV Original Novel: Paint It, Black #13 Epilogue

        マガジン

        • FF14 The Ghost In The Machine
          6本
        • FF14 Open Your Eyes
          3本
        • FF14 Novel: Paint It, Black
          13本
        • 彼女の奇妙な愛情
          7本
        • FF14 origin episode
          9本

        記事

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #9

          前: まとめ読み: 20. 「――ナイン」  声が自分を呼んでいる。意識が上へと登ることで、夢から睡眠へと変わり、幻影ではなく暗闇を意識することになる。  瞼の裏の暗闇だ。  頑固にくっついて離れない瞼を不断の努力で開くと周囲の様子が目に入る。その大半はぼやけているが。 「おはよう、ナイン」 「ああ……」  歪んだ視界の中で美しいアウラの女が微笑んだ。洞穴は薄明るくなっているが、外は白い靄がかかっている。山から霧が降りてきているようだった。鼻先が冷えているのを感じる。鳥

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #9

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #8

          前: まとめよみ: 18.  ████████████████████  ██████インパヴィダス野営地████████ナイン███████スリィ████████  ███████五五年星二月一日 「ナイン、ナイン……」  誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。微睡みの中から意識を引き上げる、澄み切った水のように美しい声だ。  ナインは重たい瞼を何とか上へ押し上げて、声の主を探そうとした。ぼんやりとした視界の中に、誰かの輪郭が浮かび上がる。 「スリィ」 「おはよう、ねぼすけ

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #8

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #7

          前: まとめ読み: 16.  ██████████████████████  ███部隊インパヴィダス██████████████████████████████████グリュシュカ市内  市庁舎████████████████████████塔███████  ████████████████ナイン██████████スリィ██████████████  ███████五十四年霊五月二十四日 「部隊を二つに分けましょう」  最初にスリィが提案した。  ナインは理解し

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #7

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #6

          前: まとめ読み: 14.  ███████████████████████████  ███部隊インパヴィダス██████████████████████████████████████████グリュシュカ  飛空戦艦ミマス████████████  ████████████ナイン█████████████  ████████五十四年霊五月二十四日  まるでコロッセオだ。  飛空戦艦の窓から眼下を覗いた彼女はそのような感想を抱いた。  地上には巨大な街がある。そこは

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #6

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #5

          前: まとめ読み: 12.  █████████████████████  ガレマール帝国属州█████████  █████████ナイン████████████████████████████  █████████五十四年星五月二十日  最もよく覚えているのは自分の号令だ。 「インパヴィダス降下!」  落下、落下、落下。  もう何度落下したのか覚えていない。  落下、落下、落下。  落下し、着陸し、前進し、殺す。  落下、落下、落下。  泥濘の戦地に降り立って殺す

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #5

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #4

          前: まとめ読み: 8. 「……もう二度と付き合わねえからなこんな作戦……」 「ははは、貴重な経験ができたと思いなよ」  ロクロが用意した縄には登りやすいように工夫がしてあった。数イルムごとに取っ手というか、出っ張りのようなものが装着されており、単純に縄だけを登るよりはずっと楽に縄を伝って輸送艇の上に辿り着くことができた。  ただ、それは縄が風に揺れていなければ、の話だ。輸送艇は速度を増していくばかりであり、船体後方に密航者がいることなどお構いなしに方向と高度を変える。

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #4

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #3

          前: まとめ読み: 6.  翌日の明け方過ぎ。二人はキャリッジが集まる街外周部の一角を訪れていた。  ナインが何度もあくびを隠せないほどの時間帯だというのに、彼女が想像していたよりもずっと人が多い。深夜から未明にかけての漁で獲れた魚の第一便がアイスシャードとともに詰め込まれているのだ。  水産業関連の大量輸送用羽車がいくつか検査を受けてから発車していく。この時間帯から動くキャリッジは少ないらしく、御者を探すのにやや難儀した。  ナインはまだ眠気が取れていないらしく、どこ

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #3

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #2

          前: まとめマガジン: 4.  █████████████████████████  ████████アトルム王国█████████████████  ██████ナイン████████████████████  █████████五十四年霊四月二十四日  轟々と魔導機関の立てる、耳障りな音がこだまする。  鋼鉄の魔導輸送艇の薄暗い室内に詰め込まれ、ひしめき合う兵士たちがいた。彼らは一言も言葉を発さない。それが許されていないというのもあったが、誰もが体を強張らせ、視線

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #2

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #1

          1. 「ぎゃっ……!」  剣の閃きで、人間の喉から血液と同時に言葉にならぬ断末魔が漏れ出た。  山賊と思しき汚らしい獣皮を纏った男たちが、ろくに手入れもされていないような刃物を振り回して商人たちを殺していく。  その日、高地ドラヴァニアの空は厚い雲に覆われていた。降雨こそないものの、昼間でも暗く感じられるほどだ。ここは霊峰ソーム・アルの北側であった。そのような荒れ地の付近に集落などもなく、ここには山賊と商人以外に人間の姿はなかった。当然ながら彼らを見咎める衛兵など存在しない

          FFXIV Original Novel: Paint It, Black #1

          彼女の奇妙な愛情 #6(終)

          まとめ読みマガジン: 6.彼女の奇妙な愛情  僕は自分のことが嫌いだ。  気付けば自分のことを嫌っていた。  自分のことが嫌いだからこそ、誰にも好かれるはずがないと信じている。  普通であることが大嫌いだ。  でも脱却する為の努力をしていない。  ずっと座り込んで、他人を羨んでるだけだ。  他人のことを、下から見上げて、見下している。それだけの醜い人間だ。  僕は普通だけど、その普通から脱却しようとしていないのなら、普通に自ら甘んじているだけだ。  誰かは

          彼女の奇妙な愛情 #6(終)

          彼女の奇妙な愛情 #5

          まとめ読みマガジン: 5.ニノマエマナコの世界  翌朝、いつものようにベッドの上で目覚めた。  寝ぼけ眼だけを動かして、周囲を眺める。パステルカラーの壁紙、適度に片づけられた室内。落ち着いた木製家具。本棚には適当な量の本が詰まっていて。  我が家の、わたしの部屋だ。  意識が覚醒してくるにつれ、色々と思い出されることがあった。  今日が土曜日であることとか。  土曜日だから授業はないこととか。  アラームをセットしていたはずだけれど、と携帯電話に目を向けると、

          彼女の奇妙な愛情 #5

          彼女の奇妙な愛情 #4

          まとめ読みマガジン: 4.彼女の症状  翌日、学校には暗い気持ちのまま登校した。  暗いというよりも、もやもやしている。頭の中を靄が覆っているような、そんな感覚。  結局、昨夜は眠りがとても浅かった。特に何か夢を見たという記憶はないが、何度も何度も途中で覚醒しては、無理やり眠ろうとしたことで、変に体力を消費してしまった。  欠伸が何度も出る。目尻に塩水が溜まる。  相変わらずもやりとした感覚が頭を包み、寝不足で授業中に惰眠を貪ることになるだろう。  授業の始まっ

          彼女の奇妙な愛情 #4