恋人ができた話

今までの記事とまったく毛色の違うごくごく私的な話なのですが、せっかくだからどこかに書き留めておきたいなあと思って、この記事を書くことにしました。
内容は端的に言って、タイトルの通りです。

最近、恋人ができました。
実に8年ぶり…? お一人様を満喫しまくっていた私としては、大変意外な事態なのですが、同時に、そろそろそういう時だったのかなあという気もします。

記録と親しい人たちへのお知らせを兼ねて、恋人ができるに至った経緯などつらつら書いてみたいと思います。興味がある方だけ、どうぞご覧ください。

1.どんな人?
一歳歳下の男性です。数学や物理学が大好きで、光る泥団子を作るのが趣味という世間一般からするとちょっと変わった人。同じく変わり者で趣味に全力疾走しているオタクである私には、破れ鍋に綴じ蓋、いいマッチングなんじゃないでしょうか。

価値観が近いのか、ありえないくらい気が合います。「一番好きな〇〇」をあげるとたいてい被る。ジブリだったら紅の豚だし、ゲームだったらクロノ・トリガーだし、趣味なら旅行と写真だし。私の好きなものは大抵彼も好きだし、彼の好きなものについて、私がまったく興味を持たないということも、今のところありません。(お互いをより深く知るうちに何か全然意見が合わないという物事が出てくるかもしれませんが、これだけ共通点ばかりの中で、そういうものが発見できたら、それはそれで面白いだろうと思っています。)

2. どうやって出会ったか
ズバリ、Tinderでした。
出会い系アプリを警戒する向きもありますし、Tinderはその中でも遊びを求める人が多いような印象がありますが、私自身は、身近にTinder経由で出会って長年のパートナーを得たという人もいて、合コンや友人の紹介とかと同じような出会いの手段のひとつ、という認識でした。

そんなわけで9月の末ごろ、特に理由もなく、そろそろ誰か良い人と会えないかなーと考えた私は、ふと思い立ってTinderを起動してみたのでした。Tinderはロンドンにいるときに使っていたし、その時には特に誰と出会えたわけでもなかったので、別に誰か素敵な人に本当に出会えるとか、そんなことは大して期待せずに。

でも、その結果、そうでもしなければ出会えなかっただろう彼と知り合うことになりました。しかも、始めたその日に。

(横道にそれるのですが、Tinderなどの出会い系アプリは、言ってみれば現代版のお見合いババアのようなものなんじゃないでしょうか。違いは、趣味の合う二人を引き合わせるのが人間かAIなのかということと、向こうから積極的に仲を取り持とうと干渉してくるか、こちらから積極的に仲を取り持ってもらいにいくか、という2点だけなのでは?)

閑話休題。そんなわけで、私が日本でTinderを始めた日、彼からスーパーライクが来てマッチしました。(スーパーライク=1日に1回だけ送れる、自分が相手の画面に絶対表示されるようになる「興味あり」のサイン。課金すると何回でも送れる。/マッチ=お互いに興味ありのサインを出したことがわかって、Tinder上で会話ができるようになること。)お互い趣味人なので、写真やら映画やら、趣味の話からメッセージのやりとりが始まりました。スーパーライクを送ってくるような人にまともな人間はいないと思っていたのですが、意外や、礼儀正しく丁寧な人で、話しているととても楽しい。いいなと思って会うことにしました。彼とメッセージのやりとりを始めて3日目のことです。

3. 初めてのデートから付き合うまで
初めてのデートはランチ。のはずが、私は映画の時間を間違えて約束を1時間すっぽかすという大失態をしてしまいました…。ものすごく焦って、必死に待ち合わせ場所に走りました。成人してからあんなに走ったのは初めてかもしれない。もちろん、私が待ち合わせ場所に着く頃には、彼はもうすでに移動してしまっていたのですが、それが分かっていても走るのを止められなかった。なんでそんなに彼に会いたかったのか、今でも理由はよく分かりません。でもとにかく、この日の私は必死でした。彼に会うことがとても大事で、この機会を逃してはいけないと感じていた、というか。

劇場を出て走りながら、もう会えないんじゃないかと泣きそうになりながらTinderのメッセージ画面を見ると、彼からは「何かあった?心配しています。」「あと30分待ちます。」なんてメッセージが届いていました。連絡もなく待たされているのに、紳士的過ぎる。とにかく理由を説明して、ごめんなさいと平謝りのメッセージを送りました。すると、「だったら午後に会おうよ」と彼から返信が。それで急遽予定を変更して、カフェでお茶をすることになりました。

待ち合わせ場所に現れた彼は、Tinderで見た写真のとおり。ひと目見た瞬間、「あ、この人、いい人だ」と思いました。会えてよかった。

カフェには2時間くらいいたでしょうか。ずーっと喋ってました。すごい楽しかった。趣味の話をひとしきりした後は、「Tinderに何を求めてる? 今のところ成果はどう?」なんて話になり、彼が誠実にパートナーを(というよりは、この時点ではパートナーになれるかもしれない人との良い出会いを)求めていることが分かりました。仕事や、どうして日本にいるのか(彼はアメリカ人なのです。)なんてことも聞かせてもらえて、私も、彼に仕事の話や普段の生活のことなど、聞かれるままに正直に話しました。だってそれが、お互いが信用に足る人物か知るのに一番いい方法だと思うから。(後で分かったのですが、彼も同じように考えていて、そして私がそのように振る舞うことに好感を抱いていたようです。私が彼の率直さをいいなと思っていたのと同じように。)

そんな感じで楽しくおしゃべりして、そろそろ良い時間だね、となったあたりで、彼の方から「Tinder以外の連絡方法を交換する気はある?」と聞いてくれました。嬉しかった!

