ホモサピエンスの歴史_1

「VTuberならでは」の動画とは?進化心理学からVTuberの強みを探る

「VTuberならでは」の動画とは何か?


「VTuberならでは」の動画とはどのような動画なのでしょうか?
VTuberがあげている動画のほとんどはゲーム実況か雑談動画(配信)です。これでは普通のYouTuberがやっていることと何も変わりがありません。
  
そのため、多くのVTuberは「VTuberならでは」の動画を作らなければならないという使命感に襲われています。
例えば、VTuber四天王と呼ばれる電脳少女シロさんは、テレビ番組でマツコ・デラックスさんと対談した際に「バーチャルならではの企画がない」と相談していました。

この記事では、「VTuberならでは」の動画が作れないという問題を行動経済学、進化心理学の観点から解決していきます。



ほとんどのVTuberは「VTuberならでは」の動画を既に作れている


結論から言うと、ほとんどのVTuberは「VTuberならでは」の動画を既に作れています。
これはどういうことなのか、順を追って説明していきます。

そもそもなぜ「VTuberならでは」の動画を作る意味があるのでしょうか?
それは、「再生数や新規ファンを獲得する」という目的のためでしょう。VTuberの持つ優位性を活かした動画を作ることができれば、普通のYouTuberよりも優位に立つことができるというわけです。

「VTuberならでは」の動画とは、言い換えれば「VR技術を利用した画期的な動画」ということです。これは「VR空間内でバーチャルな体を活かした何かしらの企画をやる」という風に捉えられている印象があります。これはなかなかハードルが高い話です。

しかし、無理にVR空間内で凝った企画をする必要はないと私は考えます。なぜなら、ほとんどのVTuberの動画は自分の分身として2Dや3Dのアニメーションキャラクターが登場しているからです。これこそが「VR技術を利用した画期的な動画」なのです。


スマホもVRも未発達の時代には、リアルタイムで演者の表情や動きを投影するアバターを作ることは困難を極めました。VTuberとしてキャラクターを動かせるのは現代の技術力の結晶なのですが、これはVTuberとしては当たり前過ぎて見落とされてしまっています。
つまり、ほとんどのVTuberは「VTuberならでは」の動画を既に作れているので、「VTuberならでは」で悩む必要などないというわけです。


VTuberの一番のメリットは美しい容姿


とはいえ、これだけではあなたは納得できないと思います。
「いくら技術力がすごくても内容が普通ならYouTuberとの差別化ができないんじゃないの?」
「動画にキャラクターが登場するメリットはあるの?」

これらの疑問が噴出してくるでしょう。

確かにこれらの疑問はもっともです。
2019年現在ではVTuberの数は8000体を超え、黎明期にあった「物珍しさ」というメリットも薄れてきています。

では、VTuberが持つ圧倒的な強みとは何なのでしょうか?
それは、「美しい容姿」です。
言われてみればなんだそんなことかと思うでしょう。しかし、これはVTuberに詳しい人ほど「当たり前」になってしまい、見落としてしまう傾向にあります。


美しさは本能に訴えかける普遍性を持つ


「美しい」と言っても容姿の好みなど人それぞれじゃないかと、あなたは思われるかもしれません。
確かに好みはありますが、進化心理学で考えると、人間が異性に魅力を感じる部位は概ね共通しています。それは、「健康」「生殖能力」です。


VTuberの視聴者の大半は男性です。そこで、まずは男性が女性に魅力を感じる点を解説していきます。
男性が女性に魅力を感じる点は、「生殖可能かどうか」という点です。
女性の豊かなバストやヒップは多産が可能であることを表します。また、ツヤのある髪、大きく澄んだ瞳、ハリのある肌は若さの象徴です。
ウエストのくびれも女性が妊娠していないことを表す重要な要素です。ヒップ1ウェスト0.7の割合は世界中で共通して魅力に感じられる割合だそうです。幼児体系の子どもやお腹の膨らんだ妊婦はくびれが見られないため、生殖可能でないとみなされます。


日本の女性キャラクターは童顔が多いですが、実はしっかりとくびれが描かれていることがほとんどです。そのため、顔は子どものようなキャラクターであっても、身体は大人の女性の性的魅力を持つように描かれています。

次に、男性と女性に共通して魅力に感じる点は、左右対称で平均的な顔です。左右対称で平均的な顔は、遺伝子の多種多様を示します。脳の研究では、人間は美しい顔を見るだけでも脳の快楽中枢が反応するそうです。
顔だけでなく体の対称性も同様に、病気にかかっておらず健康であることを表しています。伝染病を患っていたり、身体に大きな怪我をしていれば、昔は生き残るのは難しかったのです。そのため、人間は本能的に、より健康で生き残りやすい異性に対して魅力を感じるのです。

つまり、VTuberの持つ「美しい容姿」は人間の本能に訴えかける普遍性があるというわけです。これはトップモデルやイケメン俳優には必要のないものかもしれませんが、これらに当てはまる人はごく一部だけでしょう。



