マズロー|自己実現理論内の欲求5段階説

〜概要〜

先日、教育と教養の違いで色々考えた結果、ある人からローレンスコールバーグの「道徳性発達理論」を教えて頂いて(←これは後日)、色々考えた第2弾のマズローの欲求5段階説についてメモしていきたいと思う。


〜自己実現理論内の欲求5段階説|マズローとは〜

マズローさんはアメリカの心理学者です。「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定した時、人間の欲求を5段階の階層でチャート化したというのです。


1.生理の欲求 (Physiological needs)

生命を維持するための本能的な欲求。・食欲・睡眠欲・性欲 etc.極端なまでに生活のあらゆるものを失った人間は、生理的欲求が他のどの欲求よりも最も主要な動機付けとなる。一般的な動物がこのレベルを超えることはほとんどない。しかし、人間にとってこの欲求しか見られないほどの状況は一般的ではないため、通常の健康な人間は即座に次のレベルである安全の欲求が出現する。


2.安全の欲求 (Safety needs)

身の安全・身分の安定・他人への依存・保護された気持ち・不安・混乱からの自由・構造・秩序・法・制限、安全性、経済的安定性、良い健康状態の維持、良い暮らしの水準、事故の防止、保障の強固さなど、予測可能で秩序だった状態を得ようとする欲求。病気や不慮の事故などに対するセーフティ・ネットなども、これを満たす要因に含まれる。
この欲求が単純な形ではっきり見られるのは、脅威や危険に対する反応をまったく抑制しない幼児である。一般的に健康な大人はこの反応を抑制することを教えられている上に、文化的で幸運な者はこの欲求に関して満足を得ている場合が多いので、真の意味で一般的な大人がこの安全欲求を実際の動機付けとして行動するということはあまりない。

3.社会欲求と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)

・孤独や追放された状態を避ける・根無し草で生きている状態を避ける・家族や恋人、友達、同僚、サークル仲間など共同体の一員に加わりたいと思う・周囲から愛情深く暖かく迎えられたいと思う自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割があるという感覚。情緒的な人間関係についてや、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという感覚。愛を求め、今や孤独・追放・拒否・無縁状態であることの痛恨をひどく感じるようになる。
不適応や重度の病理、孤独感や社会的不安、鬱状態になる原因の最たるものである。


4.承認(尊重)の欲求 (Esteem)

自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。尊重のレベルには二つある。低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができる。マズローは、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしている。高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。この欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じる。


5.自己実現の欲求 (Self-actualization)

以上4つの欲求がすべて満たされたとしても、人は自分に適していることをしていない限り、すぐに新しい不満が生じて落ち着かなくなってくる。自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求。すべての行動の動機が、この欲求に帰結されるようになる。


以上が5大欲求といい、セグメントされている。


〜知りたいという欲求はどこに当てはまるのか〜

結論的には自己実現欲求に含める人が多いです。ごく少数で、社会的欲求や尊厳欲求の方がいます。私は事象によってこの3つのどれかに当てはまると思っています。

・社会的欲求の場合:知ることで社会から褒められたり、認められたりする。組織から初めて評価を受けることが目的になるときはここに該当するのではないでしょうか?学校で100点を取ればルンルン気分で明日から学校に行けるのはこういったところからかもしれません。
承認欲求の場合:知ることで他個人から認められたりするわけですね。例えば、マニアックなアーティストを知っていると知り合いが知っているとなぜか嬉しくなりませんか?(オタクとかそういうのかと思います。)別に社会からは認められにくいですが、小さな集団や個人からは「いいね!」と言われると嬉しくなりますね。
自己実現欲求の場合:行動によって得られる報酬を目的にするのではなく、行動そのものを目的とすること。知りたいとの欲を素直に受け止め、欲を満たすサイクルができている状態ということ。成長欲求とされるもので、自己実現欲求にしかない欲になる。下記参照。

この考え方だと、知ることは3つの欲求を満たすのではないかとも思えてきます。私はそう思う様にしています。


〜「物質的欲求」と「精神的欲求」〜

・安全欲求と生理的欲求=物理的欲求:モノを所有・使用することで、欲求が満たされることが物理的欲求
・社会的欲求と承認欲求と自己実現欲求=精神的欲求:モノ自体で満たされるのではなく、社会生活のなかで精神的に満たされることで精神的欲求

疑問|ブランドバックは物理的欲求か?

ブランド物のバックが欲しい。結論から言うと尊重・承認欲求に含まれそうですね。ブランドという物ではなく、精神的ステータスを求めて買っているということになる。つまり、ブランド物のバックはバックを買っているのでなく、ステータスを買っていることになる。(物理的欲求なら紙袋でいいと思います。)

〜「欠乏欲求」と「成長欲求」〜

欠乏欲求:「自分に足りないからこそ、外部から得ることで満たそうとする」という行動の動機です。欠乏を満たすためには、他者に依存したり、執着したり、衝突を引き起こすこともあるとしています。欠乏欲求は、人生の中で一度でも十分に満たされた経験があると、その後の人生で多少足りないことがあっても耐えることができると言われています。言い換えれば、「一度満たされた欠乏欲求は、それ以降はモチベーションを高めるための理由にはなりにくい」と言えます。逆に「満たしてしまえば、あるいは維持されさえすれば、大きな欲が湧かなくなるということ」。

