すべての観光地が浅草を目指さなくてもいいんだぜ、という話
おはようございます。インバウンド(訪日)メディア(MATCHA)で編集長をしている植松と申します。
前回は、僕たちMATCHAのオフィスがある、浅草の街のインバウンド的な価値についてお話しました。
今回は、そんな浅草の街を見ていて感じる不安についてお話します。
どこでもよく見る"街の顔"
ロータリーの向こうに見えるファストフードのお店、チェーンの居酒屋や消費者金融の店舗が入ったビル、ビジネスホテル、パチンコ店。
僕のイメージする日本の「駅前の風景」です。みなさんもこんな駅前の景色を目にしたことがあるのではないでしょうか。
現在日本の街の多くは、このような"似通った顔"をしています。
僕は上記のような街の景色が嫌いなわけではありません。ファストフードもビジネスホテルも利用しますし、駅前の風景が似通っていることは、いつでもどこでも同じような環境が整っている、安心感にもつながると思っています。
ただ一方で、日本の良さは地域ごとの多様性だと思っているので、「もう少し変化はつけられんもんかいな」と感じてしまうのも事実です。
新たな「駅前の景色」が生まれる
浅草は非常にインバウンド(観光)に特化した街です。多言語対応の看板や標識がいたるところで見つかりますし、英語でお客を呼び込む人力車の人夫さんがいたり、寿司店やラーメン店などの定番の日本食店が充実していたり、民間の訪日旅行者対応も素晴らしいものがあります。
よい観光資源を持つ街の場合、浅草のような街づくりができたら、ある程度は集客やリピートに成功できるでしょう。
でもそんな街づくりが全国の観光地で行われたら、それは新しい「駅前の景色」が生まれることにつながるのではないでしょうか? 僕はそんな不安を現在抱えています。
観光地の成功例は、浅草モデルだけじゃない
浅草が現在のような街になったのには、それだけの理由があるはずです。
国を問わず魅力を感じてもらえる観光資源(浅草寺や周辺の日本を感じさせるスポット)、東京という訪日客を多数集められる立地、徒歩で観光を完結できる規模感などがそうでしょうか。
だから観光地としての条件が違うのなら、都市としての顔も変えるべきです。
たとえば、浅草と同様に訪日旅行者に人気な関東地方の都市、鎌倉について考えてみましょう。
ある土地での正解が、別の都市では不正解になる
鎌倉は多言語での案内が少なかったり、訪日旅行者が喜ぶ寿司店やラーメン店が浅草ほどわかりやすく店舗展開していないなど、浅草の街に慣れたものからすると、訪日客への「不親切さ」に気づきます。
土地も道も狭く複雑なので、詳しく無い方なら道に迷ってしまう恐れもあります。
でもだからこそ探検するような観光を楽しめます。道に迷っていたら偶然素敵な雰囲気のお社を見つけられたり、バスのりばで困っていたら地元の方に助けてもらえることもあるでしょう。
鎌倉の不親切さは、予想のできない旅の偶然を演出することに一役買っていると、僕は取材で訪れる度に思います。
とはいえ、これは「不親切」の言い訳にはなりません。探検したら路地裏に何かが見つかるような環境、案内がなくても助けてくれるような地元の人の優しさ。それが条件です。
がんばった甲斐がなければ、満足度にはつながりません。
土地の中身を見てから、外に見せる顔を考えよう
インバウンドに適した街づくりには、まだこれといった正解はありません。そもそもないのかもしれません。
観光資源のタイプ、立地、大都市圏との距離、交通アクセス、街の規模、そしてその地域ならではの特色。
このような条件を組み合わせることで、その地域だけのオリジナルな「顔」が生まれるのではないでしょうか。
まずは土地の中身を見る。外から訪れる人にどんな顔を見せるのかは、そのあとで考えることなのでしょう。
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