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「ゲーム理論は理屈にすぎない」という勘違い

ゲーム理論というと、古い印象があるのではないでしょうか。昔少し習ったような気がしますね。有名なのは「囚人のジレンマ」。内容は割愛しますが、要するに「情報が遮断された状況で行き着く結論の理屈」です。利得行列という期待値の計算をして、結論が数学的に導かれるというものです。行き着く先をナッシュ均衡と言ったりします。利得行列によってナッシュ均衡が決まらないと、チキンゲームになる場合があります。これはプレーヤー双方が破滅に向かって突き進むという恐ろしい展開です。チキンゲームとは2台の車がお互いに突っ込む、または崖に向かって並走するという状況。ジェームス・ディーン主演の「理由なき反抗」という映画で有名になりました。東西冷戦時代の核開発競争での、キューバ危機などはチキンゲームになりかけた事例です。怖い怖い。でも、最近ゲーム理論ってあまり聞きませんね。やはり古い理屈だからでしょうか。

企業経営の勉強をしていても、あまりゲーム理論は学びません。元々経済学の分野なので、経営学からは遠いのです。しかし経営学そのものの源流は、経済学や社会学なので、もちろん関係はあります。ポーターの競争戦略なども関連していると思います。やや数学的なので、実際のビジネスに応用しづらいのかもしれません。でもとても大切な考え方なのです。私が前職(メーカー)で商品のマーケティングを担当していたころ、突然競合の1社が値下げをしかけてきました。ゲーム理論の理屈だと全社値下げでナッシュ均衡になります。従って痛み分けで、誰も得をしません。実際に業界全社が値下げをしました。これは不思議な現象です。なぜなら「囚人のジレンマ」のように情報が完全に遮断されているわけではないからです。そういった場合、通常シグナルを出します。シグナリング。談合は違法ですので、お互いにオープンにメッセージ・サインを出して、愚かな結末にならないように努力する。しかしこの時、競合企業はシグナリングなしにいきなり値下げしてきました。びっくりです。

よく例に出るのが、家電量販店が「少しでも他店の方が高いものがあれば、それよりも値引きします」というアピール。これは、お客さんに対するというよりも他店に対するメッセージだと言います。「値引き合戦してもムダだよ」という強者のシグナリングです。こういったゲーム理論の知識は大いに役立ちます。逆に知らないとお互いに無益な競争になってしまう。ゲーム理論は決して単なる理屈ではありません。ビジネスパーソンにとって必須のリテラシーです。利得行列、ナッシュ均衡、チキンゲーム、シグナリング、このあたりはぜひ知っておきたい。実ビジネスでも必ず役に立ちます。

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