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”オタク”だからこそ大切にしたいリアルなつながり。コスプレイヤー「初音雪華」

SNSでのコミュニケーションが当たり前になる遥か前から、ゲームやアニメ、コスプレのイベントに足繁く通い、コスプレイヤーとして20年のキャリアを持つ「初音雪華」さん。「初音雪華」で画像検索をすると、完成度の高い彼女のコスプレ写真がずらりと並ぶ。元々はキャラクターへの”好き”を表現するためのコミュニケーション手段としてはじめたコスプレが、いつの間にか枠を超え、コスプレイベントのコンサルティングなど、仕事を拡げるきっかけになっていったと語る彼女。なぜ彼女は人を魅了し続けられるのか。初音さんのコスプレ論に迫る。

コスプレとSNSの長く深い関係 

-VALUを知ったきっかけは何だったのでしょうか?
初音
 ホリエモンさんのTwitterをフォローしていて、ある時期「VALU始めました」とか「VALUって面白いよ」と呟いていたんです。それで「何だろう?」と調べはじめたら、フォローしていた他の起業家の方達も、みんなVALUの話をしていて。ますます興味が出て、YouTubeの動画を見て使い方を勉強して、自分もはじめたって感じです。はじめたのが早かったのもあり、あれよあれよという間にウォッチ数が増えて、タイミングがよかったなと思いますね。

-ネットとの出会いや使い方について教えてください。
初音
 高校1年の時パソコンが家にきて、そこからコスプレのコミュニティサイトに併設されたチャットで情報交換をはじめました。学校に趣味の合う友達もいなかったし、高校の時は学校から帰るとずっと朝方まで掲示板に入り浸って、ゲームの話とか、普段の何気ない話とかをしていた記憶ばかりです。ネットは純粋に趣味の合う友達とつながる場でしたね。掲示板やブログ、Twitter、YouTube、ライブ配信アプリなど、その時々でいろいろなツールを使って情報を集めたり、コミュニティに入ったり、友達を見つけてつながったりしていますね。

-SNSを使いこなしてきた初音さんにとって、VALUはどんな特徴があると思いますか?
初音
 Twitterのフォロワーはライトなファンが中心で、コスプレに対して「かわいい!」や「そっくり!」など、気軽な感想をコメントしてくださるんです。でもVALUは、クリエイターをしているユーザーさんがけっこういるので、コメント一つとっても「そういう視点もあるんだなぁ」と気付かせてくれるような鋭いものが多いです。ファンのタイプも異なりますし、ユーザーさんの真剣さが違うなと感じることが多々あります。

コスプレとは「キャラクターへの愛を表現する」こと

-初音さんにとって、コスプレの魅力とは何でしょうか?
初音
 私にとってコスプレは、キャラクターや作品への”好き”を表現することとコミュニケーション手段なんです。イベント会場でコスプレをしていると「そのキャラ大好きです!」と声を掛けられるし、話のきっかけになりますよね。イベントにコスプレをして行くと、だんだん存在を覚えられて友達も増えるし、そこからお仕事につながったこともけっこうあります。コスプレきっかけで知り合った方に「アプリを宣伝したいのでレイヤー目線で意見が欲しい」と頼まれたり、アニソンのイベントに出演したり。。
あとは、好きなキャラクターになりきって、どれだけリアルに再現できるかを追求することも魅力です。コスプレって自分の承認欲求を満たすものじゃなくて、キャラクターへの愛を表現するためのものだと思うんですよ。だから、コスプレをする時はキャラの所作や表情まで完コピできるように研究するし、それを見た人が細かいところに気付いて褒めてくれるととても嬉しいです。

-今までコスプレをしたキャラクターの中で、一番気に入っているキャラクターはどなたですか?
初音
 『DEAD OR ALIVE』という対戦格闘ゲームシリーズのキャラクター「あやね」です。20年間ずっと「あやね」のコスプレを続けていて、いつの間にか初音といえば「あやね」と言っていただけるくらいになっていました(笑)。他のキャラクターをコスプレする時ももちろんありますが、かっこいいタイプの女性を選ぶことが多いですね。「あやね」もそうですし、大好きなセーラームーンのコスプレをする時も、主要メンバーではなく「セーラープルート(冥王せつな)」を選んでいます。自分の中で理想のヒロイン像が、きっとかわいいよりもかっこいいタイプの女の子が好きなんだと思います。

