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医師の働き方改革と丁稚奉公

医師になって四半世紀ほどになります。
私が研修医の頃はまだ病棟(カンファレンス室)で煙草が吸えていました。
ハラスメント行為も蔓延していました。
医学部を卒業したらほとんど全員が
2年間大学病院で研修医をしていた時代です。
朝の5時から採血を行い、
それが終われば診療やカンファレンスの準備、
18時に仕事が終わることなどほぼほぼなく、
午前様になることもしばしば、
給与は大学から5万円程度、
生活するためにはアルバイトへ行く必要がありました。
仕事だけではありません。
先輩やナースとの食事会もあります。
当時はポケットベルでの呼び出しでした。
睡眠時間は平均的に3,4時間程度で、
アルバイト先にいくと
ようやくある程度人間らしい睡眠時間が取れるような生活でした。
アルバイト先は隣の県だったり、
さらに隣の県だったり、
どうやって大学からアルバイト先まで運転してきたのかわからないほどの
睡眠不足で運転してたこともよくあります。
単調な信号もあまりないような国道では特にそうなります。
※奄美大島のアルバイトでは鹿児島で飛行機を乗り継ぎ往復で4回飛行機にのったりしていたので、いわゆる航空会社の上級会員になれたりしたものです。しかし、台風が近づいてくると帰れるか不安になったものです。
アルバイト先では論文を読んだり、勉強したり、
論文を書いたり、事務仕事をしたり、
当直の時間を労働時間に入れなくても
年間の労働時間は4000時間を超えていたでしょう。
研修とは労働ではないのでしょう。
医局制度が解体されていくのも時代の流れなのだと思います。
これは良し悪しで語るものではありません。
研修とはおそらく丁稚奉公なのだと思います。
昼夜を問わず働き、
様々なハラスメント行為の中を生き抜き、
今ではいないような(いてはいけない)
強烈な指導者のもとでプロフェッショナリズムを学ぶ。
良くも悪くも時代で
丁稚奉公ですから
今の時代では学べないものを学べたので
私は幸せでしたが、
一方で毎年悲惨な結末が起きていたのも事実です。

https://imidas.jp/josiki/?article_id=l-58-160-13-02-g320

アメリカでは学費は自分でローンを使うのが通常です。
アメリカでも医学部へ行くとなると3~4千万必要です。
未来が見いだせなくなり自殺する人が
自殺大国日本より多いのは悲しい話です。
研修医は人生のほとんどを仕事に捧げます。
研修は3か月おきに各診療科をローテションして研修します。
1か月で慣れて、1か月で学んで、1か月で深堀する。
それを4ターム×2年繰り返してます。
そしてアルバイト先でも大学病院で学べないことを実地で学ぶ。
それが我々の研修医時代でした。
私は研修医が終わるとそのまま大学院へ、
大学院でも臨床大学院だったので生活はほとんど変わらず。
変わったことは、
給与がなくなったことと、学費を払わないといけなくなったこと
多忙で保険の任意継続をできず国民健康保険に変わったことくらいでした。
このころには煙草も次第にうるさくなってきました。
大学院に進んだことで、
自分の専門科を深堀し始めることができるようになります。
沢山の論文を読み、
自分の隙間時間を研修に使い、
研修医と同じくらい働き、
そのあとデータを収集する。
そして上級医の指導を受けながら仮説をたて検証をしていく。
データが思うようにでるとは限らない。
ある意味研究もベンチャー企業を興すのと同じこと。
自分で信じる研究をするが結果が出るかはわからない。
思い返せば20年前から同じことをしてきたのかもしれない。
少し話がずれましたが、
大学院の特権は学会に比較的行きやすい事です。
当時は製薬会社や医療機械のメーカーの販促費も大きく
様々な経験が出来ました。
本当にアカデミックなことが楽しかったです。
海外の学会に行くと、
臨床もしっかりやっているドクターが何本も演題を英語で発表しています。
その当時のドクターが
今どこでどんな医師人生を送っているのだろうと思ったりします。
働き方改革などあればきっとそんなことはできなくなるでしょう。
人間が人間らしく生きる権利はどうなるのか?
法律の専門家ではないのでわかりません。
・学問の自由
・教育をうける権利
・勤労の権利
権利を奪っている気がするのは古い考えなのでしょうか?
所属病院で仕事をする
学びを得る
研究して発表する
生活のために働く
これは権利であり、
規制されることを望む向きには適応すればよいともいますが、
もう少し議論がいるところだと思います。
何が言いたいかというとことですが、
これまでは医局に属してアカデミアをするにはとても良い環境でした。
しかし、働き方改革はアカデミアを完全に破壊してしまいます。
そうでなくても研究費や倫理委員会の問題など
アカデミアが機能不全になる要素が満載です。
アカデミアを追求することの喜びも減り
医局に失望するドクターが倍加しています。
そして、ドクターの働き方の多様性を奪います。
そしてプロフェッショナルとかギルドではなく
医師という職業は一つの職種になっていくのでしょう。
アカデミアも奪われ、自由に稼ぐことも奪われた医師は、
これから自分の給与をリスクなく稼ぐことに腐心するようになるでしょう。
良いとか悪いとかではなくそのような社会になるということだと思います。
しかし、一方で医療の現場はまだまだ効率化ができます。
無駄な事務作業が多すぎるからです。
ICTでもっと医療の事務作業は軽減できます。
今ではAIで自分に適した論文も適切に要点を得ることができるように
なってきています。
限られた時間をいかに有意義に過ごすか、
生産性を上げるかが大きなカギになります。
それと同時に規制されない働き方が今後産まれてくると思います。
勤務医が個人クリニックを開業したり、
個人クリニックを利用して働く方法が可能だからです。
そしてもここにもICTがかかわってきます。
研究にもICTがかかわってくることになります。
これに気が付いているの人はまだ少数派ですが必ずそうなります。
医師は働き方が規制されれば、
限られた時間を生かすにはギグワーカーにならざるを得ません。
今後はクリニックのコンビニチェーン化が進みます。
では勤務医がどんどん自宅開業ができるかというと、
現実には困難がありますし開業規制が入ります。
おそらく形だけ開業をするような抜け道は閉ざされます。
厚労省も働き方改革が実施された後に何が起こるかはわかっています。
そしてそのための布陣もひいてあります。
私の予想では、クリニックに籍を置かせてもらって、
オンライン診療や往診や在宅医療を行うことになるでしょう。
それはアルバイトではなくギグワーカーのような形だと思います。
そして、
自らのクリニックを持たずとも
クリニックの看板を借りてギグワークが可能になります。
エンドユーザーからすれば
自由診療で有名な医師のセカンドオピニオンも受けられるし、
通常の保険診療をオンライン診療で受けることもできる。
そして、緊急避妊やAGA、OC、EDなどの自由診療も受けられる。
しかし、ここには価格競争があります。
KOLのような著名な医師は
講演会で稼ぎ、
例えば30分で2万円などと自分で費用を設定してオンライン診療で
全国の患者さんのセカンドオピニオンを受けることができる。
私が遅くとも5年後は確実にそのような社会になっていると思います。
そのころには、そのようなことができるPHRをもつプラットフォームは
いくつかに集約されていると思います。
私には働き方改革が誰のためのものなのかわかりません。
昔はよかったなどというつもりはありませんが、
良い時代をぎりぎり過ごした最後に医師だったと思っています。

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