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20210926

Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé !

UCI世界選手権ロードレースで、今年最後のレースとなった男子エリート。表彰式で流れたのは開催国の「ブラバントの歌」ではなく、「ラ・マルセイエーズ」だった。 
7人目にして、フランス人として初の2年連続の虹色ジャージこと、アルカンシェル獲得だった。
しかし、直前のレースの結果や、強大なライバル国の存在もあり予想上位にあがっていなかった。 それでも優勝したのは、監督のクレイジーな作戦と、何度も仕掛けたアタックだった。

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 世界選手権は、当然国ごとのチームで走る。普段のチームメイトがライバルになり、ライバルチームのライダーがチームメイトになるのだ。 彼は普段、ベルギーのワールドチームで走っているが、世界選手権に出場するライダーはワールドチームの中で一番多かった。フランス代表も、彼を含めて3人いた。
 開催国でもあるベルギーチームは、ここの若きエースライダーをアシストとして指名したものだから、ちょっとした議論にもなった。
 そんなベルギーチームはここまでロードレースではメダルを獲得できていなかったし、チーム内には絶対に勝たせたいエースがいる。 このレースにかける思いは並々ならぬものがあっただろう。
ベルギーチームは先頭グループに人員を送り込み、プロトンの先頭でも集団制御する、という王道展開に持ちこんでいく。 が、そうはさせまいと積極的にアタックをしかけていったのがフランスチームだった。
 全長は約260キロだが、フランスチームの最初のアタックがあった際はまだ180キロも残っていた。これに対してきっちりベルギーが対応し、また集団に引き戻していく。ベルギーチームでその役割を務めたのが、普段同じチームで走る若きエースだった。。レース前アシストにするのはどうなのか、彼にそれはできないだろうという批判を吹き飛ばすように危険なアタックを潰し、集団の先頭で引き続けた。 観客の大歓声に背中を押され、ハイペースで引いていく。
他のチームが何度も何度もアタックを仕掛け、その度に何度も対応していたからか、残り26キロの地点で彼は力尽きた。 これによって統率が取れていたプロトンはカオスになる。
 残り21キロ、ルーベン周回でいよいよフランスチームのエースがアタックをかける。これは追いつかれてしまうがもう一度別の地点で仕掛けた。これも追いつかれたが残り17キロで仕掛けた強烈なアタック。 後ろの選手たちが顔を見合わせたこともあり、強烈な一撃となった。
 ベルギーの観客は最初はブーイングしていたものの、最終周回に入る頃は歓声に変わっていた。彼も観客を煽るような仕草をしつつ最後の力を振り絞って駆け抜けた。 そして…


彼の名前はジュリアン・アラフィリップ。

史上7人目にして、フランス人では初となる連続優勝となった。同じ国のチームメイトも、ワールドチームのチームメイトも祝福に駆けつけた。

 一方、ベルギーチームは2位3位を賭けたスプリントで一歩及ばず、メダル獲得とはならなかった。優勝候補に挙げられていたが、エースには勝負できる脚がなかった、との事だった。

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 アルカンシェルを纏ってレースをした1年は楽しかったが、時に肩に重くのしかかる時もあった。パンチャーらしくアタックを決めて勝負するのが好きではあるけど、虹色は目立ってしまうから。 スプリントを制したと思いガッツポーズを決めたら実は隣のライダーが勝っていた、ということもあった。最終版のレースはバイクとぶつかって腕も骨折した。
今年も悔しい思いをしたレースでその悔いを晴らすことはできなかった。チームメイトとライバルに対して2対1の状況を作ったのに勝てなかったときもある。 それでもユイの坂を制したし、ツール初日にステージ優勝とマイヨ・ジョーヌ獲得した。 派手に負けることもあるけれど、勝ちたいと思ったレースではきっちり勝ってきた。だから彼が自身の1年を10点満点中7点と評価した。 
 今後ツール最終日にマイヨ・ジョーヌを着てフランスの悲願を果たすか、はわからない。来年はおそらく「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フランでレーンやイル・ロンバルディアのようなレースには出ない。それはアルデンヌクラシックに専念したいから。 しかし、アルカンシェルを着て走る2年目も走り方そのものを変えることはないだろう。 勝ったらもちろん嬉しいけど、勝つことがすべてではないことを知っているから。これからもきっと、我々を魅了させる走りを見せることだろう。

 

実はいいね、って登録してなくてもできるのよ