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『日出ずる国として和風で表現したい青と、地中海アマルフィの景色を感じさせる洋風で表現したいブルーと・・・そんな宝石達』

「あお」と色で表現する漢字に日本では【青】・【蒼】・【碧】といった感じに変化を表現していたり、「こん」【紺】・「あい」【藍】といった漢字であおを表現したりしますが、世界ではブルー系統でまとまった表現をしますから緑味がかっているのか紫味がかっているのかという[グリーニッシュ(Greenish)]または[パープリッシュ(Purplish)]といった補足で分けるイメージで、やはり日本の『漢字』の方が情緒を感じてしまいますね。
そんな中にも日本の和風な色合いでは表現しにくい、まさにヨーロッパの各国や地中海を想わせる透き通ったブルーや太陽のもとで南国の鮮やかさをもった濃いブルーは宝石で魅了されるブルーに最適な表現が別にあるように思います。そんな、宝石の中でも少し愛好家向けなストーンを紹介したいと思います。

《アイオライト(iolite)》【和名:菫青石(きんせいせき)】(※鉱物学では《コーディエライト(cordierite)》と呼ばれています。)
赤味のパープルというより青味のバイオレットに近い色からネービーブルーと言われる紺や藍の色で、透明なものから内包物の表情がとても豊かな味のあるものまである多彩な宝石。ムードとしてはサファイヤよりアートジュエリーのデザインにふさわしいと思わされ引き込まれます。
【産出国】
主要産地国 インド・タンザニア・ブラジル・スリランカ (その他の産地 ミャンマー・フィンランド・マダガスカル・ナミビア・ノルウェーなど)
【鉱物組成】
Mg2Al3(AlSi5O18)またはMg2Al4Si5O18
硬度 :7~7.5
比重 :2.56-2.66
結晶系:斜方晶系

《アウイナイト(hauynite)》【和名:藍方石(らんぽうせき)】
天然でこのような色と透明度が存在するのかと思われる程の色で、コバルトブルーというのが近い色合い。輝きのある藍色と表現したいです。
ここ数年で人気が出て価格も高騰した宝石で業界の方はご存知かと思います。産出がドイツの一部地域のみということも希少で価値の高い理由です。
【産出国】
主要産地国 ドイツのアイフェル鉱山
【鉱物組成】
(Na,Ca)4-8Al6Si6(O,S)24(SO4,Cl)1-2
硬度 :5~6
比重 :2.40-2.50
結晶系:等軸晶系

《アズライト(azurite)》【和名:藍銅鉱(らんどうこう)】
こちらもなお聞きなれない宝石ですが、不透明でラピス・ラズリに似ています。アズライトとマラカイトがバランスよく混ざり合っているものをやや珍重して最近は取り扱われているように思います。鑑定士としても泣かされる宝石です。模様もマラカイトの独特な層の出かたを同じく持っていて、地球の生命力や躍動感を感じてしまう見とれる宝石です。やや濃いめの群青色といったところでしょうか。
とここで実は話になりますが、[群青]という顔料は本来この[アズライト]を使ったものが[岩群青(という岩絵具)]になります。ですので群青色そのものの色となります。
【産出国】
主要産地国 アメリカ・ナミビア・フランス (その他の産地 オーストラリア・イギリス・ルーマニア・ソ連・ザイールなど)
【鉱物組成】
Cu3(CO3)2(OH)2
硬度 :3.5~4
比重 :3.30-3.89
結晶系:単斜晶系

《アパタイト(apatite)》【和名:燐灰石(りんかいせき)】
まさしく透き通った南国の海の青といった色合いの宝石で、色味としてはその青から緑味がかっているものが多いです。シアン色系の表現が近いです。
レアストーンの中でも人気のある宝石。職人としては硬度が低いので割れやすく、昔割ってみた時は水琴窟のようにピーンという音が響いた記憶があります。
スペイン産の黄緑色を帯びたものが希少です。
【産出国】
主要産地国 ブラジル・ミャンマー・メキシコ〈その他の産地〉カナダ・チェコスロバキア・ドイツ・インド・マダガスカル・モザンビーク・ノルウェー・南アフリカ・スペイン・スリランカ・アメリカなど
【鉱物組成】
Ca5(PO4)3(F,OH,C1)
硬度 :5
比重 :3.13-3.23
結晶系:六方晶系

《アマゾナイト(amazonite)》【和名:天河石(てんがせき)】(※[マイクロライン(microcline)][マイクロライン フェルドスパー(microcline feldspar)]という鉱物の変種および業界名称になります)
日本では「ラムネ色」と表現したい色。カラー見本からはやはりシアン色系となり不透明~半透明のスカイブルーというのが正しいように思います。特徴的な乳白色の網目状模様が入るのが一般的です。緑青色だと翡翠に近い表情で、青緑色だとナチュラルなトルコ石に近い表情を見せる宝石です。
【産出国】
主要産地国 ブラジル・マダガスカル・ノルウェー・アメリカ・ソ連など
【鉱物組成】
KAlSi3O8
硬度 :6~6.5
比重 :2.54-2.58
結晶系:三斜晶系