「容姿がいい人」は物事が上手くいく


「容姿がいい」人はそれだけで強みになります。
なぜなら、私たち人間は、外見の印象によって、内面の評価にバイアスがかかってしまう性質を持っているからです。自分では内面だけで公平に判断したつもりであっても、実際は外見の印象に引きずられている可能性があります。

簡単にいうと、美男美女の行為はプラスに受け止められやすいのです。他方で、容姿に優れない人は同じ行為でも、マイナスの評価を受けることがあります。

例えば、営業の世界では、「高身長な人はそれだけで説得力が増す」と言われています。
海外の調査では、これを裏付ける研究結果が出ています。
それは、「身長と年収は正比例する」というものです。
オーストラリア国立大学による最新の調査では、身長が6フィートであると、男性の2インチ短くなった場合と比較して、年間所得が1000ドル近く上がることがわかりました。この研究では「背の高い人はより知的で強力であると認識されている」との結論が出ています。米国と英国での調査でも、同様の結論が出ています。アメリカやイギリスの場合、身長1インチにつき年収は789ドル高くなっていくそうです。

私たちは相手の容姿を見ただけで無意識の偏見が呼び起こされてしまうのです。このように、事前に与えられた刺激でその後の行動が変化することを、行動経済学ではプライミング(先行刺激)効果と呼びます。
プライミング効果の例の1つとして、政治家の容姿と選挙結果は正比例することが明らかになっています。


このように、容姿がいい人間はそれだけで多くのメリットを享受することができるのです。



ハロー効果による認知バイアス


なぜ、このような結果になってしまうのでしょうか?
それは、ハロー効果(後光効果)と呼ばれるものがあるからです。

ハロー効果とは、人間はある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められるというものです。
ハロー効果は強烈な認知バイアスを引き起こします。人はその人の評価をある程度、第一印象だけで決めつけてしまうのです。

ハロー効果を証明する簡単な例を出しましょう。


今から2人の人物の特徴を挙げます。どちらの方が好印象か判断してみてください。

田中さん:
顔がいい、頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い

鈴木さん:
嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい、顔がいい

ほとんどの人は、田中さんの方に良い印象を持ったでしょう。
ところが、この2人の特徴は全く同じもので、順番を入れ替えただけなのです。
始めにいい印象を持つか、悪い印象を持つかで、その人の評価は決定されてしまうのです。


VTuberの美しい容姿は見る人にハロー効果を引き起こします。同じゲーム実況でも美男美女と平凡な容姿の人では、視聴者の反応は変化するのです。ミスプレイ1つを取ってみても、「ドジっ子」「下手糞」のように反応が分かれるというわけですね。


脳にとっては2次元も3次元も同じ

見た目が「美しい」と言っても、結局絵じゃん? という意見もあるかと思います。このように、多くの人は2次元と3次元を分けて考えてしまいがちです。


しかし、当人がどう区別しても、脳からすれば2次元も3次元も同じなのです。私たちホモサピエンスは約30万年前に出現しました。対して、写真は約200年前、アニメーションは約100年前に発明されました。これはホモサピエンスの歴史の1%すら占めていません。つまり、人間の進化に対して、あまりにも技術の進化が早すぎて、脳が2次元世界のリアリティに対応できていないのです。

このことを表す簡単な例をあげましょう。

「男性は3次元の裸の女性を見れば興奮します。」
「同様に、男性は裸の女性の絵を見ても興奮します。」


しかし、種の保存を考えるなら、ただの絵に興奮するのは非合理的です。にもかかわらず、男性は興奮を抑えることができません。この理由は、脳が2次元世界の絵を「本物の女性である」と錯覚しているからなのです。

このような脳の錯覚の1つにシミュラクラ現象というものがあります。これは、人間の脳は3つの点が集まった図形を人の顔とみてしまうというものです。分かりやすい例は心霊写真でしょう。シミュラクラ現象により、私たちは壁のシミでさえも人の顔と誤認してしまうのです。



つまり、2次元のキャラクターであろうと、脳は3次元の人を見た時と同じ脳反応を起こすというわけです。



動画で顔出しをする必要はあるのか?

ここで、容姿に自信がない人はそもそも顔を出さなければいいじゃないかという疑問もあるかと思います。
確かに、顔出しをせずに結果を出しているYouTuberは数多く存在します。しかし、顔出しは再生数や登録者数だけではないメリットを投稿者にもたらします。
実際に、海外のゲーム配信では顔出しが主流となっています。

では、顔出しのメリットとは何なのでしょう。
それは、顔出しをしているYouTuberは主にその「人物」にファンが付くという点です。反対に顔出しをしていない場合は主に「コンテンツ」のほうにファンがつきます。

