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ウルトラマリン

別名「瑠璃(るり)」・「ウルトラマリン」と呼ばれて、「青金石(せいきんせき)」と呼ぶ場合はラピスラズリの主成分である鉱物の部分を「ラズライト」とも呼ぶのですが、こちらは別の鉱物で「天藍石(てんらんせき)」の別名がラズライト(lazulite)となり、どちらの表記も紛らわしいとされています。
「ウルトラマリン」と呼ぶ場合に馴染み深いのは、美術大学受験の為に絵を描いていた時は「絵具:ウルトラマリン」の原料がラピス・ラズリの主成分ラズライトであることを知り、卒業して宝飾業界に入った時により感慨深く思った記憶があります。

そして「瑠璃(るり)」と表現しますと、当時工芸を専攻していたので伝統工芸に興味を持ち、数々の技法(象嵌や木目金、緑青の液に金属を安定して浸しつける煮色など)を試したりしていた頃、あまりにもその単純なはずの事が上手くいかず、そこで国宝とされ正倉院の宝物(現在約9000点とされています)の資料を眺めながら作品の素晴らしさに魅了されていた経験から、目にしてきた瑠璃を思い浮かべます。特に有名なのがガラスで2012年に正倉院の蔵出しとも言われる「正倉院展」に『瑠璃杯(るりのつき)』が18年ぶりに出品として話題になりました。少し話がそれましたがその宝物の中にはラピスラズリ(紺玉)を飾りつけた豪華な装身具「紺玉帯(こんぎょくおび)」があります。

そんな「正倉院展」について少し触れますと、1963年(昭和38)以降に空気調和装置を施した新しい宝庫に収納されることになり近代化したのですが、それ以前は作品の損傷を防ぐ為の「曝涼(ばくりょう) ※現在はこの名称も変わり「秋期定例開封」と改められたそうです。」と言われる虫干しのような作業というか行事があり、風通しをして虫干しをすることで多湿な日本の気候から守ってきた経緯から近代化した現在もその時期の10月下旬~11月上旬にかけて、奈良国立博物館で特別展「正倉院展」の開催が恒例となり古都の秋の年中行事の一つになっています。また話がそれましたが行ける方には是非お勧めです。

ここで工芸に話がそれたのですから絵画に話を移すとしたらやはり忘れてはいけないのが『フェルメール』ですよね。その呼称「フェルメール・ブルー」とされ天然ウルトラマリンを使用していた画家で最も有名です。「真珠の耳飾りの女」の少女がしていた青いターバンや、「牛乳を注ぐ女」の青いスカートは正にその「ラピスラズリ・カラー」です。
日本画では今でも現役の顔料で、その群青の色で描かれた絵画はその顔料だけでも高価と伺ったことがあります。その中で有名なところで言うと日本画家「平山 郁夫(ひらやま いくお)氏」でしょうか。
西洋美術ではイタリア盛期ルネサンス美術として、「純金と同等かそれ以上の価値」とされていた当時のラピスラズリの粉末(ウルトラマリン)顔料が惜しげもなく使われたのは、もちろん巨額の富で栄華を支えたメディチ家の存在があります。

とここまで宝石というより芸術の話が多くなってしまいましたが、それぐらい幅広いアートに多用多彩に彩られる鉱物という事が言えると思います。

宝石としての話を集めますと、歴史はとても古く数千年前から装飾品に使われていて、ツタンカーメンの棺やその後の文明でモザイク画や装飾品にも多く使用されている記録などがあります。サファイアが青色と関連付けられてその名が付いた理由は、おそらくラピスラズリに関連するギリシャ語の「sappheiros」に由来していると考えられています。それだけ古来から宝石として位置付けされているので、その昔シルクロードを通って日本へも運ばれているそうです。そして真言宗の開祖、空海はその瑠璃を守護石としていたそうです。

自然界の中でも独特で神秘的な色合いを醸し出すラピスラズリは世界中で各国の人々を魅了しているようですね。
そんな魅惑も実証されているともいえる宝石なのに、1958年まで12月の誕生石として長く存在していたにもかかわらず一時期取り消された経緯があるとのことです。何故でしょうね。

産地は特にアフガニスタン北部バダクシャン地方の山岳地帯がラピスラズリの唯一の産地として有名。

【産出国】
主要産地国 アフガニスタン・チリ・ソ連など

【鉱物組成】
含有鉱物によって異なる
〔※ラズライトは(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2〕

硬度 :5~6 不純物によって異なる
比重 :2.50-3.00 鉱物の内容によって変動する
結晶系:判断なし
〔※ラズライトは等軸晶系〕

【ラピス・ラズリのお手入れ】

【宝石言葉】

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