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青白い炎。

「体力の配分ミスっちゃった。МCまでモタナカッタ!」

さらりとそう言いのけ、屈託なく、半分誤魔化しながら笑う赤い炎を見て、正直、クソッたれと思った。クソッたれ、なんでそんな言葉が出てくるんだよ、と。最後までカッコ良く燃え尽きるんじゃないよ、と。

2024年1月21日。
なんてことない、日曜日。
なんてことない、渋谷。
数あるライブの中の、ただ1回。
たかが、20分である。

正直、迷った。
理由は多々あって。
予定詰め込み過ぎィ!って個人的なことだったり、日曜夜は割と翌日以降のために体力温存したいな、なんて個人的なことだったり、おろ?ちょっとチケ代するな?なんて個人的なことだったり。うーん、個人的なことだらけ。

逆に、理由は一つで。
大阪遠征以降、体調を崩してしまっていたメンバー二人、MAYUNAさん・ASAMIさんの復帰。
体調管理に関して本当に長けているSW!CHにしては珍しい、ライブ休演を挟んだ復帰ライブ。
駆けつけなきゃ、なんて驕りの塊のような想いだけど、ただただそれを頼りに会場であるClub asiaへ向かいました。


まずは、セットリスト。
ちょっと変化球な繋ぎはあったけど、レア曲をぶち込んだりするようなことは無く、20分に魅力をギュギュっと詰め込んだ形に。
Pinky Bandage⇒ラブゴナや、ブラカラ⇒ブラカラRemixのような普段多用する連荘曲を盛りこむ、切れ目の無い構成でした。
ライブ前、病み上がりのMAYUNAさんがXで『病み上がりにはハードなセトリ』と溢していましたが、合点のいく20分だったと思います。


本日も、ナイスバッティングのあさみん

SW!CHさんの良いところって、一つ一つのライブに凄くストイックなんです。それはメンバー自身が一つ一つの重みを実感していることは勿論なんですが、ここで言いたいのはどちらかというとライブを組み上げる方。
場所は?時間帯は?バックグラウンドは?対バン相手は?
いくつもの条件から曲を、順番を吟味した上で土台を作り、あとはそこにちょこんとメンバーを乗せる。そんな良いさじ加減だと私は勝手に思っていますし、もし、そういう意図じゃないとしてもそう勝手に感じる人がいる時点で一つの芸術としてはアリだと思っています。だから、勝手に思っています。だから、勝手に「あー今日も手の上で転がされたぁ~」って思っています。

でも、そんな大きな魅力がありながら、そんな魅力を自覚しながらも、今日はそれ以上にメンバーが凄かったんです。ちょこんと土台に乗せられたメンバーが躍動していたんです。

最初2曲、Pinky Bandageからのラヴゴナ。
楽しいは、全力で楽しく。
空いてしまった1回分も取り戻すように、全力で楽しむ姿。
端々に見せるメンバー同士のアイコンタクト、生き生きした表情、音を楽しむ姿。
細かいところは素人なので分かりませんが、ASAMIさんにしても、MAYUNAさんにしても病み上がりなんて言葉は全く似合わない。
カメラを端々で構えながら、存分に楽しませて貰いました。

お立ち台からの、たのしげインザスカイ


この笑顔が観たいのよ、SW!CHのライブでは。


病み上がり?



そして、後半2曲のBRIGHT COLORS ⇒BRIGHT COLORS (Qunimune Remix)。
見事な繋ぎから繰り出される、クールでメロディアスな曲。
燃え上がる『楽しい』という炎は一旦消え、いや、消えた訳ではなく。
炎はここで色を変えます。



赤い炎から、青白い炎へ。
一見、青という寒色の雰囲気から熱が下がったように見えますが、その実はむしろ逆。
舞台上の新鮮な空気を吸い上げ、どんどん温度を上げ、完全燃焼に向けた青白い炎を発す。


息遣い。


ライブも進み、一人一人の息遣いも増え。
音の切れ間に響く、足さばきの音に高揚する。
汗まみれの髪から覗かせる、微笑に我を失う。

もっと、見せてくれ。衣装の翻しを。綺麗なフォーメーションを。美しく燃えゆく青白い炎を。

横、一閃。


クールは根源だ。


もう。
この辺りから、唾を飲み込むことも忘れ、一瞬一瞬を逃さないように目を見開いて食い入るように観てました。

そして、最後の1曲。
先日、youtubeでもやっと公開された最新曲『アルタイル』。

ライブ終わり、話をした知り合いのはるちろヲタさんの言葉をお借りするなら、BRIGHT COLORS (Qunimune Remix)からの繋ぎも見事で。
ブツ切りにならない、フリも含めた繋ぎの妙。一続きの物語を観ているような没入感。

そんな中で、ひと際、か細くも青白く煌々と輝く炎。
本来、その深紅のような情熱でその場を照らす赤は、確かに息も絶え絶え。

青白い炎。

でもね、それが普通なのですよ。
個人的な話になり恐縮ですが、私も去年今年とコロナ・インフルに罹った身。
コロナもインフルも双方そうでしたが、療養後、体力が戻らなかったり、免疫がガクンと落ちて体調不良未満みたいな状態が続いたり。その苦しさや大変さは多少なりとも分かっており、そんな状態で踊ったり、歌ったりなんて想像するだけで吐き気しそうです。

実際、ライブの途中でふらつくようなシーンもちょっとだけ目の当たりにしたり。通常であれば、それはミスという括りに入ってしまうのかもしれません。

でも、そんな中で見せた血気迫る表情。


気迫に魅せられて。


苦しい、辛い、でも走り抜けなきゃっていう苦悶と隣り合わせの気迫。
完全じゃないことを言い訳にしたくない、だからこそ、今見せられるものを出し切る覚悟で。

少しずつ、出し切り。
少しずつ、出し切り。
小さくなっていく、青白い炎。
もう、消えてしまう。頼む、消えるな。クソッたれ、消えゆく姿が綺麗過ぎるなんてことあってたまるか。やめてくれ。いや、やめないでくれ。頑張れ。


歌声、強く、響き渡り。


歌声、美しく、響き渡り。

でも、不思議なことに、周りの、これまた青白い炎たちは勢いを増していくんです。
消えゆく炎の一瞬の綺麗な輝きに、負けないように。見たことない新しい空気を取り込み、呼応するかのように。

AKARI


HARUKA


FUYUKA
ASAMI


私の目が節穴なだけかもしれませんが、5人が5人ともに、見たことない表情のアルタイルを演じていました。
大好きで、何度も見返して、何度も心奪われたアルタイルなのに、私は初めてのアルタイルを今日観ました。

もう、圧倒させられたんですよ。
綺麗であるものを、綺麗だけで終わらせない何か。
そんな何かに心を奪われ、アルタイル後半は自然とカメラを下ろして、寸分でもその喜びを噛みしめながら、終わるな、終わるなと願っていました。


終演。
アルタイルの最後の一音が、無情にもClub asiaの高い天井に消えてゆきます。
出し切った青い炎は、本来の赤い姿に、そして炎もすっかり消え、隣にいる人にMCを託します。
で、冒頭に続く、と。あぁ、もう本当にクソったれだ。もう。


ここまで長々と書き連ねましたが、本当に濃密な20分間でした。
病み上がりの二人は、本当にお疲れ様です。
そして、病み上がりじゃない3人には敬服しつつ、本当に素敵なライブを魅せてくれて有難うございました、という感謝の気持ちで締めたいと思います。



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