では、なぜ人物にファンがつくことがメリットになるのでしょうか?
それは、その人のファンは他の活動をする際にもついてきてくれる確率が高くなるからです。ゲーム実況であれば、他のゲームに移っても視聴してくれます。コアなファンならばCDを出す、本を出すなどゲームを離れた活動であっても応援してくれる確率が高まります。
自身のファンを増やすことは令和時代の信用経済という観点では非常に重要になってきます。詳しくは以前の動画で紹介していますので、そちらをご覧ください。



顔出しは単純接触効果を生む

顔を出して動画を投稿することは単純接触効果(ザイアンスの法則)を生みます。単純接触効果とは、同じ物に繰り返し接触することで、そのものに対して好意や親近感が増大するというものです。

例えば、日本人でタモリさんが嫌いという人は少ないのではないでしょうか。彼は生放送の回数でギネス記録を持っており、お茶の間で何度も目にする存在です。そのため、単純接触効果により好意や親近感が沸きやすいのです。


なぜ見ただけでも好感度が増加するのかといえば、これも進化心理学で説明がつきます。
狩猟時代、人間は常に外的と戦っていました。初めて目にする人、猛獣、毒キノコなどはそれによって命を落とす危険がありました。しかし、その中でも何度も目にしたものは、命を脅かす存在ではないと判断されます。

このように、人間に染み付いた本能の部分で単純接触効果は生まれているのです。


単純接触効果は様々な場所で利用されています。政治家の選挙ポスター、テレビCMは何度も繰り返し見せることで単純接触効果を引き起こそうとしているのです。
買い物の際、同じような商品が並んでいれば、つい見知ったほうの商品を手に取ってしまいますよね。


話をYouTubeに戻すと、つまり、動画投稿者は顔を出すことによって単純接触効果により、親密感や好感を得ることができるのです。


匿名性を持った顔出し

VTuberは匿名性を保ったまま顔出し配信を行うことができます。素顔を晒すことなく人物にファンをつけられるのはVTuberの持つ大きなメリットとなります。
顔出しはハロー効果や単純接触効果を生みますが、プライバシーが無くなるというデメリットも併せ持っています。トップYouTuberにもなれば、家を特定され悪戯を繰り返され、引っ越しを余儀なくされることなど珍しくありません。
そこまでされるのはごく一部だけですが、家族、友人、会社の同僚にはYouTube活動を隠したいという人も多いでしょう。

VTuberの場合は、プライバシーを守ったまま顔出しのメリットを享受することができるのです。

より効果を高めたいなら?

もうVTuberならではの動画は作れているよと言われても、向上心のあるVTuberさんの中には納得できない人もいるでしょう。
では、「VTuberならでは」の強みはどうすれば高めることができるのでしょうか。
最も効果的なのはモデルのブラッシュアップでしょう。容姿がよくなればなるほどハロー効果は強まります。
ハロー効果が強まれば、動画内容が同じでも評価は上向きになります。動画の評価が上がればリピーターを呼び単純接触効果を引き起こすことができると考えられます。


補足として、ロボットや動物など人ではないVTuberはどうなのかという疑問があります。
これらのVTuberは、人間アバターの持つ外見的魅力ではなく、希少性、独自性という点からハロー効果を引き起こすことができます。そして、ロボットや動物にも美醜はあります。モデルをブラッシュアップしたり、トラッキング精度を高めることは人型と同様に有効であると考えられます。


結論

結論としては、「VTuberならでは」はほとんどのVTuberが達成できています。無理にVR空間を活用した動画を作る必要に駆られることなどありません。万人から見て可愛い、カッコいい、美しいと呼ばれる2D3DモデルこそがYouTuberにはない「VTuberならでは」の動画なのです。

もし、あなたのお気に入りのVTuberの動画や配信が、次回から絵が無くなって声だけになると想像してみてください。「これじゃない」という喪失感が生まれるのではないでしょうか。

つまり、VTuberの強みとは、「ハロー効果と単純接触効果を引き起こせること」となります。

当然ですが、VTuberの強みはこの記事で紹介したもの以外にも様々存在します。その中でも今回は「VTuberならではの動画」という1面に絞ってVTuberの強みを紹介してみました。「VTuberならでは」で悩んでいるVTuberさんの助けになれば光栄に思います。


最後に、この記事のもう1つの目的を明かします。
この記事では、進化心理学、ハロー効果、単純接触効果、プライミング効果という行動経済学に関わる用語を紹介しました。これらは私たちの仕事や日常生活のいたるところで利用されています。知らないことで、知らぬ間に損をしているというケースもあるでしょう。
バーチャルYouTuberというエンターテインメントを通すことで、難しそうな知識でも楽しく学んでもらうことができる。これがこの記事、そして私のVTuber活動の目的の1つです。


2019/7/28  バーチャルエコノミスト千莉



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光栄です。
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バーチャルエコノミスト 千莉

経済系のバーチャルYouTuberです。 「行動経済学」「フィンテック」「シェアリングエコノミー」など最新の経済システムとサブカルチャーを複合させた記事を書いています。 発行書籍:https://www.amazon.co.jp/dp/B07QH1V6TF

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