ユーザーインタビューでもっとも大事なことは、ユーザーの声を聞いてはいけないということ
この記事は Opt Technologies Advent Calendar 2018 23日目のエントリーです。
どうも、グルメバーガー大好き @ux_burger です。オプトで広告運用ツールのプロダクトマネージャーをやっています。
前職ではUXリサーチを主業務としており、現在はその経験を生かし開発のためのユーザーインタビューを日々行っています。今回はそこで得たノウハウを紹介したいと思います。
要件整理の第一歩はユーザーインタビューから
私の部署では「オペレーショナル・エクセレンス(効率を高め競争優位に立つ)」という大方針の下、テクノロジーによってオペレーションを効率化することをミッションとしています。競争力だけでなく、昨今は「働き方改革」の文脈でも期待値が高まっています。
効率化の実現には、必ずしもツール開発が必要というわけではありません。開発を必要としないフロー改善の方が有効な場合もあり、両軸で考えていく必要があります。
どちらの場合でもまず、ユーザー(弊社の場合、広告運用コンサルや運用オペレーター)にインタビューをして、煩雑なフローを整理し課題やニーズを明らかにする必要があります。
このプロセスがもっとも大変です。なぜなら業務一つとっても、扱っている商材や向き合う顧客によってフローが微妙に異なり、またそれが無数に存在するためです。
しかし、もしここで要件を取り違えてしまうと「せっかく作ったツール(機能)が使われない」「取り決めたフローが守られない」ということが発生します。ですから、初期でのユーザーインタビューをいかに正確に行うかが重要となります。
では、正確なインタビューを行うにはどうしたら良いのでしょうか?
ユーザーの声を聞いてはいけない
逆説的に聞こえますが、「ユーザーの声」を聞いてはいけません。私はこれがインタビューにおいてもっとも大事なことだと考えています。
やってしまいがちなのが、ユーザーの声をそのまま要件として取り入れてしまうこと。しかしそれこそが要件の取り違えの原因になります。なぜなら、ユーザーは自分が暗黙的に欲しいものについては答えを持っていないからです。
では何のためにインタビューを行うかというと、現状のフローに対するユーザーの体験、すなわち事実のみを明らかにするために行います。
図にするとこのようになります。
図のように、現状の業務フローに対しユーザーがなにかを体験したことは事実です。しかし、ユーザーの声は体験からユーザーが導き出した解釈であり、情報としてはノイズが入り混じり誤っていることが多いのが現実です。
これにはいくつか理由があります。
・ユーザーはプロダクト開発については素人である(適切な解を持っていない)
・ユーザーは現状が当たり前と認識している(中からは客観視しにくい)
インタビュアーは、あくまで客観的な事実のみを見極める必要があるのです。
では、どう質問すれば事実を導き出すことができるのでしょうか?
インタビューでは過去のエピソードを聞こう
業務フローを知るためには、実際にその場で業務を見せてもらうのが一番です。しかし、インタビューに取れる時間が限られている場合には「最後に〇〇をしたときのことを教えてください」のように過去のエピソードを質問するのが効果的です。
注意点としては、手順を省略せず、事細かに話してもらうことです。話をするときに要約するのが普通ですが、事実を明らかにして課題を洗い出すことが目的ですので、要約せずに具体的に話してもらう必要があります。
適宜合いの手を入れながら、「次はどうしましたか?」「いまの部分をもう少し詳しく教えてください」など深掘る質問をしていきます。ユーザーは前提条件や共同作業者を省略する場合もあるので、その辺りも注意深く質問で明らかにしていくと良いでしょう。
やってはいけない質問集
「〇〇なのはなぜですか?」「どうしてそう思いますか?」
なぜ、どうして(Why)の質問はユーザーに「解釈」を求めます。もっともらしい回答が返ってきたとしても、それはユーザーの主観が入った情報のためノイズが混じっています。あくまで事実のみを引き出すようにしましょう。
「こういう機能が欲しいと思いませんか?」「課題はこれであっていますか?」
ユーザーは無意識に同調します。「はい」と答えますが、正しいとは限りません。こうした誘導的な質問はインタビュアーの都合のよい解釈につながり、要件の取り違えに繋がるため注意しましょう。
「こういう機能を作ろうと思うのですが、どう思いますか?」
上の質問と同じで、ユーザーはその時は「いいと思います」と答えるかもしれませんが、実際に使ってくれるかというと・・・です。あまり意味のない質問と言えるでしょう。
「どういうものが欲しいですか?」「課題は何だと思いますか?」
ユーザーが自分の欲しいものをわかっていることは稀です。ユーザーに責任を丸投げせず、あなたが事実から課題やニーズを見つけるようにしましょう。
おわりに インタビューは繰りかえそう
ユーザーインタビューにおけるポイントと、アンチパターンを紹介しました。インタビューは一回すれば終わりではなく、インタビューで浮かんだ仮説を検証するために何度も行うべきです。
繰りかえし確度が上がってきたら次はモックアップ(試作品)を作って検証していくなどすると、手戻りが少ないツール開発やフロー改善を実現できるでしょう。
とはいえ限られた時間。今回紹介したようなポイントを実践し、一回一回のインタビュー精度を高めていくことが有効です。
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