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若葉マークを外されたわたしと、

 遊んで帰ってきたら車がなんか綺麗になっていた。とすぐ分かったのはわたしが洗車というものを怠りすぎて本来白いはずの車体が苔でいつもうすら黄緑だったからで、それは色の変化としてはアハ体験くらいの地味〜な変化であるのでわたしはそれに一目で気がつけた自分の色彩感覚を心の中で誇りつつ、しかしこの家のだれか(たぶん絶対に父)がわたしの怠惰さと、ずっと汚れを放置され続ける可哀想なこれを見かねてわざわざ洗車してくれたのだなあ、と理解すると同時に後ろめたさに少々項垂れた。そのまんま車体の周りを一周すると、バックドアに乗り始めてから4年ほどずっとつけてあった、若葉マーク🔰も苔とともに消えていることに気がついた。
 
洗車していただき、まことにありがとうございます…

 キッチンにいる父にぼそぼそと感謝の意を示す。ぼそぼそ言うのはこの後に
いやさすがに車汚すぎるやろ、
とか
ちゃんと定期的に洗いなよ、
とかの至極真っ当なお言葉が降ってくることを見越してのわたしなりの防衛本能が働いているからだが、経験則としては正直ぼそぼそ話すことによってより相手に強く出ることを許してしまっているような気はしている。しかし簡単にやめられないのだから仕方がない。

前のタイヤ、あれもうツルツルやから替えなあかんで

と父はわたしをひと言も責めず、ただ前輪タイヤに寿命がやって来ていることだけを伝えた。やっさすぃー!わたしはほっとして声のトーンが無意識にあがる。

初心者マークも消えてたやん、あれわたしのシンボルなのに

まったく名誉なことでは無いが、あまりにも外すのを先延ばしにし続けた若葉マークはいつしかわたしの中でわたしのアイデンティティと化していたのだ。あ、無い、という小さな喪失感から若干父を責める口調になってしまうがしょうがない、ということはない。

洗う時邪魔やったから外した

いやまあそうでしょうね、というくらいさっぱりした答えが返ってきて、わたしも一抹くらいは心に残してあった若葉マークへの未練をさっぱり忘れた。

 弟は昨日大学入学のために実家を出て行ったし(画像は引越し途中に寄った亀山SA名物カメパンである。美味しかった)、わたしは明日から新年度の仕事がはじまってしまう。
いまの仕事、正直マルチタスクばかりでびっくりするほど向いてないし、自分でもびっくりするような失敗をするし、将来的にもよく分からないし、いまだに出来ないことと分からないことまみれだし、「まだ〜やから」ではなく「もう〜なのに」と言われる頃合いだろうし、というか既に言われているが、とまあ、車と同じようにわたし自身も若葉マークを外されてぼちぼち本格的に病みはじめるかもしれないけれど、よっしゃ辞めてやるぜ!という気が起きない間は、ちゃんと頑張ることを楽しめる工夫をこらしてみよう、まだ諦めないでいよう、と思うのだ。行きたくな!!!!

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