『カメラを止めるな!』は、鶏の唐揚げ

あ、こいつも感想書いてるよ。
そうお思いのあなた。書きます。
結局「ネタバレされる前に早く観に行け」っていう結論で締めるだろ。
そうお思いのあなた。締めます。

なんかSNSで流行ってんな〜と思いながら観る機会なかったんですけど
帰省ついでに観てきました。『湯を沸かすほどの熱い愛』。はい嘘。

平成最後の夏、もう流行の爆心地が完全にSNSですよね。というか今のトレンドのほとんどはSNSがないと流行らなかったでしょうね。SNSが無くても全国的に流行るのなんかおもしろフラッシュ倉庫くらいじゃない?『カメラを止めるな!』も無事SNSで広まりましたし。広がり方もわりと純粋な口コミが多くて、「ハッシュタグ #カメ止め でみんなにツイート♪」みたいなのが無かったので最高。SNSは広告したいやつ、広告つくるやつ、広告見たくないやつの三すくみでもう手のつけられない地獄です。

あまりにみんなが『ネタバレ前に観ろ』『前情報無しで観ろ』というので本当にその通りにしました。前情報はタイトルとポスタービジュアルとゾンビくらい。ほんとに。なんならポスターのヒゲの人が監督兼主役かと思ってた。自主制作にありがちなパターン。監督兼主役。いや、間違ってないけど。間違ってるけど。ヒゲが撮った映画は信用できるぞ!って期待して映画館の座席に着きました。(ちなみに監督の上田慎一郎はヒゲじゃなかった)

ブ──────!!うわびっくりした!今回初めて地域密着型のミニシアター(単館)に行ったって方も少なくないのではないでしょうか。私は初めてでないけども、超ご無沙汰。シネコンでやるようなカメラのキメラみたいな踊りもないし、auマンデイがどうこうも無い。
ブ──────!!って言うんですよ。ブ──────!!って鳴ったらもう映画始まってる。ちょちょちょっと一時停止してまだ飲み物ついでるから!!もう一個座椅子出すからそっち座って!もう始まってる。

なんかゾンビが出てます。
随所に散りばめられた違和感ね。ちゃんと回収しておくれ。

映画が始まってからもしばらくハラハラしていた。SNSで流行ってるってこと自体がもう陳腐化していて、「SNSでしか流行ってない」ことが往々にしてある。よくツイッターで流れてくる「白飯が一瞬で消える系」のおかずレシピツイート、よく実際に作ってみるけども、あれ本当にご飯が一瞬で消えた事例が無い。この映画は大丈夫かな。全国の映画好き、映画を愛する者たち、映画を憎む者たち、全ての映画関係者に伝わってるけど大丈夫かな。必要以上の誇張で拡散を狙うグルメツイッタラーを法で裁け。

映画では場面が転回しました。もうタイトルからわかるのでネタバレではないと思うのですが、いわゆる「劇中劇」型の作品です。このタイプは「劇」と「劇中劇」の関係性、切り替え方がキモですね。なに当たり前のこと言ってんだ。

しかし……もしかして一番最初に『カメラを止めるな!』が面白い!って言った人はこういう単館でやるような映画をよく観てる人で、同じ界隈の、狭いコミュニティ内の人々に向けて勧めただけではないのか?それが思いの外に飛び火して、シネコンでやるような大衆向けの映画しか観ない我々ま……で……





ごちゃごちゃ心配してたのが嘘みたい。これはおもしれェ。全部杞憂。
思わぬ強敵に遭遇した好戦的キャラみたいな感想でました。

観る前は正直心配でした。「大丈夫?」って。「大丈夫?ハードル上げすぎてない?世間」って。「シン・ゴジラがおもしろかった!」って言うのと違うじゃないですか。なんというか、スタート地点が違うというか。
虫料理の中ではイナゴの佃煮が飛び抜けて美味い!っつったって料理全体で見れば鶏の唐揚げにはラブゲームで負けるじゃないですか。『カメラを止めるな!』はどっちだ!?って。

まずキャストね。変なジャニーズとか変な広瀬すずとか出ないもんね。
え、このメンツの中にウェントワース・ミラー!?絶対重要キャラじゃん!みたいなのがない。え、声が若本規夫!?絶対黒幕じゃん!みたいなのがない。キャストがみんな無名だからこそ、みんな平等にスポットを浴び、同じスタートラインから同じゴールを目指すからこそ生まれ出でる一体感。ありがとう。やれ実写化だのやれ山崎賢人だのと……。映画は監督の作品であるべきってヒゲも言ってたしな。

あと単館上映って点がよかった。今でこそ全国凱旋上映でシネコンでもやってるけど、これはぜひ地域にある小さい映画館で観てみませんか。なんか観てるとき、観終わったときの「面白いもん観た」って空気感がよかったです。小さくて席の奪い合いになるけど、その分観客同士が密になってキャストと同じく一体感になれた感じがしました。少なくとも別府ブルーバード劇場はそんな感じでした。ちょっと拍手起きたし。ありがとう。

好き嫌いの話になって恐縮なのですが、私が邦画より洋画が好きな理由のひとつに「『映画』をやるから」というのがあります。マイナー邦画にありがちな「ちょっと演劇舞台のエッセンスが入った映画」が苦手なんです。説明は控えますけど、なんなんでしょうねあの空気感。うわ、また本筋にあまり関係無い演劇俳優志望の登場人物でてきたよ。スクリーンで舞台演劇をやるな、舞台でやれよ、舞台で観るから。映画でやるなら『映画』をやれ、と思うんです。

その点『カメラを止めるな!』はどこまでも『映画』で気持ちがいい。
もう純度100%の映画!厳密に言うとルーツは演劇なんですけど、それを臭わせずしっかりと映画に落とし込んでいる。ちょっと流行ったからって汚い大人たちの手によってアニメ映画化されたりコミカライズされたりノベライズされたり薄めて薄めて日曜劇場にされてしまう心配が微塵もない。映画という媒体だからできる作品であり、映画の形をしたエンターテイメントとしては100点満点の正統派だと思います。

こういう場で面白いとか面白くないとか点数をつけるとかはしたくないので、あ、でも100点満点とか言っちゃった、これ以上の感想は控えますが、これだけは保証できます。

『カメラを止めるな!』はきちんと『映画』です。鶏の唐揚げです。以上。


あ、忘れてた。

ネタバレされる前に早く観に行け。


(おしまい)


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犬のおやつ代

ありがとう、寿命が3年延びました。
18

犬岡 う蔵

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