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肩の痛みの原因になる筋肉トレーニングとは?【健康のためなら肩だけは筋トレしないで!と言う理由】

僕は肩専門外来をやっているので・・・というか、今はそれしかやってないので、肩の痛みの患者さんばかりを拝見しています。

「肩が痛くなったきっかけや原因はありますか?」

とお伺いすると、一番多いのは「思い当たる節がない」ですが、その次に多いのはもしかすると「筋トレ」かなという印象です。これは比較的若い人に多い「ジムでのウエイトトレーニング」はもちろん、自宅で行う自重での腕立て伏せなどのトレーニングも多いです。はい・・・腕立て伏せは多いですね。
そこでいつも僕が言うのは、

「もし何かのパフォーマンスのために必要だったり、単純に肩の筋トレがどうしてもやりたいなら止めませんが、健康のためのトレーニングならば肩以外でやりましょう」とお伝えしています。

それくらい僕の経験による感覚値で言えば、肩関節の動きに強い負荷をかけるエクササイズ(腱板筋群や肩甲骨周囲筋へのエクササイズは除く)はハイリスクです。
ただ、あくまでも僕の感覚値でしかないので、いつも「エビデンスはないんですが・・・」とお伝えしておりました。

ただ、ちゃんと調べればいろいろと出てくるモノで、例えば、2010年のレビューがいろいろな研究を紹介しながら述べてくれています。

Liaghat, B. et al. Diagnosis, prevention and treatment of common shoulder injuries in sport: grading the evidence - a statement paper commissioned by the Danish Society of Sports Physical Therapy (DSSF). Br. J. Sports Med. 57, 408–416 (2023)

このレビュー論文で述べられているのは・・・

筋トレはやはり「肩」がハイリスク

記録されたレジスタンストレーニング(筋トレ)に関連した傷害や障害の最大36%が肩複合部で発生している

が示されていて、要は1/3は肩だってことですね。
さらに全体的にも筋トレの普及によって、増加傾向のようです。

レジスタンストレーニングに起因する傷害の発生率は過去10年間に増加し、参加者の25~30%が医師の診察を受けるほど重度の傷害を報告している。さらに、過去数十年間で、ウェイトリフティングに関連した救急外来受診率は35%増加している。

とあります。

筋トレは「肩」にどんな問題を起こすのか?

僕が最も多いなと感じるのはベンチプレスを原因とする肩鎖関節の問題です。特に論文では肩鎖関節融解症を紹介しており、これは別名「重量挙げ選手の肩」と呼ばれているようです。肩鎖関節の軟骨下ストレス骨折、鎖骨遠位端の骨溶解が特徴です。要はベンチプレスが特に多いですが、肩の筋トレの負荷によって肩鎖関節が傷んでしまい、その反応として骨が一部溶けてしまうようなことが起こるわけです。

ただ、僕の感覚値では、溶けるより、軟骨がすり減って変形性肩鎖関節症になっていたりするケースの方が多くて、患者さんも「ここ(肩鎖関節)が痛くて、出っ張ってきました・・・」とよく言います。

次に多いのは腱板の問題ですね。論文でも最も多い軟部組織損傷は上腕二頭筋長頭腱と腱板であったと報告しています。さらに、肩の前方不安定性が生じて、肩が痛いというケースもあります。これはハイファイブポジションと呼ばれる、肩を外転外旋した状態を強いるトレーニングが特に問題だとされています。ハイファイブっていうのは、和製英語ですが「ハイタッチ」のことですね。

腱板や肩の不安定性の問題から考えられることは、やはり肩を安定させるインナーマッスルと、筋トレのメインターゲットであるアウターマッスル(大胸筋、三角筋など)とのアンバランスがどんどん助長されることが問題と言えそうですし、それもさきほどの論文で言及されています。特に筋トレを習慣的に行っている人において

  • 肩の内旋筋力に比べて外旋筋力が弱い

  • 肩の外転筋力に比べて外旋筋力が弱い

  • 僧帽筋上部に比べて下部が弱い

という傾向があるようです。

じゃ、どうしたらいいの?

ということで、結論ですが、ここまでのことがわかっているなら、「ハイファイブポジション」を強調しない筋トレフォームにして、インナーマッスルや僧帽筋下部を併せて鍛えれば大丈夫なんじゃない?って思いますよね。

たしかに、それは1つの対策です。しかし、インナーマッスルはなかなか筋肥大や筋力アップが起こりにくいと考えられており、一方で、アウターマッスルはわかりやすく太く、強くなります。ですから、意識してアンバランスを起こらないようにしたとしても、やはり筋トレをいっぱいやればアンバランスは起こってしまうんじゃないか・・・と危惧します。

なので、結論。「健康のためなら肩以外の筋トレをしましょう」という最初の言葉をこれからも繰り返すのだろうなと思います。肩については肩甲骨周囲筋と腱板筋群だけ小さな刺激を加える習慣作りをオススメしています。その1つが「うちわあおぎ」ということになりますね。(最後に宣伝 笑)

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