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AIR Domestic production2

沢山の中高生のみんながスーツに身を纏い、降下中。

青い奈落。

大気層の空中に静止する様々な大陸、島々。

成層圏から吹く風を受けて全てがひっくり返り、じりじりと迫ってくる。

凄い。

何もかもが新鮮でこれから体験する筈なのに、一度切りの体験に思えた。
急にカイネが叫ぶ。

カイネ
「二菜葉!集中しなさい‼︎」
二菜葉
「ハッ‼︎」
カイネ
「適性検査で激突するまで目を覚さなかったでしょ!」
二菜葉
「あ、そうだった!」
カイネ
「落ち着いて集中して、推進ユニットの起動から始めるわよ」
二菜葉
「うん!」

最初のシミュレーションで降下中気絶する事があり、案の定私も激突して死んだ。
他にもいたらしい。

2度目で混乱しながらも何とか出来た。
3度目はなんだか楽しかった記憶がある。

そうして適性検査は終わり、私はチームの一員になっていた。

カイネ
「さ、飛ぶわよ!」
二菜葉
「うん!」

背中の推進ユニットから集中した分の粒子加速が回り出す。

下に向かい奈落に落ちる力が弱まり、ゆっくり弧を描く様に落下から飛行へと切り替わる。

私達の大気濃度を調べるエリアはもうしばらく飛行するあたりだ。

しばらくしたら端末の合図が鳴り出した。

カイネ
「この辺りって事ね」
二菜葉
「うん、近いよね」

端末からブイを呼び出し、調査を開始しますか?の表示が出る。

はいを選び、初めてのブイ設置を済ました。

すると、J指令から通信が来た。

指令
「宜しい。それでは、しばらく距離を空けて移動したまえ」
カイネ
「指令⁈」
指令
「ブイの数は限られている。設置が納得いかなければ回収し、再設置してもらって構わん」
二菜葉
「はい!」
指令
「危険だと判断したならば相談に乗ろう、人命優先だ」
カイネ
「ありがとうございます!距離は‥」
指令
「数キロ単位は感覚を上げれば良い。端末に従い、大気の状況を見ながら留意したまえ」
カイネ二菜葉
「了解です!」

万全だ。
端末の案内。
指令との連携。
見渡す限りの大気状況を見ながら行動できる。

作業もしやすい。
カイネと談笑しながら飛んだ。

カイネ
「ハキハキ返事できるじゃない」
二菜葉
「そうかな?」
カイネ
「緊張して6と9間違えちゃうんだから少し慣れたんじゃない?」
二菜葉
「うぐっ」

小学6年生を間違えて9と言いかけたのを思い出して真っ赤になった。

カイネが笑う。
でも嫌な気がしない。

その日は全てのブイを無事設置して船の所へ帰還する事ができた。

そして何事も無くその日が終わる。



その筈でした。

続く

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