見出し画像

「何者にもなれない焦り」と「何者かを目指している自分への酔い」

20代前半の頃脚本家を目指していました。
特に好きだったのはミニシアター系の派手ではないですが、小ぶりで人の心に残る映画をよく見ていました。何かしら映画業界に関わりたいと思うようになり、当時から文章を読むことや書くことがあったので脚本の学校に通っていました。

脚本の授業の内容は基本となるハコ書や物語の構成を座学で学び、その後は自分で書いたものをグループで発表し批評し合います。

コンクールにも応募していたものの、さすがに数千もの応募者の中から一人に選ばれることはなく漫然と時間が過ぎていきました。

その経緯で同じ書く仕事だからやってみないかと声をかけてもらってフリーランスでライターの仕事をやることになります。

当時は居酒屋のバイトと原稿料でどうにか賄っていました。
ライターとして活動しつつも脚本家への道も探りつつ、バイトもしつつで自分の道を決めきれずにいたのかもしれません。

脚本の学校に通いつつ、脚本家を目指す人間同士で勉強会を開きお互いの目指す像を語る。
今、思っても若かったと思います。

「何者にもなれない焦り」と「脚本家を目指している自分への酔い」で気持ちいいんだか悪いんだか分からない状態を毎日を過ごしていた記憶があります。

自分がバイトしていたのは渋谷の居酒屋で大学生のサークルや合コンの飲み会としてよく使われていました。同世代の人間の「普通」の生活や楽しそうに過ごしている姿が眩しく見えました。

本当は「そっち側」に行きたかったんですよね。

自分は「何者か」を目指しているから、大丈夫、と言い聞かせていたもののそれは単なる自己正当化でした。

認知不協和のような話ですが、自分の感情や経験に照らし合わせるとよく理解出来ます。

結果として、脚本家には自分はなれませんでした。紆余曲折あり、現在はベンチャー企業のマーケターとして働いています。毎日数字やデータと向き合ったり、プロダクトを作ったりとどうにか「普通」に働けています。

つい最近、唸るような暑さの中、当時バイトしていた渋谷の居酒屋に行ってみたところ既に閉店していました。

当時の事や景色を思い出そうとしてみましたが、多くの事を忘れてしまっていました。

最後まで読んでいただきありがとうございました! いただいたサポートは今後のnoteに活かすために使いたいと思います。 他のクリエイターさんへの支援や、書籍の購入に使い優しい世界を広めて行きたいです。