UXデザイナー特有の、自分を信じることへの恐怖【自分という敵】

※このエントリーは限りなくポエムに近い内容です。また、Mediumに載せていた内容をnoteに移してきたエントリーです。

※具体的に役に立つ内容は多分ありません。たぶん…

※分かりやすい画像などもありません。文章のみです。

※やや長いです。(本当に語りたいことは後半の章で、それ以前は前置きです。)

※それでも良ければどうぞ。

UXデザイナーはハッカーである

私たちUXデザイナーは、持ち前のデザイン思考や洞察スキルを用いて新しいプロダクトや事業・仕組みを見出すのが大好きな、いわゆるハッカー的な人種です。

しかし一方で、客観的にハッカーとは異なる面がたった一つだけ存在します。

それは、モノづくりや事業作りにおいて自分を信頼できないことです。

この場合の「自分を信じる」とは、自分の感じている課題をもとに、いきなりモノを作り始めることを指します。

UXデザイナーは、自分の体験からプロダクトや事業を思いついたとしても、いきなりそれを作り始めることにとても抵抗を感じます。

これは、自身のモノづくりにおいて、自分こそが最大の敵であると考えているからです。

というのも、UXデザイナーは、バイアスが自らの敵であることを理解しています。そして、知識がある故に自分がバイアスの塊であるという自覚があります。

この場合のバイアスとは即ち、「UXデザインやモノづくり・事業作りを知っている」ことで生まれる視野狭窄や思い込み・非開発者層との意識の相違の可能性などを指します。

よって自分は敵であり、もちろん敵である自分を信用することなど出来ません。

つまりUXデザイナーという人種は、モノづくりが大好きにも関わらず、自分以外の人々や社会に仮説を問い、より良い形を発見してからでなければ何も作りたくないのです。

……いえ、これは少し語弊があります。(市場規模・見込み顧客の規模を気にするとか、人々に迎合するとかいう話ではないのです。)

より正確には、仮説を立てた段階で、UXデザイナーは既にモノづくりを始めていると言った方がいいでしょう。何故なら、仮説やインタビュー用のスクリプトはUXデザイナーにとって最初のプロトタイプだからです。

形は無くても、彼ら(私たち)は既にプロトタイプを世に生み出しているのです。

それを踏まえるとやはり、UXデザイナーは正しくハッカーだと言えます。(とにかく早くプロトタイプを作って世に出す・試すという意味で。)

ただ一点、「UXデザインやモノづくり・事業作りを知っている自分」というバイアスへの自覚、ただこの一点によって、自らのアイデアを信用してひた走ることが出来ません。

自身のバイアスを疑い最小のリソースで作られた無形のプロトタイプを試行することは、リスクヘッジの意味や早い段階でのピボットを生み出す価値あるアプローチです。

しかし間違いなく、ある1つのプロダクトや作品を形にするまでの時間は、純粋なハッカー気質のエンジニアやデザイナー・事業家よりも長くなります。

(もちろん、早くプロダクトを形にすることが成功の道というわけではありません。起業家の後悔は多くの場合、仮説を検証せずにプロダクトを作り込んだことなのですから。)

UXデザイナーのモノづくりから失われる2つの可能性

UXデザイナーのモノづくりは成功の再現性や期待値という意味では高いポテンシャルを持ちますが、一方で、プロダクトを形にするまでに紆余曲折を経ることで次の2つの可能性が失われます。

1つは、思いついた次の日に作ったプロダクトがわずか数日〜数ヶ月で偶然大ヒットする、という奇跡の可能性です。(この奇跡を信じないのはUXデザイナーだけではないでしょう。しかし、先人・偉人のこの類の逸話には抗いがたい夢と魅力があります。)

2つ目は、将来的なイノベーション(大規模にせよ小規模にせよ)を起こすための要素技術が生み出される可能性です。目に見える形で作ったものは誰の手によってどのように活用されていくか未知数ですが、形にしないことには誰かの手によって活用されることはありません。

モノを誰かの目に見える形で作る・生み出すことは、それだけで価値があるのです。

少し遠い時代の話をすれば、ウォズニアックが趣味で作ったモノ(彼はコンピュータの心臓である「オペレーション・システム」のプロトタイプを趣味で作りました。)は、スティーブ・ジョブズの努力と突破力によって製品化・商品化され普及していきました。

もっと身近な話をすれば、自分が作ったライブラリをGithubに上げておいたら、知らない間・放置していた間にいつの間にか全世界のContributorが保守・改善してくれて、進化した状態で多くのアプリケーションに使用され重宝されていた、ということもあるでしょう。(日本のエンジニアさんでもたまに聞きます。とても良い時代ですね。)

上記2つの可能性を、UXデザイナーのモノづくりは備えていません。

1つ目は、UXデザイナーの作るものは必ずしも有形ではないことによって失われ、2つ目は技術等への自分の興味関心・知的好奇心ではなくあくまで人々や社会のニーズやペインを満たすソリューションの形でのアウトプットを目指すことによって、失われています。

これはUXデザイナー自身や一つの事業体としては特に損失ではないかもしれませんが、社会や人類にとっての機会損失となる可能性があります。

呪縛から抜け出す道

モノづくりが大好きにも関わらず自分と自分のアイデアを信用できないこと、そしてそれにより上記2つの可能性を失うことは、UXデザイナーやデザイン思考習熟者特有の、もはや呪縛と言えるでしょう。