2回目のデートは翌週の週末にすんなりと決まり、その後、その日までの間に、「どんな関係が理想?」「今までの恋愛から学んだことは?」「理想の関係のために大切なことはなんだと思う?」なんて結構深い話をWhatsapp上で交わしました。知り合って間もない相手にするには深く意外な質問に、そんなこと聞く?、と驚くと同時に、真摯な姿勢が嬉しくて、夜遅くまで話し込んだりしていました。うまい面接官にあたると、面接で自分の知らなかった面を知れたりするじゃないですか。あんな感じ。自分再発見。

2回目のデートは、彼の提案で美術館で待ち合わせることになりました。今度は遅れませんでした。むしろ早く着きすぎて待ってたくらい。時間通りに彼も現れて、展示を一緒に見てまわって、冗談を言いあったりして。ランチを食べて、公園をぶらぶらして、芝生に座り込んで話し込んで。終始リラックスムートでした。半日くらい一緒にいたのですが、気を張らずに一緒にいられる人だし、何より楽しい。途中、お店を探して道に迷った時に、道に迷っていてさえ楽しくて、これはどうしたことなんだろう? と不思議に思うくらいでした。誰かと一緒にいてあんなに笑ったのは何年振りだろう。本当に楽しかった。彼もそうだったんでしょう。すぐに次の約束をしました。

そして、4回目、5回目と約束の回数は増えていきます。

こうやって書くと順調に思えるんですが、そうでもないんですよね。後から彼に聞いたところ、この件で悩んでいたのは私だけだったみたいなんですが、ちゃんと付き合うに至るまでには、結構苦しんだりもしました。

立ちはだかったのは、アメリカと日本の恋愛習慣の違い。(言葉は、私が英語を、彼が日本語を話せるので、全然問題にはならなかったのですが、習慣は…。)アメリカには告白なんてイベントはなく、どうやら、人々は複数の相手とデートを重ねていくうちに相手を絞り、相手を絞ってある程度経ったら正式に交際関係になる、みたいな感じの経過を辿るようなのです。正直言って、めちゃくちゃ混乱しました。何度も二人で会ってるのに、それがデートなのか分からない。デートだったとしても、on a date(まだ複数人と同時にあっている期間)のデートなのか、dating(一人と会うことに決めた後の交際に入る前の期間)のデートなのかも分からない。

出会ってからまだ間も無く、お互いをまだよく知らないことから、Relationship(期間の定めなく一緒にいる正式な交際関係)じゃないことは分かっていたのですが、それにしたって、もう自分が彼のなんなのか、彼が自分のなんなのか、分からず大混乱でした。付き合ってるわけではないけど毎週のように会ってる、でも相手は私だけと会っているとは限らない、という状態。自分が彼に惹かれているのかすらあやふやに感じて、正直、どうしていいのかわからず、彼のことを考えてぼろぼろ泣いたりもしていました。しんどかった。

耐えきれず、ある晩電話をして、「今どういう関係だと思ってるの?」と聞きました。回答は、「on a dateではなく、datingだと思ってるよ。でも、あなたに自分とだけ会うことを強要したくなかったから、言いたくなかった。」でした。
この時点で、日本の感覚で言えば、お互いの好意を確認して、おおよそ付き合い始めたくらいなんじゃないでしょうか? 日本人は最初から告白してがっちり占有許可みたいなのを取るので、文化の違いに、はあー、そうですか。と天を仰ぎました。えらいことを始めてしまったぞ、と。

その後もデートを重ね、お互いをより深く知り、手を繋いだり、お互いにI like you.(好きだよ)とかI like you a lot.(大好きだよ)というようなことも言い合うし、キスもする間柄になったのですが、その辺りが2回目の壁でした。私は彼のなんなの?問題、再びです。

この時は datingとrelationshipの違いについての会話が、関係をはっきりさせる糸口になりました。分からないことは正面切って聞いてみるのが大事ですね。
彼曰く、「datingは一回一回次のデートの約束をしないと会えないけど、relationshipはお互いにまた会うのが当然になってるから会う約束をしなくても会える関係」とのこと。そして、「あなたとは約束をしなくても会えると思ってる。」と続けるではありませんか。
「それって、私たちはrelationshipってこと?」
「そう思う。あなたが同意してくれるなら。」
「もちろん!やった!!Relationshipだ!!!」

と、いうわけで、この会話をした日をもって、晴れて彼と正式に恋人になったのでした。(この会話の後、「それで、大事な質問なんだけど、付き合いはじめの記念日はいつだと思う?」という言葉が彼の口から出てきたのには笑いました。アメリカの交際習慣、ほんとどうかと思う。)

4. 彼との交際
最初こそ戸惑いましたが、一度恋人同士になってしまえば、あとはどんな出会い方でも、どんな人間同士でも、同じなんじゃないでしょうか。彼とは、時々「え!」という発見をしたり、「ああ、やっぱり好きだなあ」と思う瞬間を見つけたりして、お互いのことを少しずつ知りながら、いい関係を築いています。

一緒に映画を見に行ってああでもないこうでもないと話したり、好きな音楽を送りあってメッセージアプリの画面を埋めたり、彼の手料理の美味しさに感動したり(彼は料理上手なのです!最高!!)、時には彼のアパートにいるのに私は趣味の原稿をしていたり…。(その間、彼はゲームをしていました。お互い趣味人でよかった。)

と、まあ、そんなわけで。恋人ができまして、ただいま大変幸せです。
彼との関係がどこまで続くのかは分かりません。でも、今の所は、私も彼も、この関係がいつまでも続けばいいなあと願っているみたいです。

いただいたサポートで旅先のおいしいものを食べます! 今後の旅の予定 : しばらく日本にいます。