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かおりん×うしお「おじさんとワタシ」

♣…おじさん(うしお)
♥ …香織(かおりん)
♡…香織の母(おとぼけ姉さん)

○言い回しは多少変えても大丈夫です🙆‍♀
○「」内がセリフ それ以外は
 ナレーションっぽい感じでお願いします🙇
◯※はセリフや情景のイメージです

∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼・∼


♣「…ン、うぅむ …。」

♣まだ薄暗い部屋の天井が
 寝ぼけ眼(まなこ)に入る
 月の明かりが差し込む窓を
 恨めしく見つめ あくびをひとつ

♣「…喉が乾いた」

♣布団からのそりと立ち上がり
 冷蔵庫の麦茶を注ぐ
 足の踏み場もないぐらい
 散らかった部屋には
 お誂(あつら)え向きの
 さえない男がそこに居た

♣「くそ…明日か 面倒臭ェ…」


♣「次は 中央医療センター前
  中央医療センター前…」

♣「なんだって バス停から
  歩かなきゃならんのかね…」

♣バス停から病院までの道のりは
 慣れてこそいるが絶妙な距離に
 毎度うんざりさせられている
 なにしろ“アレ”を発症してから
 何年も経っているのだ
 今日も例に漏れず
 いつもの検診なのである


♣「最近目立つ体調の変化は??」
♣「いや…たまの喉の乾きで
  目が覚めるぐらいですね」

♣「そのほか 特に日中とか何かあります?」
♣「日中は特に 野外でも
  前ほど立ち眩みはなくなりました」

♣「うん 安定してるみたいですね!
  一応 いつもの吸血衝動を抑える薬と
  抗生物質 出しときますね~」
♣「ありがとうございます」
♣「抗生物質は 抑制剤による
  免疫力が低下したときになりやすい
  風邪の時とかに飲んでくださいね!」
♣「わかりました」

♣このやり取りも何度目だか と
 訝(いぶか)しげく思いつつ
 相づちを打つ  
 
 お聞き及びの通り私は
 現代を生きる“吸血鬼”なのだ

♣シチュエーションボイス
♥「おじさんとワタシ」
※タイトルコール


♥「ありがとうございました〜」
※和菓子屋の店員

♣病院の帰り道 いつも寄る和菓子屋
 粟饅頭に羊羹 もうなんだかんだ言って
 三月も半ばと言うこともあり
 桜餅を買った しかしこれは
 なにも私だけのものではない

♣「しばらく会ってないな
  姉貴も あの娘も…」


♣待ち合わせの喫茶店へ着くと
 まごついた まさか先に来てるとは…
♣「こっち着いてたらメールの
  ひとつぐらい寄越せよ姉貴」

♡「ごめんごめ〜ん
  この娘の学校終わりから
  すぐこっちに来たから
  予定より早く着いちゃった☆」
♣「ったく… 検診が
  終わったから良いものを」
♡「大丈夫よ さあ座って」


♣促されるまま席を着き
 二人を見据える 一人は自分の姉
 そしてもう一人は姪 である

♡「ほら ご挨拶なさい香織」
♥「久しぶり おじさん…!」
♣「久しぶりだな もう、高校も卒業か」

♣目の前の少女は学校の制服のリボンを
 揺らしながらクリームソーダを飲んでいた

♥「うん 来月からこっちの専門学校に
  通うことになったの」
♣「ん、姉貴…お母さんから聞いてる」


♣私が今日この日を面倒臭いと感じたのは
 まさにこの時間であった

♡「そうなのよ うしおくん✨」
♣「あのな姉貴…母親として
  心配にならんのか」
♡「なにが?」

♣「何がじゃなくてだな
  年頃の娘と中年のオヤジを
  ひとつ屋根の下に住まわせて
  大丈夫かと聞いてるんだよ」
♡「なぁんだそんなこと
  気にしてたの うしおくん😋」

♣けらけら笑う姉貴を昨晩の
 月夜の窓より恨めしく睨み
 はぁ とひと息ついて

♣「なぁ香織…お前はどう思う
  俺と生活する事に何も感じないか」

♣率直に問いてみた 春先から
 新たな学び舎で学び
 親元を離れ一人暮らしする
 むしろ自由な方が
 健全な暮らしを送れるだろうという
 老婆心でしかない とは言うものの
 女の子を一人暮らしさせるのも
 どうかと言うものではある訳だが
 だからと言って 自分の弟
 叔父と自分の娘を一緒に住まわすのは
 如何なものだろうか…

