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外来診療のための患者サマリーを作りたい!

 私たちは、外来診療の患者さんの複雑な病歴や様々な背景情報を効率的に整理し、短時間で状況を把握するためのサマリーを作成する患者情報マネジメントファイルのプロトタイプを開発しました。
 このプロトタイプは、実際の診療環境での使用を通じて、製品改善のためのフィードバックを提供していただける方を募集しています。プロトタイプの製品・サービスは全て無料です。
 カスタマイズ可能なデータベースファイルと入力支援サービスを含み、診療スタイルや科目、利用している電子カルテに最適化されています。この先進的なツールを利用して、より良い患者ケアを実現しませんか?


現在の外来診療における課題

患者さんの病歴がややこしい

一人の高齢者患者さんの例をお見せします。この方はいくつもの疾患を抱え、過去10年で3回の入院を含む様々な医療行為を受けています。このような患者さんの情報を一目で掴むのは、通常のカルテでは難しいですよね。

こちらは私たちの電子カルテでの記録です。複雑な画面で、入力支援のための情報が多くて患者さんの情報がパッとわかるようにはなっていません。

現状の電子カルテの使いにくさ


現在現状の電子カルテは、特に保険診療において診療報酬請求に関する帳簿として詳細な記録を重視していますが、その結果、読みにくさや一覧性の欠如があります。
保険請求の根拠となる診療行為の内容や実行者、日時などを正確に記録する帳簿で、会計における勘定元帳のようなものです。つまり保険診療上の監査(!!)に耐えうるものを作成する必要があり、これは医療機関にとって死活問題なのでどうしてもこの機能を優先していると思われます。
また患者さんの個人情報を扱うため高いセキュリティ要件がありさらに、ベンダーロックインといわれる問題があるため、なかなか入力した情報を活用することが難しくなっています。
クリニック向けの電子カルテの電子カルテのほとんどが利用しているデータベース管理システムを公表しておらず(問い合わせても教えてくれません)、データを他のデータベースから参照したりcsv.などのフォーマットで出力することもできません。
 厚生労働省の医療DX政策では標準規格準拠の電子カルテ導入の推進策(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000877227.pdf)が示されており今後HL7_FIHRなどを介してデータの共有は改善されると思われますが現時点ではデータの二次利用が難しい環境にあると思います。

外来診療のむつかしさ・課題

また外来診療では、診療時間が限られていて、多くの医師が外来診療前に予約患者さんのカルテを参照して予習しています。働き方改革もあり、勤務時間外での電子カルテの利用を制約するような医療機関も出てきているそうなのでますます外来診療が難しくなってきます。

外来診療での大きな課題は、患者さんの情報を短時間で理解することです。膨大なカルテ上の情報から個々に示すような必要な情報をコンパクトにまとめたサマリーがあれば短時間で診察する患者さんの要点を押さえ患者像を理解することが可能になります。しかし、カルテから多くの患者さんのサマリーをまとめるのは結構大変です。

患者情報マネジメントファイルとは何か

患者情報マネジメントファイルの概要

現在私たちが利用しているファイルの概要です。ファイルメーカーを利用したリレーショナルデータベース上で運用しており、過去8年間に約16,000名の通院患者さんの情報を登録しています。

サマリー表示画面の例です病名や診療所の記載項目を時系列で整理したサマリーで、情報が一目でわかるようになっています。

サマリー作成の構成

 血液検査の結果や処方情報など大量に発生するデータは検査会社からのファイルやレセプトコンピュータから取り込みで入力します。また院内の超音波検査はレポート作成ファイルと連携してデータを自動入力しています。
 院内の心電図や胸部レントゲンなどは読影所見を直接入力するフォームを使用しています。また院外で実施した内視鏡などの検査所見も検査ごとに選択項目から入力可能なフォームを利用できます。
 健康診断の結果など、アナログで提供される情報も、タグ付けして構造化し、簡単な手順で記録しています。




ファイルの構造としては、検査結果や様々な診療記録を直接記録するフォームと、そのパーツ化された診療情報をブロックのように組んでサマリーを作成する部分で構成されています

情報の二次利用

情報の二次利用としては以下のようなものを実装しています

  • サマリーを利用した診断情報提供書作成

  • 患者さんへの病状説明・検査結果説明の作成

  • 医療スタッフに対する病状説明・検討資料の作成

  • 栄養指導依頼作成フォーム

  • 心臓リハビリテーション依頼作成フォーム

  • 生活習慣病管理料文書作成フォーム

  • 身体障害者診断書作成フォーム

  • ChatGPT-APIを利用したプロンプト作成フォーム

ChatGPT-APIを使用したプロンプト作成フォームについて

ChatGPTのAPIを利用して、データベースに入力された情報からプロンプトを追加し、診療所の様々な課題を解決する機能を実装しています。
個人情報がプロンプトに入らないようにチェックしたうえで、データベース上の患者情報に以下のような問い合わせ項目を追加してChat-GPTに問い合わせるフォームを実装しております。使用にはChatGPTの有料契約が必要となります。以下のような用途を想定しています

  • 患者サマリーの解説(専門用語を修正して読みやすくする)

  • 症状や検査所見を追加して鑑別診断などの洗い出し

  • 患者サマリーに基づいた服薬内容のチェック

  • 疾患ガイドライン遵守のチェック

たとえば自分が作成したサマリーだと作った自分はわかるのですが、略語や専門用語が多いと患者さんへの説明用や、医療スタッフに提示してもわかりにくい場合があります。これをChatGPT-APIを通じて分かりやすい文書やポイントを絞った説明に改変することが可能となります。

ご興味をいただいた方へ

約8年間自院でコツコツ作り上げてきたこのファイルをなんとなく世の中に問いたくなって、このたびプロトタイプを提供して開発にご協力いただける方を募集することとなりました。
昨年より2023年度「医療DXイノベーション人材育成プログラム」に参加させていただき2024年1月の成果発表会でピッチさせていただきました。参加者投票でビジネス賞とテクノロジー賞の2つの賞をいただきのぼせ上がってこのエントリーを作りました。
とりあえずビジネスとしての製品開発以前に以下の価値仮説を実証してみたいと思っています。


患者情報マネジメントファイルのマニュアルはこちらから

つきましてはもしご興味ありましたらお話だけでも結構ですのでぜひお問い合わせください

  • 外来医療に関わる全ての医療職の方

  • 外来診療のマネジメントに関心のある方

  • 医療関係に興味のあるエンジニアの方

  • スタートアップに興味のある方

医療法人植谷医院 植谷忠之 tadauetani@gmail.com

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