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五十肩を一瞬で治す方法を整形外科専門医が本気で考えてみた

五十肩で検索しようとすると、検索窓に「五十肩を一瞬で治す方法」という検索ワードの候補が出てきます。
これは予測検索ワードと言って、実際に検索する人が多いワードなんですが、それだけ「一瞬で治す方法」を求めている人が多いことになります。それに対して、医師として

「一瞬で治す方法などあるわけがない!」

と断罪することはカンタンなんですが、あえて、「一瞬で治ったと思えるくらいの変化が起きるケースはなんだろう?」ということについて考えてみたいと思います。

当然、pubmed(世界中の論文が集まるサイト)で論文検索しても「五十肩を一瞬で治す方法」はヒットしませんので、主に歌島の五十肩治療の経験からお話しします。

考えた結果、4つくらい、「あ、一瞬で治った!」と思う人がいてもおかしくないかなぁというケースがありました。

◆ケース1:五十肩と思いきや肩こり

まずこれです。五十肩っていう言葉がそもそもザックリしているので、肩こりと五十肩を混同している人も少なくありません。

肩こりっていうのは慢性的な状態でもありますが、一方でマッサージ1回でとてもラクになったという経験をお持ちの人もおられると思います。

本当の五十肩(肩関節周囲炎OR癒着性肩関節包炎)はマッサージや何らかの施術で一瞬で改善した感覚になるのはなかなか厳しいと思います。

◆ケース2:五十肩と思いきや石灰沈着性腱板炎

次にこれです。五十肩と治療院で言われていたし、自分でもそう思っていた人の肩が急に激痛なり、整形外科を受診。レントゲンを撮ってみたら石灰が見つかった。診断は石灰沈着性腱板炎の急性期。

あまりに激痛なのでステロイドを石灰の周囲の炎症が強い部分に注射すると、一瞬で痛みが消えてしまった・・・

というケースは確かによくあります。一瞬は言い過ぎですが、そのくらい劇的に痛みがラクになるという患者さんは多いです。

◆ケース3:突発的な「何か」で関節包の癒着が剥がれる

これも実はいろんなところで起こっているかなと思っていて、五十肩って関節包が炎症を起こして、周囲と癒着したりしながら、どんどんぶ厚くカタくなるんですね。これを癒着性肩関節包炎と言ったり、凍結肩と言ったりするわけですが、この癒着も最初はちょっとしたことで剥がれたりすることがあります。

その瞬間にブチっと音がしたりして、時に激痛だったりするんですが、その後、肩が動くようになった・・・みたいなエピソードってちょくちょく聞きます。

また、これを整体などの徒手療法で起こすこともあり得ると思います。整体で少し痛みを伴う動きを強いられたあとに、肩が動くようになる・・・みたいなことですね。

しかし、しかしです。

このケース3は「運が良かった」と考えていただきたいなと思います。間違っても狙わないでほしいと。なぜなら、突発的なその「何か」のせいで五十肩が悪化する可能性も十二分にあるからです。

実際、逆のケースもよく聞きます。ふとした突発的な動きで肩の痛みが急に強くなって、それ以降、可動域がどんどん狭くなっていくようなエピソードですね。これも同じように突発的な「何か」で癒着が剥がれるような力が加わったと思われますが、その結果、炎症が強まってしまったと思われます。そうなると逆効果です。

つまり、この突発的な「何か」・・・それは痛みを強くガマンして行うストレッチや、痛みを伴う施術などを含みますが、これによって改善するのか、悪化するのか、どちらに転ぶかわからないという賭けにになり、僕の経験的な印象では、この賭けに勝つ確率はとても低いです。

◆ケース4:授動術

ということで、五十肩が一瞬で治る・・・と感じられるケースには関節包の癒着が関連していそうだということがわかります。しかし、それをむやみに剥がそうとすると、逆効果のリスクの方が高いと。

ですから、癒着してカタく、ぶ厚くなった関節包に対して戦略的にアプローチしていく必要があります。その基本は可動域訓練です。関節包のストレッチと言ってもいいでしょう。これは痛みが増さない程度にジワジワと毎日行って、時間をかけて改善していくことになるので、「一瞬で」という感覚にはなりにくいです。

一方で、強い拘縮(カタくなった状態)を起こした五十肩に対して行われる手術として「授動術」があります。僕の場合は関節鏡手術によって、直接関節包の癒着を剥がしたり、切れ目を入れます。これは確かに、手術前後で全然可動域が違うので、一瞬で治ったと実感する患者さんも少なくないです。ただ、これだって、術後の痛みもあるわけですから、全員が全員、「一瞬で治る」というのは言い過ぎです。

また、サイレントマニピュレーションという麻酔をした状態で肩をいろいろな方向に限界を超えて動かすことで結果的に癒着を剥がし、関節包を切るような治療もあります。これも、先ほどの関節鏡手術の授動術と、肩の中では似たようなことが起こっています(あくまで似たような・・・ですが)。その結果、一瞬で治ったと思える患者さんがおられます。

専門医としては「そんな甘い話はないよ!」と断罪してしまうようなテーマについても、想像力を働かせて語ってみることも興味深いですね。

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