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【217日目】 たたら製鉄

ご隠居からのメール:【たたら製鉄】

『辰五郎と方谷』ーーこの随筆は、およそ二十五年前、「備北民報」という地元の地方紙に連載したものだ。少子高齢化現象の進行で、当時すでに、備北地方の人口は減少傾向を示していたが、それから四半世紀の歳月を経て、事態はいっそう深刻な様相を呈していると思う。

思うというのは、自分自身も高齢化をして、お盆の墓参りもしなくなり、限界集落化しつつある故郷の実態から目をそむけ続けているからだ。人間には定命というものがある。定命が近くに迫ってくれば、故郷は遠くにありて思ふもの、そして悲しく歌うもの、という室生犀星むろうさいせいの詩の気分になる。

「精神的な豊かさ」とはどのようなことなのかということも深く考えていく必要があるよ。長谷部家のファミリーヒストリーでは地位や権力、土地、まあ、お金もすこしはあっただろう。しかし、全く別筋の家が在ったり、実子が生まれなかったり、合戦で人の命を奪ったり、裏切りや思惑が外れたりもしただろう。

様々な七難八苦を乗り越えて、何とか行き着いた高瀬の土地でも相続争いが続いてしまった。一方、伝蔵さんのように、人のために尽くす人生を選んだ人もいる。また、もっと古い時代では、百五十年以上前の江戸時代末期に活躍した山田方谷やまだほうこく太田辰五郎おおたたつごろうのことを調べると、この地方がたたら製鉄で我が国有数の活気を帯びた地域だったと知って驚かされる。

当時のような活気を取り戻すためには、たたら製鉄に代わる基幹産業を育て、人々が集まるようにしなければならない。岸田新首相のように分配重視の新日本主義といったっても基幹産業で働く人が多数いなければ、ぶらぶら遊びながら、おこぼれにあずかろうとする少数の人を養えない。

新しい資本主義で暮らす家族も分配重視になると思う。所得なくして分配もないが、分配比率については家族の構成員による納得感が必要だ。納得感を共有できるようになれば、「精神的な豊かさ」につながる。



返信:【Re_たたら製鉄】

「たたら製鉄」は日本の武器産業を担っていたわけだから、日本中からお金が集まってきただろうな。しかも、その土地は、鎌倉時代や弥生時代くらい昔から続く伝統文化だったわけだから、たまたま流されてきた土地だけど、長谷部信連も抑えておきたいと思う領地だったろうな。

いしさんは、大量の古銭をつかわずに亡くなり、長谷部の山々は分割され、いまでは、一族がほとんど住み着かない限界集落地となってしまった。もちろんお金も大切だが、人生を全うするうえで「精神的な豊かさ」がどれほど大切か「自分がなぜ生まれ、何のために生まれてきたのか」という問いを考えながら学ぶことができるだろうな。

ただ単に「幸福」や「楽しい」という感情だけで、人は生涯を全うすることはできない。そのような感情を得るために「我に七難八苦を与えたまえ」という心の強さを身に着け、「仏さんが一番いい時に死なせてくださる」という徹さんの心境にまで至る。まるで人生の教科書のようだ。

松田伝蔵さんが郷関を出たことを、尼子の落人一族の恥ととらえた人もご先祖さまのなかには、いたかもしれないが、現在進行形のファミリーヒストリーでは、伝蔵さんの教えは精神的な豊かさにつながっていると思う。

また、「僕たちの結婚は根本的に間違っていた」という興一さん(祖父)の発言の裏には、尼子一族(日野)との結婚や夫婦喧嘩、相手の気持ちを聞くチカラ、戦争、自己都合などの要因がこめられており、事実として喜美子さん(祖母)は、張家口で亡くなってしまった。


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