例えるなら、「豪邸が欲しい」→満たされれば|「社長から認められた」→維持されれば → こと足りますね。

成長欲求:「自分が満ちているからこそ、自己の成長や他人に目を向ける」という行動の動機です。物質的にも精神的にも満たされた状態になると、自分の才能や可能性を追求するようになります。また、満たされているからこそ、他者への援助にも目が向きます。自分自身の成長への欲求は、満たされれば満たされるほど関心が増すために、永遠に求め続けることができる欲求です。


〜5つの欲求全てを満たした「自己実現者」の仮説〜

・現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
・自己、他者、自然に対する受容
・自発性、素朴さ、自然さ
・課題中心的
・プライバシーの欲求からの超越
・文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
・認識が絶えず新鮮である
・至高なものに触れる神秘的体験がある
・共同社会感情
・対人関係において心が広くて深い
・民主主義的な性格構造
・手段と目的、善悪の判断の区別
・哲学的で悪意のないユーモアセンス
・創造性
・文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越

らしいです。マズローは自己実現を達成する人間は、全人口のたかだか1%に過ぎないと考えていた。

〜批判的意見〜

残念ながら当時は批判的な意見もあった様で

1.サンプル数が少なすぎる。厳選しすぎた。

全被験者23名であり、9名は歴史上の人物をサンプリングに加えた。(リンカーンやルーズベルト、アインシュタインやスピノザ、シュバイツァーなど)

2.ピラミッド状に構成されている階層に異議あり!

ピラミッド形状(段階的なプロセス)が妥当でないとされたこともある。Water and Roachによれば、5つの階層は必ずしも相互に独立しておらず、入り交じっており、さらに階層の次元には個人差が見られるという。

3.環境要因は度外視

親が子供に言語や規範といった文化を身につけさせるまでは好き勝手な行動をさせないという事実からあきらかなように、環境要因を無視した欲求の発展は考えにくく、生物学的にだれもがこの順序をたどるとは言えないという批判がある。

4.普遍的モデルが西洋だけのモデルだと批判

3が要因とする説もあるが、そもそもこのモデルは西洋だけ当てはまるのではないかと言うこと。例えばRobbinsは、マズローの枠組みはアメリカの文化が前提であり、日本の場合は安全欲求が一番上になると述べている。さらに、マズロー理論は保守主義的イデオロギーに対抗する自由主義的イデオロギーの表出に過ぎず、西洋世界においても妥当ではないという議論もある。

5.自己実現の段階に到達するためには欠乏欲求を乗り越える必要がある?

たとえば、弁護士になるためには鉛筆は必要か?必ず物が必要になるものではない。つまり物理的欲求が満たされなければ、成長欲求(自己実現欲求)は満たされないのかと言うことだ。階層の順番に対する批判である。欠乏欲求を満たすには商品を購入する資力が必要だが、それでは結局自己実現は資力にかかっていることになってしまう。では反対に、資力があれば誰でも自己実現が可能かといえば、それも困難である。逆も然りで、欠乏欲求が満たされない貧困な国では自己実現は満たされないとするのか?そうではない。

〜その他|面白いこと〜

マズローはより高次の欲求に移行するためには現時点の欲求が完全に満たされる必要はないとしている。生理的欲求では85%、安全欲求では70%、愛の欲求では50%、自尊心の欲求では40%、自己実現の欲求では10%の達成度で移行が充足されるという。
自己実現者は完璧人間ではなく、欠点も多数有している。長年の親交をあっさり切り捨てたり、愛していない男と結婚し離婚する女性、親しい人間の死から瞬時に立ち直る者、因習にとらわれる者に苛立って暴言を吐いた女性など、自己実現的人間がそうでない人間を傷つける場合が非常に多いとマズローは説明する。マズローは自己実現者を無条件に賞賛していたわけではない。こうした欠点はマズローが挙げた自己実現者の特徴(上記参照)と矛盾するが、その理由については説明されていないらしい。

〜感想|マズローさんって人間らしい〜

全ての欲求を満たさなくてもいいんだよとか、自己実現できるのと完璧な人間は別問題だよとか、人間味に溢れていると思いました。

モノ(物質)を求める動機は、生理的欲求や安全欲求を満たすことだけではないことに注意する必要があります。現在の日本のような物質的に恵まれた国の場合は、特にそうなのですが、ここで1つ気づくのが、生理的欲求や安全の欲求が満たされる物ってどの様にできているのか、ついつい忘れがちですね。これは、弛まぬ人々の努力になるわけで(宗教っぽいですね)。そう考えると、人を受け入れたくなる欲求が出てきました。

「行動によって得られる報酬を目的にするのではなく、行動そのものを目的とすること」つまり「欲が目的そのもの(欲=目的)」とありましたが、これってすごく恐ろしいことの様に思います。知りたいという欲がそのまま目的になる。これはすごい原動力になるかもしれません。しかし、これは道徳的倫理範囲でのみ活用するべきことです。

次回はその道徳と倫理・ローレンス・コールバーグの「道徳性発達理論」をまとめていこうと思います。

参考文献

自己実現理論https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96
マズローの欲求5段階説の解説とマーケティングで陥りやすいミス https://swingroot.com/maslow-hierarchy-needs/


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