he is for She is (7)

前回たまには下ネタでも書いてみるかと挑戦してみたら「いつもより可愛い女性になりきれてない。疲れているのではないか。」と言われてしまった。疲れているのは事実だけれど、なんだか悔しいので美人の気持ちになって文章を書きました。世間ではクリスマスなのに。



he is for She is 連載7回目
(1000文字 20分ちょい)



『しあわせ』




神様がなんであたしを美人にしようと決めたかわからないけれど、それは必然だったように思う。


あたしはビニール傘を買ったことがない。それはケチだとか、いつも折りたたみ傘を持ってるとか、そういうんじゃなくて、もし雨が急に降ったら駅の改札を出てボーッと外を眺めていると、誰かが買ってきてくれるから。たまたま飲み会で「こないだ傘を買ってくれる人が全然現れなくって」って何気なく話したら「え??」って反応されて初めて普通じゃないと気付いた。


なんていうのは嘘で、もちろんあたしが可愛いから特別なんだってのは分かっているけれど、たまに本当に自分が可愛いことを忘れてしまう事があって、だいたいは我儘なんだけれど、ちやほやされなかったりするとすっごい頭にくる。


目が2つあるように、日本語が話せるように、当たり前のように美人として生きてきたから、よく「かわいい」とか「綺麗だね」と言われるけれど、それって「あなたは人間ですね」と言われるくらい反応に困るし「ありがとうございます」と答えたら嫌な顔をされ、気を遣って「そんなことないです」と言えば更に褒め言葉が続くから、発展性のない会話をするのも嫌だし、見た目以外になんか言うことないの?と思ってしまう。


勿論それも嘘。褒められるのは最高の気分で、かわいいと言われて嫌な気持ちになる訳がないんだから、10分に1回は褒めて欲しい。ただ褒めるだけじゃなくって、例えば「鼻筋がスッと通っていて美しい」とか具体的に褒めて欲しいし、欲を言えば「宝石のように輝く、薔薇よりも紅く美しい、今すぐキスしたくなる唇ですね」くらいキザな修辞表現をして言語化して欲しいとさえ心から思う。


20代の前半の私は、今日も美しく、嫌なことがあったら鏡を見れば元気になれるけれど、段々とその見た目は認めくないけど陰り始めていて、総合的に判定すれば高校生の時よりも綺麗だとは思うけれど、それでも焦りというか、全盛期がそろそろ終わると身体からサインが溢れ出ていて、遠くない未来にあたしが普通に扱われるのだという将来の不安に苛まれ、男達に辛く当たり散らし、永遠を手に入れられない悲しさに夜ひとり泣いたりする。


その泣き顔すら美しくて、自分で自分を慰めるんだけれど、あたしより可愛くない、でもあたしより若い女の子が、総合評価であたしの存在価値を脅かす存在になっていて、あたしはあたしが綺麗でいることが一番幸せだったから、今後どうやって幸せを見出せばいいのか、この残り僅かな期間で美しさをどう活用して将来のあたしを幸せにすれば良いのか寝る前に毎晩真剣に考えている。


神様、明日もまた可愛いままでありますように。おやすみなさい。




かわいい女の子の気持ちになりきったら、凄まじい勢いで文章が書けたんだけれど、ちょっとトランス状態になっちゃって、本当は全然違う感じにしようとしてたのに、オチもないまま書き終わってしまった。もしかしたらある意味でリアルなのかもしれない。ちなみに傘のくだりは実話らしいよ、他のヤバい美女エピソードもっと知りたいな〜。

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