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【詩】無題

東の空が明るくなる前
いつもと違うことを期待する
後悔と落胆とがまどろむ頃に
そっと言葉を残しましょう



分厚いベールを一つずつ
融かして解いて剥がして触れて
滑り込ませるその指先に
絡みつく糸の名前を

特別な何かを求めているわけではなくて
特別でないことを普通に感じることは
悪いことではないでしょう?
だけどそこに少しだけ残る苦みに
怯えてしまう夜もある


風の吹くままに形を変えて
留まることなく流れゆく雲の形も
違うものを見ているはずだけど
そこで生まれる感情の欠片は
同じように煌めくでしょう

夏の終わりを惜しむように
夜空に散りゆく大輪が映す影も
少し遅れて響く空を震わす音も
何一つ同じでないとしても
見上げる月と無数の星は
同じように煌めくでしょう

特別な何かを求めているわけではなくて
特別でないことを普通に感じることは
悪いことではないでしょう
だからそこに少しだけ残る苦みを
甘くもなると信じてみて
そしてそこに少しだけ宿る痛みも
大事に抱えて朝を迎えて


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