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駒場図書館と10円玉のこと【阜】

 日頃の不勉強が祟ったのだろうか。駒場図書館で卒業論文のための参考文献を読みあさる日々が続いている。新書や単行本であれば借りて家で読もうとなるのだが、複数冊まとめて製本された論文集となると話は別である。たった数十ページの論文を読むためだけに関係のない論文まで家に連れて帰るとなると、それだけで一苦労である。よし、お金はかかるがコピーしていこう。

 駒場図書館の1階には複写機(コピーカード・現金対応)が数台置かれている。コピーカードを持っていなかったので、硬貨が使えるものを選んだ。図書館で本を複写するのが初めてとは言え、使い方は東大新聞編集部で使用しているものと変わらない。500円を投入して分厚い本を上から押さえ、スタートボタンを押すところまでは上手くいった。

 「機械内部に異常が発生しました。/ 電源を切り、画面の表示が消えるのを確認してから電源を入れてください。なおらないときは、テレフォンセンターへ故障を連絡してください」

 出てきたのは白紙である。あれ?ちゃんと論文の最初のページを置いたんだけどなぁ。自分がコピーしようとしているものが実は国家の重要機密書類で、賢い複写機くんがとっさの判断で差し止めたのか、とくだらないことを一瞬だけ考えたが、そんなことがあるはずもない。自分ではどうしようもないのでカウンターに向かった。「すいません、さっきコピーしようとしたらエラー出ちゃって……」

 代わる代わる3人の職員が出てきたが、結局のところ解決せず。せめて10円は返してほしいというと、図書館からは返金できないという。生協の管理している複写機なので返金申請は生協の方にお願いします、と。今生協やってますかね?あぁ、今コロナで営業時間15時までなんですよ……。結局10玉は返って来ずエラーが出た証明として学籍番号を控えてもらい、担当者から名刺を受け取っただけである。

 そもそも図書館に複写機が設置されているのは、蔵書を複写して研究活動に役立てたい人をサポートするためだろう。複写機が生協管轄であること自体は問題ないが、せめてトラブルが起きたときに図書館内で対処できるように体制を整えておく必要がある。困ったときは生協が対応するといっても、図書館が閉館するより早く生協が営業を終える状況では対応しきれないこともあるだろう。何も生協職員が図書館に常駐する必要はない。普段から密に連絡を取れる関係であれば、10円くらい図書館側で立て替えても問題ないのではないか。いくら「総長が放った光」によって「次の次元へ押し上げ」られた東大とはいえ、駒場図書館がその重要な役割である文献複写の責任も取れないようでは、緊急事態宣言の下でも閲覧席を開放してくれる学生思いの運営姿勢が台無しになってしまう。今後はキャンパス内の組織で緊密に連携体制をとられることを切に願う。

***

 10円を取り返しに駒場Ⅰキャンパスまでの交通費数百円を払うのももったいないので、わざわざ請求しには行かないつもりだ。授業料だと思っておこう。ただあのとき出てきたA4の白紙はメモ用にもらっておけばよかったな、とは思う。 


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