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【書評】思考を耕すノートのつくり方_著:倉下忠憲を読んで

本書は地味です。それが読んで最初に出てきた感想でした。でも、だからこそ、現代に要請されて生まれてきた本だとも感じました。その理由を書いていきます。

ざっくりと本の内容を説明

本書はタイトルの通り、読者が思考を耕す(考えを広げる)為のノートの作り方の指針が著された本です。

ノートの意義やノートを構成する要素(ノートの種類や、罫線の種別など)を細かく見つめて、各種あるノートやその構成要素が、どういう風に思考に影響するかを丁寧に書いた本です。

現代に要請されたとはどういう意味か?

現代はコスパタイパといった言葉が象徴するように、超効率化の時代です。

不安な社会情勢や頻発する自然災害により先行きの見えなくなった人生において、社会や会社の神話は崩壊し庇護は期待できず、個人の身につけた力のみが拠り所とされる時代です。

普及したインターネットは情報を民主化し、手軽により良い方法(ノウハウ)へアクセスできる環境を生み出しました。何にも依存しない個の力を養うためノウハウを効率よく身に着けたい、そういった願いが現代人には宿ります。

けれども他人には合ったノウハウが、自分にも合うとは限りません。今後のノウハウに求められるのは個人の生活に最適化されているのか個人に寄り添ったものであるのか、という部分です。そういった話は本書にも書かれています。

本書では、ノートという知的道具の構造・構成、各構成要素の思考・思索への影響などを明示します。そしてそれらを踏まえたうえで、読者各々の生活にマッチするノートの作り方やノートの書き方を自分自身で考えてみませんか?と提案し、その為の道筋を指し示しているのです。

地味な本だと感じた理由は?

本のコンセプトの都合上、ノートという知的道具の要素を分解しそれを考察する、そんな地道な足取りを歩まなければならない為、こんな素晴らしくて真新しいやり方があるよ!これで万事解決!といった魔法じみたキャッチーな話題は無いのです。

しかし、万能な方法・ノウハウなどそもそも無く、無いがゆえに、少しでも自分にとって効果のある方法自分で探求できる様になりませんか。そういった願いが「思考を耕すノートのつくり方」には込められている様な気がします。

総評

極めて現代に必要とされるノート術の本です。ノウハウの個人への最適化を推し進める、その内容の丁寧な足取りから想像できぬほど、非常にパワーの宿った本だと思います。

本書にも書かれていますが、思考を耕す知的道具の中でも数百円単位で手に入り、生活に絶大な効果を与えるものはノート以外には見当たりません。

ノートとペンを携えて、自分にとって嬉しい効用のあるやり方を模索してみませんか。

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