見出し画像

高齢者の睡眠について考える


1.高齢者の睡眠の特徴

 1)夜間の睡眠時間減少
 2)中途覚醒の増加
 3)睡眠開始の遅延
 4)浅い睡眠
 5)睡眠覚醒リズムの変調

2.高齢者の睡眠障害

  1)不眠
  2)昼間の傾眠
  3)概日リズムの障害
  4)レム睡眠行動障害

 入院による環境の変化、身体症状の変化、点滴や酸素などの治療への違和感・ストレスなどの影響でも、睡眠に支障が出てくる。さらに高齢者は、若年者と比較をしても睡眠の質など、さまざまな変化が生じていることを看護師は知る必要がある。この知識なくして、睡眠に対するケアは実践できないのではないかと思われる。
 ひたすらに「寝てください。今○時ですよ。」と言う声かけを繰り返し、最後には「こらえてくれる?はよう、寝て!!」と言う不適切な声かけにはなってはいないだろうか?

3.睡眠障害の要因をアセスメントする

 1)本人の訴えを聴く
       ①入院前の就寝時間、睡眠時間
  ②中途覚醒の有無・時間
     ③熟睡感
  ④睡眠に対する考え

 2)睡眠覚醒状況を把握
       ①睡眠時間
       ②就床時間
       ③夜間の中途覚醒回数
       ④昼間の居眠り

 3)夜間の睡眠が障害される要因
   ①環境:光、騒音、室温、布団
      ②心理的:不安、ストレス、心配ごと
      ③身体的:痒み、痛み、熱、夜間頻尿を呈する疾患

4.睡眠薬

 睡眠障害に対するケアは、終日の関わりが必要であると思われる。よく昼夜リズムの変調というアセスメントで睡眠薬が投与される。睡眠薬の効果が少ないと判断されると、さらに不穏と判断され、抗精神薬が処方されることもある。リスパダールとゾルビデムの処方を医師に依頼し、すぐさま両者が併用される。副作用の申し送りなどもされず、効果をひたすらに追いかける。日中の覚醒状況や離床状況などの視点で討論されることは少ない。
  とはいえ、睡眠障害に対して、必要な睡眠薬が投与され、その人に適した睡眠がとれることは生活の質もアップすると思われる。薬物療法が必要なこともある。しかしながら、全ての人が薬物療法が必要な訳でもなく、非薬物療法での関わりで睡眠が充分とれることもある。

①ベンゾジアゼピン受容体作動薬
   ・ベンゾジアゼピン系:ハルシオン、デパス、リーゼ、レンドルミン、
            ソラナックスなど
   ・非ベンゾジアゼピン系:マイスリー、アモバン、ルネスタ
②メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
③オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

①ベンゾジアゼピン受容体にはω1ω2を刺激する。Ω1は、筋弛緩作用・抗不安作用、ω2は催眠作用がある。両者がはたらく為に、転倒に繋がる事例が多く、高齢者に薬物有害事象をもたらしやすいと言われている。その為、最近は高齢者に使わないのが当然になってきている。
 デパスはよく処方される薬であり、危機感が少ないが、デパスの服用で転倒に至ったケースも実際に存在するので注意が必要である。

・非ベンゾジアゼピン系は、高齢者によくよく使用される。ω2の作用が強く、転倒は少ないと言われている。しかしながら、超短時間作用のものであっても、睡眠薬の効果の出現時など転倒は起きるという認識は必要であると思われる。

・ALB低下や栄養状態がよくない人は、薬の効果が大きく出現しやすい
・加齢に伴い、腎肝機能低下し、薬物代謝も低下し薬物の血中濃度が高まる
・代謝機能低下で半減期延長し、薬物の血中濃度時間が長い→身体に残りやすい

③ベルソムラ:急性期病院からの転院患者がよく服用している。転倒や認知機能低下のような有害事象が少ないと言われている。しかしながら、まだ新しい薬なので、はっきしたことがわかっていない現状もある。副作用で悪夢と示されており、実際に悪夢とよくみると話す高齢者も臨床でも存在し、中止になったこともある。


5.ケア

 私は、安易に睡眠薬という思考には至らないよう留意している。眠れない人に対して、「横になって、身体を休めるだけでも楽ですよ。」という声かけを実践している。それだけでも充分、心身の疲労は少なからずとれるのではないかと思っている。寝れない人に寝てくださいと繰り返すことは逆効果でストレスになるのではないかと思われる。寝れるもんなら寝ると誰しもが思うのではないかと。。 
    人は誰しも眠れないことがある。眠れないと不安や孤独にさいなまれる。この中において、安心感、ホッとできる環境を整えること、声かけ・関わりを実践することが重要であると考える。
   カフェインが気になる人は白湯でもいい。病院のお茶でもいい。本人が好きなコーヒーでもいいと思う。ゆっくりと、同じ視線で話す姿勢・態度を示すことが大切。ホッとする、微笑む時を過ごすことがいちばんの睡眠薬である考える。

 20時〜朝食までの睡眠を患者に求めるのは酷な話である。

 モーニングケア、整容、朝食、口腔ケア、日中の活動・・・・当たり前の生活を過ごすことが睡眠に繋がるのではないかと考えている。私たち看護師の業務である「療養の世話」、ADLのケアを丁寧に実践していくことが、いちばん重要で、いちばん難しいことかもしれない。

6.課題

 どうしても睡眠に至らずに、必要時指示を投与するときの関わりが大切であると考えている。高齢者は睡眠薬を好まない人もいる。その人に対して、意地でも飲んでもらおうと看護師と患者が喧嘩越しのコミュニケーションが病室からきこえてくることがある。そこまでして眠ってもらうのが正解なのか・・・と自問自答する。
  眠れないことを共感し、患者が納得した上で睡眠薬を服用することが必要である。これは改めていうことではないが、対象者が認知症の人となると、これが遵守できていない現実がある。
 睡眠に対しての問題は永遠である。看護師も納得し、患者も心地よく夜を過ごせられるような関わりが実践していけるように模索していこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?