子供の頃から変わらない「好き」への情熱

-そもそも初音さんがコスプレを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
初音
 格闘ゲーム全盛の時代、今から20年くらい前に、同人誌即売会を運営している、とある企業 (Y) がゲーム専門のイベントを開催していて、たまたまコスプレOKのイベントだったんですね。当時、私は中学生だったんですけど、そこで初めて見たコスプレイヤーさん達の楽しそうな姿を見て、「面白そう!自分もやってみたい!」と感化され、始めたのがきっかけですね。

-コスプレ以外には、どんなことが好きな子供でしたか?
初音
 小学1年生の時から、“オタク”と呼ばれるくらいマンガやアニメが好きでしたね。おてんばだったので、外でアクティブに遊ぶこともありましたが、とにかく絵を描くのが大好きで、机に座ると授業ノートの下に自由帳を開いてコソコソと絵を描いていましたし、帰宅後も何時間でも描き続けているような子供でした。クラスの男子に「や~い、オタク」と揶揄われたこともありましたが、自分では“オタク”という感覚がなくて、大人しい性格でもなかったんで、気にせず「言わしとけ」くらいのノリだったと思います。

-当時のコミケやコスプレ界の取り巻く状況はどうでしたか。
初音
 今のようにオンラインで情報を集められる時代ではなかったんですが、たまたまコミケデビューを先にしていた友達がいて、その友達がきっかけで運良くコミケデビュー&コミケでコスプレデビューをすることができました(笑)。当時は、会場で写真撮影して「(フィルムを現像した)写真送ります!」となった時に、連絡先交換するのもリアルな住所だったし、今と比べると長閑な時代ですよね(笑)。
でも、変な人もいなかったし、嫌な思いをしたこともなかったから、本当にみんな趣味でつながっている仲間みたいな感じでした。その時から撮影をしていただいている20年来の付き合いのあるカメラマンさんもいるんです!

求められるのはリアルでつながるコミュニティ

-今後、初音さんがやりたいこと、チャレンジしたい分野はありますか?
初音
 ずっとやりたいと思っていることは、コミュニティ(居場所)作りですね。最近、久しぶりにゲームセンターに通うようになったんですが、ゲーム好きの人が集まれるようなコミュニティがないことに気が付いてしまって。ゲーセンって、同じゲームが好きで顔見知りになったとしても、お互いのプレイヤーネームを知るくらいがせいぜいで、それ以上のつながりってなかなか作れないんですよ。ゲーセンではゲームしかやらないし、一歩入り込んだ会話を避けることもあったりして。ある意味さっぱりした付き合いでいいのかもしれないですが、せっかく同じゲームが好きなのに、そのタイトルがゲーセンからなくなってしまうと、つながりもなくなってしまうことにもどかしさを感じていました。ゲーセンゲームは変遷が早いものが多いので余計そう感じるのかもしれません。
モノ消費からコト消費の時代になった今だからこそ、リアルで交流ができるコミュニティは必要だと思いますし、ゲーム業界をもっと盛り上がるきっかけになるんじゃないかなと思っています。

-なぜ、そこまで同じ趣味を持つ人とつながりたいと思うんですか?
初音
 やっぱり人と関わることが好きなんですよ。私自身、子供の頃から自発的にコスプレイベントやネットの掲示板を見つけて、コミュニティ探しに困った経験がないから、この能力を活かしていきたいと思っています。もし学校が合わなくても、会社に馴染めなかったとしても、一つでも多く居場所があれば気楽に楽しく生きていけますから。趣味で出会った人やリアルな人間関係からいろいろなことを学んだし、得たものが多いので、そういうコミュニティや関係性を作り出せるような立場になれたらいいですね。やっぱり人と関わらないと成長できないし、見る目も育たないし、縁も生まれないと思うから。これだけネット社会になって、自分から何でも発信できる時代になったんだから、やりたいことがあるならどんどん出て行って居場所を見つけたり、いろんな人とつながってチャンスを掴んだほうが楽しいじゃないですか。

コスプレって未だに偏見がある業界ですが、私は、コスプレのおかげで、多様な価値観を受け入れられるようになったと思います。その経験をさせてくれて、たくさんのことに気づかせてくれたコスプレという文化に感謝しています。


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