《カイアナイト(kyanite)》【和名:藍晶石(らんしょうせき)】
地球を宇宙から見たような藍色、アイオライトは紫に近い藍色でカイアナイトは青に近い藍色と自分は所見で見分ける時に頭に浮かべるようにしていますが、同じような色もあるので注意しています。ただどちらもレアストーンなので普通はサファイヤとの比較を先にすることが多く、一瞬で見分けるのは難しいです。
【産出国】
主要産地国 ブラジル・ミャンマー・インド・ケニア・パキスタン・スイス・アメリカ・ソ連など
【鉱物組成】
Al2SiO5
硬度 :1方向では4~5、直角方向では6~7.5
比重 :3.56-3.69
結晶系:三斜晶系

《スミソナイト(smithsonite)》【和名:菱亜鉛鉱(りょうあえんこう)】
乳白色のブルーがポピュラーですが、「シーブルー」という商品名が付くブルーカルセドニーに似たものもあります。また面でしっかりカットされているものはアパタイトにも似ていて鉱物としてボコボコと成長した見た目はアズライトと同じく地球の生命力を実感し、しかしながらその雰囲気は躍動感というより鍾乳洞のような静寂と何万年もの積み重ねを感じて努力の結晶のように見えてきます。南国の美しい海の中から海面を見上げたようなマリンブルーと表現したいです。
【産出国】
主要産地国 オーストラリア・ギリシャ・メキシコ・ナミビア・ルーマニア・スペイン・アメリカ・ザンビアなど
【鉱物組成】
ZnCO3
硬度 :4~5
比重 :4.30-4.45
結晶系:六方(三方)晶系

《ヘミモーファイト(hemimorphite)》【和名:異極鉱(いきょくこう)】(※[ヘミモルファイト]という表記もあり)
この宝石の色が正真正銘の[水]の色と表現したい趣きを持っていて、ブルーと白い結晶系の混在した状態の石は南国の白い砂浜に透き通る海の青という表現をしたいです。青がより濃いものもありますが、それもまた[水]のようなでシアン色系の中でも水色と表現できます。
原石はモコモコしていて音で表すなら「ボコボコ」といった生命を感じるような石です。
【産出国】
主要産地国 メキシコ・アメリカ・イタリアなど
【鉱物組成】
Zn4Si2O7(OH)2H2O
硬度 :4.5~5
比重 :3.40-3.50
結晶系:斜方晶系

《ラズライト》(※表記[ラズライト]として紛らわしい二種類《(Lazulite)と(Lazurite)》あり)
・ラズライト(Lazulite)【和名:天藍石(てんらんせき)】(※[ラジュライト]という表記もあり)
あまり聞きなれない宝石で、宝石として評価される透明な濃いブルーの物は一見サファイアやタンザナイト、希少石のベニトアイトのように感じます。
内包物にホワイトのまだら模様とか濃いものが多いとかサファイアにある[うろこ雲]のような模様があるもの、またラズライト イン クォーツと言われる水晶に濃いブルーのラズライトが内包物としてまだらにに入る一風変わった石にもなります。群青色に透明感を兼ね備えた色から紫味が入るといった表現になりますでしょうか。
日本では栃木県那須塩原市で少し産出するそうです。
【産出国】
主要産地国 オーストリア・ボリビア・ブラジル・インド・マダガスカル・スウェーデン・スイス・アメリカなど
【鉱物組成】
MgAl2(PO4)2(OH)2
硬度 :5~6
比重 :3.08-3.17
結晶系:単斜晶系

・ラズライト(Lazurite)【和名:青金石(せいきんせき)】
こちらはラピスラズリの主成分である鉱物として有名。ですので正に群青色です。
【産出国】
主要産地国 アフガニスタン・チリ・ソ連など
【鉱物組成】
(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2
硬度 :5~6
比重 :2.50-3.00
結晶系:等軸晶系

《ラリマール(larimar)》(※[ペクトライト(pectolite)]という鉱物の変種および業界名称になります)
ペクトライトの中でも、特に青色系のものをいう。誤称として[アラスカ ジェイド]や[ペクトライト ジェイド]と呼ばれたこともあるそうですが、業者間でも聞いた事はなく特にラリマールとした方が認知度も評価も高い宝石です。キャッツアイ効果が入るように見えるものもあり、艶感のあるもので思いのほか高価な物もあります。いろいろなアクセサリーからジュエリーに至るまで近年とても人気があるデザインバラエティーの豊かな宝石です。色の表現としては[水色]、正に美しい海の水面を写真に映したような自然のアート!、穏やかな海面に太陽の光が揺らめいている情景に見えてもう旅に出ているようです。鉱山も本来はドミニカ共和国のパオルコ鉱山に限定されていて、そこでもかなり綺麗なブルーのものには特別に「深海ラリマー」という名称を付けているようです。そのことからか『深海を写す石』といった表現を耳にしたりしました。それにはドミニカ共和国がカリブ海に囲まれた島国なので、鉱山も海底に達するようなイメージを持ったようですが実際は違うようですね。何か神秘性を持たせたくなるような特別な表情の宝石であることは確かです。
発見は1974年と比較的最近の宝石です。
【産出国】
主要産地国 (ラリマールは)ドミニカ共和国のパオルコ鉱山
((ブルー)ペクトライトは)イギリス・アメリカ・カナダ・グリーンランド・スウェーデン・ロシア・モロッコ・チェコなど
【鉱物組成】
Ca2NaSi3O8(OH)または NaCa2Si3O8(OH)
硬度 :4.5~5
比重 :2.74-2.90
結晶系:三斜晶系

【お手入れ】

【宝石言葉】

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