♥「…私は…おじさんと一緒が良い
  おじさんと暮らす」
♣「……………。」

♣なんとなく察しはついていた
 むしろ向こうから連絡きた時点で
 こうなるのは自明の理 俺の問も
 愚問である訳であった 

♡「ハイ 決まりね♪ さっそく
  引っ越しの日取り決めなくちゃ…」

♣「その前に」

♣俺は姉貴を遮(さえぎ)り
 絞り出すように二人に告げた


♣「良いか…俺は“吸血鬼”を
  発症している 確かに
  成人してから吸血衝動は
  出来るだけ抑えているが
  いつ何時(なんどき)
  香織を傷つけるかもわからん」

♣「それでも 俺を認められるのか」


♣香織は固唾を飲むようにこちらを見
 姉貴は少し驚いた顔をしてみせたが
 すぐ柔らかい表情を浮かべると
 からかうわけでもなく こう言葉を繋げた

♡「うしおちゃん 高校生の時に
  吸血鬼になって今まで
  どれだけ周りを大切にしてきたか
  自分でわかってるかしら??」

♡「付き合ってた彼女も
  同級生も そして私や
  お母さんも…それは
  うしおちゃんが口にださずとも
  周りはちゃんちゃんとわかってるわよ」


♣俺は無言でマグカップに目をやって
 ぼんやりと窓の外へ視線を移した
 街路樹と道行く人が流れていく
 そんな俺を香織はじっと見ているのを
 視界の端に感じていた 

♡「うしおちゃんなら
  わたしも安心なのよ だから
  この娘を 香織をよろしく頼むわ」

♣あぁ だから面倒臭いのだ
 そう言われたら俺だって

♣「…わかった 好きにすると良い」

♣と こう言うのがわかっていたのだ


♥「あの…おじさん!」
♣「うん? なんだ?」
♥「あの…これから
  よろしいね えへへ…✨」

♣緊張がほぐれ はにかむ少女の顔は
 春先前の西日を浴びて輝く
 桜の蕾そのものだった


♥「あぁ〜!桜餅だあ」
♣「こら 行儀が悪いな
  手ェ洗ってうがいしろ」

♣手狭な台所からリビングへ声をかけると
 彼女は はぁい と返事して
 手を洗いに行った 素直な娘であるが
 無邪気さは 自分の姉貴そっくりだと
 感じる事がたたある


♥「桜餅 いただきまぁす」
  ※食べた時のリアクションを
   アドリブで入れて良し
♥「桜餅食べると 毎回思い出すんだよな〜」

♣「ん? 何がだ?」
♥「私が高校卒業しておじさんと
  同居始めたばっかりの時期」

♣「あぁ 確かにな 同居って言い方も
  どうかと思うが」
♥「んじゃ同棲!」
♣「もっとあれだな」

♣ホント素直で良かったと思うが
 この日常を壊してしまわないかと
 思い悩むのが吹き飛ぶぐらい
 素直な姪に 俺は卑屈と慈愛を
 込めた笑みを浮かべながら
 そっと淹れたてのお茶を差し出す
 この瞬間を愛おしく感じるのであった

fin.

《あとがき》
ここまで読んで頂きありがとうございます
2023年10月にStandFMにて開催された
シチュエーションボイス企画である
「ヴァンパイアパーティー」の続編として
今回書いてみました 

前回と比較すると今作はおじさんの
姉と姪への接し方や立ち位置だったり
胸に秘めたる姪への気持ちだったり
「優しいが為に苦労人な中年男性」を
前面にだしてみたシナリオでしたね

(時系列として前作のさらに前の話として
読んでみると まだおじさんが香織の血を
吸ってない感がなんとなく伝わるかと…)

これから先 「血を吸った後の話」が
続編で書くと思うのですが
「絶妙な距離感の男女と吸血鬼ネタ」という
ジャンルを模索しながら書いていくので
よろしくお願いいたします🙇




 

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