he is for She is (4)

久しぶりにnote開いたらフォロワー増えててびっくり。久しぶりにピコピコと駄文を認めました。深夜4時のテンションなのは許して。



he is for She is 連載4回目
 (1200文字 執筆時間35分)



『しわす』



洗面所の鏡でぼんやりと自分の顔を眺めていたら三十歳になっていた。去年まで、誕生日の日付が変わる瞬間は、年越しの時みたいにジャンプして地球にいたくないくらい幸せだったのに。あたしどうしてこうなっちゃったんだろう。


高校を卒業して実家を離れてから12年。あれ、11年かなぁ。家族の代わりに5人の男があたしの誕生日を祝ってくれて、夜景の綺麗なレストランで食事したり、指輪を貰ったり、旅行に連れてってくれたり、あとは遠距離恋愛してた彼が東京に来てくれたり、まぁ色んな初めてを経験したけれど、恋人がいない誕生日を迎えるって今まで経験したことなかったみたい。別に恋愛依存症みたいなタイプじゃないし、意識したことなかった。ほとんど一年近く彼氏がいないことだってあったのに。


三十という区切りの年は、数時間前までアラサーだった私にとって、まだ実感のない、まるで母が死んだ時のような、頭では理解しているけれど身体が追いつかない、もしかしたら宝くじが当たったらこんな感じなのかな、日常という波が穏やかに私を覆い尽くして、別にそんなこと本気で思っていないのに「あたしの人生もう終わったかも」と口から言葉が溢れ出た。


別に歳をとるのは構わないっていうか、勿論そりゃ若いままで居たいに決まってるけど、孤独な誕生日を迎えた事が一番の苦痛で、今日という24時間をどう耐え忍ぶか(しかも信じ難いことに今月はクリスマスまであるから最悪としか言いようがない)の答えが出せずにいる。友達に声をかけるのも面倒で、でも一人で過ごすのは辛すぎるし、何かアクションを起こさなくちゃなのに、鏡の前でずっと自分の顔を眺めている。感情は時化てても現実は凪。


たぶん携帯には、何人かから連絡が来てて、きっと私が別れたことを知ってる数人の男から下心のある、だけど少し嬉しくなっちゃうようなLINEが届いているはずだから、読んだら少しは心が晴れるかなとも思うし、たぶんそれで夜ご飯の予定ならなんとかなりそうだけれど、きっと虚しくなるんだろうな。セックスしないでバイバイしたら帰り道に寂しくて泣いちゃいそう。したらしたでバカみたいって翌日の帰り道に大反省するだろうし、だけど一人で過ごすのも嫌。どうでも良い男と記念すべき30歳を迎えるなんてインスタがこの世になくったってありえないでしょ。もう、どうしたらいいの。


友達が沢山いたら祝って貰えたのかな。いつも彼氏と誕生日過ごしてたから、パーティーも誘われなくなっちゃった。長い長いため息をついて、あたしはもう考えることに疲れて、いつもは絶対にダメなんだけど服を着たままメイクも落とさずベッドの中に潜り込み、もう好きじゃないと決めた元カレの名前を布団の中で何度も何度も小さく叫んで、このまま叫び続けたらまた好きになっちゃいそうだったから、あの恋を終わらせるために一人で誕生日を過ごそうと決めたあの時のあたしを裏切らないように、枕を噛んで涙を拭いた。


あたし、お誕生日おめでとう。



来週お誕生日なので祝ってください。てへ。

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