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朝から晩までバスに乗る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から37】

梅76甲系統 上成木停留所

 9月20日は「バスの日」。1903年に京都市で日本初のバスが運行を開始したことを記念し、1987年に制定された記念日である。バスの日に向けて何かをしようと思い、私は都バスに一日中乗ることにした。運転手としてではなく、乗客としてである。
 都バスの運行区域は都区内と多摩地域に分かれている。運賃は乗車する都度支払うのが基本であるが、都区内だけなら500円の「都営バス一日乗車券」を、変動運賃制の多摩地域を含めて乗る場合には「都営まるごときっぷ」を購入すると、一日中乗り放題になるのでお得である。今回は、普段なかなか訪れる機会のない多摩地域へ足を運ぶことにした。
 平日の朝、私は花小金井駅北口から梅70系統青梅車庫行きに乗車した。梅70系統は、停留所数80以上、運行距離約30キロを誇る路線。昔は阿佐ヶ谷駅から運行していたというから驚きである。7時23分に発車したバスは青梅街道をひた走り、9時過ぎに青梅車庫に到着。終点に近づくにつれて車窓を流れる風景に緑色の割合が増え、バスを降りると気温と湿度の変化を感じた。さすが長大路線である。青梅車庫から裏宿町行きでさらに西へ移動した後、折り返して青梅駅方面に戻り、10時32分発の梅76甲系統で都バス最高地点である上成木を目指す。バスは力強く山道を上り、11時25分に終点に到着。都バス路線図「みんくるガイド」によると、上成木は「高水三山ハイキング 登山口まで徒歩1分」となっているが、今回の目的はバスに乗ることなので、いったん降りて同じ車両にすぐに再乗車した。折り返しの時刻は11時23分で、すでに過ぎている。次のバスが来るのは7時間後。万が一置いて行かれてはならないと、味わい深い木造の待合所は車内から見るだけにとどめた。それがこのイラスト。いつかは上成木から登山をしてみたい。
 字数の関係で省略するが、その後も複数の系統に乗車し、梅74乙、梅77甲、土曜・休日限定の梅01系統を除く青梅支所担当の全系統に乗車することができた。夜になり、河辺駅前の日帰り温泉施設で汗を流し(いいお湯だった)、最後に梅70系統で花小金井駅に戻ると21時38分に。700円の「都営まるごときっぷ」で、結局4830円分乗車した。お得だが、体力勝負の一日。ここまで極端ではなくても、一日乗車券で何度でも都バスに乗車する楽しみを、バスの日の存在とともに、覚えていただけたら幸いである。

都政新報 2023年9月12日付 都政新報社の許可を得て掲載