Ⅷ 年金加入記録を探す 

 金崎の叔父の山本から、自分の年金加入記録を調べてくれという依頼が金崎にあった。叔父は、昭和55年から平成3年頃まで、あるコメ問屋で働いていて、当時、厚生年金に加入していたはずであるが、送られてきた年金定期便には、当時の厚生年金の加入記録が未加入となっており、調査してほしいという依頼であった。叔父によると、偶然、TVで年金記録に関する特集を見て、当時の職場の写真を探したら、職場の集合写真がでてきて、会社名も、写真に写っていたとの事であった。会社名もはっきりしたし、これで、自分の場合も、記録がでてくるのではと思ったそうである。
「そもそも本当に厚生年金に加入していたの?」と金崎が聞くと「当時、そのコメ問屋は20人以上働いており、フルタイムで就労していた。また、当時の同僚に聞いてみたが、コメ問屋での厚生年金の記録があると言っていたから間違いない。TVでも言っていたが、年金の記録は生きてきた証でもあるし、まだ、年金が受給できる年ではないが、早めに解決したい。」と叔父の山本は言った。
 それから、金崎はいろいろ年金について調べてみた。そもそも、「消えた年金事件」と、一時話題になったが、正確には、年金の記録が消えたという事ではなく、きちんと統合されていない年金記録が多数あるという事である。 
 「平成19年、年金手帳などに記載されている基礎年金番号に統合されていない記録(持ち主不明の年金記録)約5,095万件の存在が明らかになりました。この記録は、平成9年にそれまでそれぞれの公的年金制度ごとに異なる番号で管理していた年金記録を基礎年金番号に統合した際に、様々な理由により古い番号のままで残っていた記録でした。また、この他、紙台帳等で管理していた年金記録をコンピュータに転記する際に、正確に転記されていないケースなども見つかっています。」 と日本年金機構のホームページにある。
 記録が本人のものに統合されていない原因は、まず、登録の間違いのケースがある。名前・生年月日を間違って入力されているケースである。名前の呼び方が難しい、呼び方が複数ある場合に多いとの事であった。また、婚姻により姓が変わった・事業所がかわり、新たな番号で届け出た等の場合で、記録が一つに統合されていないままになっているケースもあるという。
 記録が本人のものと確認されたら、記録が統合されてその記録に基づいた年金が支給される事になる。すでに年金を受給している場合は、過去に遡って年金が受給できる事になる。この場合は、時効は適用されない。また、本人が亡くなった場合、遺族でも申請でき、その場合は、未支給年金として遺族に支給される事になる。との事であった。記録が見つかり、未支給年金が思いがけず高額になる場合もあるとの事であった。
 「では年金記録を調査してもらうにはどうしたらいいの?」と金崎は年金事務所に勤めている知人に聞いた。
「当時の姓名・加入期間・会社名・会社の所在地・当時の同僚名等を可能な限り思いだして、窓口にいき、調べてもらうといいよ。窓口で検索したら該当の記録が見つかるかもしれないね。全国には、同姓・同名で、生年月日まで同じ人もいるので、原則、検索して記録がでてきただけでは、統合できないよ。 窓口では、年金請求等の際に氏名検索等をするけど、本人の可能性がある年金記録があっても、「○年頃、○○市で働いていませんでしたか。」というような聞き方をし、会社名等を、本人が思いだせれば、そこで初めて本人のものとして記録が統合される事になるよ。だから、本人の記録とするには、会社名や所在地等を本人が申告し、一致する必要があるよ。窓口で検索しても見つからない場合は、調査を依頼する事になるよ。その時は、会社名や所在地、加入期間等を、可能な限り詳しく記載する必要があるよ。」との事であった。
 金崎が、叔父の山本に再度確認した所、当時も、姓は「山本」であり、勤めていた期間は、自分が高校卒業後から10年程度であるから、昭和55年の4月から平成3年頃になるとの事であった。会社名は「八幡商店」と写真にも写っていた。会社の所在地は「○○県○○市」だった。当時の同僚の名前は数名、覚えていると、同僚の名前を教えてくれた。
 金崎は後日、年金事務所に叔父の代理で行くことになった。一応、叔父から預かった当時のコメ問屋での集合写真を、もっていった。
窓口の担当者が、「じゃあ、検索してみます。」といい、記録を検索する。「ありました。八幡商店ですね。所在地も○○市で一致しています。加入期間は昭和55年4月1日から平成3年3月21日までとなっています。では、山本様の記録と統合しますので、この書類に記載して下さい。記録の統合が行われたら通知が届きます。一月ほど時間がかかります。」と言われて、あっさり叔父の記録は見つかった。
 金崎が無事、年金記録が見つかった旨、連絡すると、「ありがとう。これで、65歳からきちんと年金がもらえるようになる。」と大変、叔父は喜んだ。
 そういえば、金崎の父親と同姓・同名で、生年月日が同じ人物がいたらしく、父親が、特別支給の老齢厚生年金の手続きに行った時、「20歳頃、○○県で働いていませんでしたか?」と聞かれた。しかし、父親は、当時、働いてはいなかったし、その県で働いた事もない。その後、父親が67歳繰り下げしていた年金を受給しようとした時も、再度、年金事務所で同じ事を確認されたらしい。知人によると、現在は、老齢年金や遺族年金の請求時には必ず、統合されていない記録がないかを確認する事になっているので、その人はまだ、手続きをしていないのだろう?その人は今、どうしているのだろうか?と金崎は思いだした。 全国には、同姓・同名で生年月日まで同じ人がいるというのは、あり得る事なんだと改めて思った。
 
 
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