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つり橋経由観覧車前行き【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から31】

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 3月21日、春分の日の朝、私は品川駅港南口にいた。7時48分発の都バスに乗るためである。波01出入系統は都バスでは唯一レインボーブリッジを渡る路線で、JRの駅からお台場地区を結ぶ唯一の都バスでもあった。過去形となっているのは、3月31日の運行をもって運行終了となったからである。
 波01出入系統は、運行終了直前には平日・土曜・休日にそれぞれ1日2往復のみ設定され、交通局が無料配布している都バスの路線図「みんくるガイド」にも載らない、知る人ぞ知る路線だった。
 7時半前に乗り場へ向かうと、「同士」が10人以上並んでいた。主役のバスが停留所に滑り込む。旗日という言葉は最近ではなじみが薄いが、祝日の都バスは車体前面に国旗を掲げる。黄緑の車体に国旗をまとった波01出入系統の姿を見られるのは泣いても笑ってもこの日が最後だったので、都バスファンは思い思いに撮影していた。私も含めて。
 時刻通りにバスは発車。レア路線にもかかわらず立ち客がいるほどだった。数カ所の停留所に停車した後、バスは速度を上げ、「この先、レインボーブリッジを渡ります。カーブが続きますのでご注意ください」というアナウンスが流れた。この内容ももう聞くことはないのだと感傷に浸りつつ、ループ橋を渡るバスから外の光景を見ていた。
 終点、東京テレポート駅前に到着。付近にあるのは、高さ115メートルの大観覧車。1999年の開業当時、「世界一の高さのある観覧車」としてギネス認定されたが、現在世界には200メートル級の観覧車がいくつも存在し、時代を感じさせる。再開発に伴い、この観覧車も8月末をもって営業を終了するそうで、都バスとの組み合わせが見られるのもあとわずかとなっている。ところで、レインボーブリッジはつり橋である。つり橋と聞くと、山奥の渓谷にかかる木造の橋というイメージがあるが、東京の景観を代表するような大規模な橋がつり橋というのは意外な話ではなかろうか。
 なお、波01出入系統は運行を終了したが、波01系統、東京テレポート駅前発中央防波堤行きは引き続き運行している。

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都政新報 2022年6月3日付 都政新報社の許可を得て掲載
【参考資料】
・東京の橋 100選+100 紅林章央 都政新報社(2018)
・2枚目のイラストは2016年12月2日付都政新報に掲載されたものを再掲。当時の記事は こちら から読めます。