刑裁サイ太

ビジネス法務系ではない弁護士。同人作家。趣味的判例検索人。

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最近の記事

「主文後回し」の実務慣行はいつからあるのか

 今日,裁判官弾劾裁判所で,岡口基一判事を罷免する判決が出たようです。  報道によると,判決言い渡し時に,主文の言い渡しが後回しにされたようです。  主文後回しについては,実務的には,刑事事件において死刑判決が下される際によく行われる慣行で,「死刑判決を先に言われると動揺して判決理由を聞くどころではなくなるから」という意味があるとされています(要出典)。  判決の言い渡しについては,法的には との規定があるのみであり,主文と理由の順番が厳格に定められているわけではあり

    • 金製弁護士バッジが作成されるようになった経緯について(powerd by 国立国会図書館デジタルコレクション)

       「国立国会図書館デジタルコレクション」がとても楽しいです。  本稿を読まれるような好事家には説明不要かも知れませんが,これは,国立国会図書館が保有しているデジタル化された昔の資料を利用者登録してログインすれば(一部はそれすら不要で!),全文検索して色々探せるという時間泥棒です。本当にこういう時間泥棒を次から次へと世に出すのを止めて欲しいんですが・・・。  そんなおもちゃで先日遊んでいたところ,初期の「自由と正義」も自由に正義できることが分かりました。さらに調べてみたとこ

      • 古参チマンについて

         最近,「ゆる言語学ラジオ」というYoutubeチャンネルをよく聴いています。言語に関する話を正確さよりもわかりやすさ重視であれこれと語るラジオで,作業や移動のお供になっています(結局ワシもコンテンツ奴隷)。  同ラジオにて,「ミーム提案委員会」という企画があったので,かつて流行らせようとした「古参チマン」という言葉を提案したところ採用されました。ありがとうございます(サムネが酷いw)。  Twitterで「2007年から使われている」というコメントがありましたが,その2

        • 米子強姦致死事件における「あの人は好かんわ。いやらしいことばかりする」の原供述に迫る

          はじめに 最高裁の判例に誤りというニュースがあったので,以前から気になっていたこのテーマを取り上げます。  「あの人はすかんわ。いやらしいことばかりする」  言わずと知れた米子強姦致死事件(最判昭和30年12月9日刑集9巻13号2699頁)で問題とされた供述です。  この判例は,伝聞法則の重要判例として,法学部生・ロースクール生であればこのパワーワードとともに記憶していると思われます。  しかしながら,この最高裁の判断を読んでも,どのような供述が問題とされたのかは明らか

        「主文後回し」の実務慣行はいつからあるのか

          持続化給付金を詐取した事件の量刑分布

           存在を忘れかけていた,ちょっと気になる判例シリーズが今復活しました。ほんとに今。  今回は,よく報じられているけれども意外と裁判例を見たことがない「持続化給付金を詐取した事件」を取り上げます。要するに,要件を満たさないのに持続化給付金の支給の申込みを行い,国から100万円を詐取したという事件です。  この種の「国を被害者とする詐欺」は,脱税にも通じる行為で,量刑が重いという傾向があります。実際のところはどうなのか,見ていきたいと思います。 ・神戸地判令和2年12月7日ウ

          持続化給付金を詐取した事件の量刑分布

          いわゆる人間ピラミッドの練習中にケガをしたことについて,学校側の責任が認められた事例(2)

           いつものように,意外と知られていないけど興味深い判例を紹介します。  今回も「人間ピラミッド」の練習中の事故で学校側の責任が認められた事例をご紹介します。前回ご紹介した事例は,認容額は110万円余りでしたが,今回は文字通り桁が違います。  福岡高判平成6年12月22日判例時報1531号48頁がそれです。今回のは裁判所ウェブサイトでは閲覧ができませんが,コチラの→pdfの論文に,原審判決(福岡地判平成5年5月11日判例時報1461号121頁)について言及があります。  

          いわゆる人間ピラミッドの練習中にケガをしたことについて,学校側の責任が認められた事例(2)

          いわゆる人間ピラミッドの練習中にケガをしたことについて,学校側の責任が認められた事例(1)