それを、特に問題ではないとか、成功の再現性・期待値の高さの方が重要だと言って、無視することも出来ます。(それはとても合理的だと思います。)

しかし自分は、この呪縛からUXデザイナーが開放される道を探りたいと考えています。もちろん、デザイン思考やUXデザインのアプローチ・スキルを捨てることなく。

それは、UXデザイナー(私自身含め)を自由なモノづくりへと開放しより大きな幸福を求める行為であり、またUXデザインによってもたらされる社会や人類への利益をより大きくするためでもあります。

この道は端的に言えば、発明のためのUXデザインの道です。

道の先にある(はずの)ゴールは、UXデザイナーやデザイン思考習熟者がデザイン思考を遂行しながらも、自分の関心の赴くままモノづくりを行えるようになることです。

そこに至るためのアプローチは、「自らを信じられるようになる」「機会発見とモノづくりの関係を、演繹的な関係から相互関係に変える」という方針で行おうと考えています。

そして現在、次の2つのスキルをUXデザインと組み合わせることに、この道の光を見出しています。

・メタ認知(の強化)
・水平思考(≒セレンディピティの肯定)

発明のためのUXデザイン【メタ認知編】

1のメタ認知は、簡単に言うと、自分の認知を客観的に観測すること。これにより、自分のバイアスを頭の中から取り除くことが出来ます。

魔術的に言えば、自分のエーテル体を三次元物質層からエーテル層ないしアストラル界層へ飛ばし、自分を観測することです。(分かりづらかったらすみません。無視して下さい。こういう言い方が好きなのです。)

これはUXデザイナーに必要不可欠な能力の一つです。何故なら、ユーザーインタビューやエスノグラフィといったHuman Centeredなデザインアプローチには、必ずリサーチ結果を解釈するフェーズが存在するからです。

この時メタ認知の能力が不足していると、自らの経験や思い込みによって無意識に誤った問題の捉え方・定義の仕方をしてしまうことになります。つまり、自分の見たいもの・知っているものだけがよく見えて、その他の可能性に気づかない状態ですね。

これを取り除く力を強化することは、ユーザーやインタビュイーを観測した際の内容への解釈に存在するバイアスに気づく以上の恩恵があります。

それは、自分のアイデアや課題感に存在するバイアスにも目ざとく気づくことが出来るようになることです。

つまりこれは、自分に自信を持てるまで自分を疑い続ける能力です。

これにより「自らを信じられるようになる」を達成します。

発明のためのUXデザイン【水平思考編】

2の水平思考とは、ロジカルシンキングやデザインシンキングなどの縦方向にブレイクダウンしていく思考法とは異なり、水平方向に思考を転々とさせる創造的思考です。

モノづくりに使われている具体的な事例は、任天堂の元開発部長である故・横井軍平氏の開発哲学「枯れた技術の水平思考」などが有名でしょうか。

モノづくり以外だと、一昔前のNASAの試験問題なども有名です。(酸素が少ない状態で月に取り残された時、持っているアイテム=銃・照明弾・水・食料・ソーラー充電池等でどうやって生還するか、などの問題。)

水平思考は、筋道だった思考を行わずに答えを導き出します。突飛で役に立たない・実現できないアイデアも出てきますが、コロンブスの卵的な、「やられた感」のあるアイデアを導き出すことが出来ます。

具体的なアプローチは色々あります。ただ、水平思考を訓練していない人・ロジカルな思考を信頼している人から見ると、理解できなかったり、特別なことをやっているようには見えなかったりします。

例えば、物事を複数の見方で見ます。1つの物事につきだいたい30個ほどの見方をします。

他にも、前提を全て思い込みであると仮定して思考したり、関係を逆転させてみたり、全く違うもの同士を組み合わせてみたり、先の先を読んで考えたり、遊んだり、偶然を待ったりします。

先述のメタ認知と一部共通する部分もありますが、大きくは2つの段階に分けられます。

セレンディピティのための素材を自分の中にストックすること
セレンディピティを期待して無関係なことに色々手を出してみること
つまりこれは、ユーザーインタビューやエスノグラフィーに代わって機会発見を目指し、またそのセレンディピティのためにまずは作ってみること・試してみること・遊んでみることを肯定できるようになる思考です。

これにより「機会発見とモノづくりの関係を、演繹的な関係から相互関係に変える」を達成します。

最後に

長いエントリーを読んでいただきありがとうございました。

以上はUXデザイナーとしての自分がよく思い悩む「機会損失感」をどうにかしたいという思いで勉強し始めた内容のさわりをまとめたものです。

UXデザインの仕事を好きすぎるが故に陥っていた呪縛を打ち破りたいなというのが始まりです。

実は、現在このメタ認知と水平思考によるアプローチはステルスで実験中です。UXデザインをフル活用したモノづくりに絶賛挑戦中だよ、という話ですね。

結果はその内、忘れた頃にまとめてご報告すると思いますが、もし似たようなことを感じている方がいらっしゃったら、応援とかお声がけとか、そういう生暖かいナニカを頂けると嬉しいです。

それでは。

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UXマン

UXマンです。UXデザインチーム デザラボ代表 兼 UXデザイナー。株式会社Bocchi取締役DEO。たぶん、日本でいちばんUXデザインが好きなデザイナーです。 https://medium.com/design-lab

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