           いつものように,意外と知られていないけど興味深い判例を紹介します。  今回は,つい先日,東大阪市内の小学校で行われることについて議論が再燃した,「人間ピラミッド」について取り上げます。  組体操中の事故についての裁判例はあまたありますが,みんな大好き(?)「人間ピラミッド」中のものに限ると2件になります。せっかくなので,ひとつずつ取り上げたいと思います。  まず,「名古屋地裁平成21年12月25日判決」を取り上げます。こちらの判決は,こちらの→裁判所HPで公開されていま

          いわゆる人間ピラミッドの練習中にケガをしたことについて,学校側の責任が認められた事例(1)

          乳幼児をパチンコ駐車場に駐めた自動車内に放置して死亡させた保護責任者遺棄致死被告事件の判決

           たまたま見つけた,意外と知られていないけど興味深い判例を5分くらいで読めるボリュームで紹介するシリーズ第2弾です。シリーズ名は,まだない。あ,あと今回は5分じゃなくて10分くらいで読める内容です。  今回は,これからの時期にハイシーズンを迎える「親がパチンコに興じている間に子を駐車場に放置して死なせてしまった」(以下,「パチンコ車内放置死事案」といいます。)という事件の判決をご紹介します。こういう事件の判決って意外と読んだことがなくないですか?  ところで,このパチンコ

          乳幼児をパチンコ駐車場に駐めた自動車内に放置して死亡させた保護責任者遺棄致死被告事件の判決

          「死刑執行の命令は6ヶ月以内」と定めた刑訴法475条2項本文が訓示規定であるとされた裁判例

           たまたま見つけた,意外と知られていないけど興味深い判例を5分くらいで読めるボリュームで紹介するシリーズを始めます。シリーズ名は,まだない。  初回は,「死刑の執行は法律どおり半年以内にすべきだ」みたいな主張によく援用される刑訴法475条2項に関する判例です。まずは条文を引きます。 刑事訴訟法475条 1項 死刑の執行は、法務大臣の命令による。 2項 前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の

          「死刑執行の命令は6ヶ月以内」と定めた刑訴法475条2項本文が訓示規定であるとされた裁判例

          法律系同人誌をコミケで頒布したい人向けのまとめ

           法律系サークルが増えることを願って,コミケにサークル参加して法律系同人誌を頒布したい人向けのまとめ。 書いている人・一般参加歴10年 ・サークル参加歴10回(5年) ・法律系同人誌を発行するサークル「日本鬼法曹協会」主宰。 ・代表作に「大嘘判例八百選」がある。 サークル参加するメリット・自分の書いたものをみんなが読んでくれて楽しい。 ・他の法律系サークルと交流できて楽しい。 ・並ばずに入場できて楽しい。 コミケにサークル参加するまでの流れ①事前準備 ②参加申込書入手

          法律系同人誌をコミケで頒布したい人向けのまとめ

          ひまわりが「自由と正義」の象徴とされているのはどうしてなんでしたっけ?

           弁護士バッジには,「ひまわり」と「はかり」があしらってあります。  日弁連の公式HPによれば,弁護士バッジに配してある「ひまわり」は「自由と正義」を,「はかり」は「公正と平等」を象徴しているとされています。  しかし,なぜひまわりが「自由と正義」なのでしょうか。そもそも,太陽の方を向くことを強いられている(?)ひまわりが自由なんですかねえ?  wikipediaによれば,ひまわりが日本に伝来したのは17世紀ということです。その時代に来たものが日本でだけ「自由」だの「正義」

          ひまわりが「自由と正義」の象徴とされているのはどうしてなんでしたっけ?

          「異議」は棄却するものか,却下するものか

           いま,日曜夜9時からTBS系列で,『99.9-刑事専門弁護士-』というドラマをやっています。弁護士考証(?)がしっかりされていて,弁護士の目で見ても非常に見応えのあるドラマになっています。  さて,先日,第1話を拝見したところ,非常に興味深い一幕がありました。  松本潤さん演じる深山弁護士が,証人に対する反対尋問中,検察官から「重複する尋問である。」として異議を出されました。深山弁護士は「記憶を喚起するものであって相当である。」と意見を述べました。その後,裁判長が 異議

          「異議」は棄却するものか,却下するものか