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Wizardry4 Intermezzo

遥か昔より、更なる未来の何処か…




エルセナート大陸の覇権を狙うリルガミンの王トレボー。
彼の強すぎる権勢欲は突出した魔力を誇る魔導師ワードナを手元に措いた事で具体的かつ現実的なモノとなっていった。


しかし
お互いが胸に秘めていた本当の狙いは不幸にして同じだった… 不幸なのは人民であって, トレボーやワードナでない事は確かだが。





そして, 無限の魔力を有するアミュレットの発見と所有を巡る戦いは結果として大魔導師に軍配が挙がった!
酔いしれ過ぎて油断したトレボーは城の警備を通常配置に戻した途端, 数多のモンスター達を引き連れたワードナにいとも容易く破られた。
秘薬により微動だに出来ないトレボーと配下の近衛兵達へウインクを送る大魔導師は悠々と城を去るが… 何故だか遠くではなくリルガミン市内に迷宮=ダンジョンを築き, 其処に居を構えた。
その場に理由があるのか?







《狂王》と號されるほど癇癖(かんぺき)の強いトレボーは正に怒り狂い直轄軍に厳命を下した!
ワードナの殺害とアミュレットの奪還… しかし, もたらされる回答は『帰還者なし』
怒りの沸点を何度か越えた時, トレボーは本当に狂った。
もはや誰の言葉も理解しようとしないし, 誰もトレボーの事を理解できなくなっていったという…




宮廷首席魔導師によるクーデター騒ぎが少しずつリルガミン市民の脳裏から離れようとした頃, もはや生きているのが不思議なほど衰弱し, かつ憎悪にまみれていたトレボーは一つの布告をまるで遺言かのように出した。

告 ; リルガミンは優秀な人材を欲している!
裏切り者である魔導師ワードナを討ち取りアミュレットを持ち還った者には身分の如何に関わらず賞金と正騎士の称号を与えるものとする。
アミュレットの奪還のみでも可。ワードナの討伐のみは証拠品が必須の上で騎士とする。
なお, この公示に時間の制限は設けない。

もはや望みは自身が切り捨て続けてきた市井の民だったのだが, しかし市民の側にも吝かではない理由は有った。
金と名誉…其処にあるのは憎しみでも平和への希求でもなく, あくまで己が為だけの強力にして純粋な存在。


そして
あらゆる種族, 職業, 階層の人間がリルガミンに集い『我こそは!』と勇む足を止めようともせず, 自らの約束された将来が詰まっていると妄想した迷宮へと向かわせた。
彼ら冒険者の大半はトレボーと同様に切実かつ純粋な理由がありながら, しかし目的の最終到達地点に大きな違いが在った為, 月日と共に迷宮の探索や意義も大きな変化を余儀なくされていったのだが…












そんな倦怠した日々の積み重ねが崩れる瞬間が訪れた。

"彼ら" の出現はリルガミンにある種の革命すら引き起こした。
何故なら冒険者の殆どは目先の金品に早々に心を奪われたり, 深い階層で己の限界を知らされたりして本来の目的であるワードナの殺害とアミュレットの奪還を忘却の彼方へ措き去りにしてしまう事象を根本から覆したからだ。
幾多の流血の果てに在る名誉とは?
突き詰められた命題の答えは出されないまま "事実" だけが繰り返され, 周囲の脚色により新たな秩序が打ち立てられる人の世はかくも各々の思惑が複雑に重なり合って創り上げられる… 正に迷宮なのだ。

エルフの忍者ホークウィンドがリーダーを務める一団《ソフトーク》が遂にワードナの基に辿り着いた!
前室を護衛するモンスター達を蹴散らすと雪崩れを打って奥の執務室へと踏み込む!!!


『き… 貴様!』
アミュレットが持つ真の力の解明に没頭し過ぎていたワードナは油断していた。
若き暗殺者に心臓を貫かれながら肉体を修復する呪文を唱えようとしたが, 彼はかなり修練を詰んだらしく呪文の詠唱前に全身の力が完全に抜けてしまった。

意気揚々の暗殺者達が部屋から立ち去った後, ワードナの身体を取り巻く "見えざる魔法施術" が少しずつ渦を為し宿主の蘇生を試みようとしたが遂に叶う事はなかった… ワードナは死んだのだ。



晴れて英雄となったホークウィンドの言葉が漆黒となったワードナの執務室の外で響き渡る。
『城へ連絡をとれ! … 奴らはこれから大工仕事で忙しくなるぞ』
彼の頭は大好物の寿司をたらふく平らげる事で占められていたが, やはり素直に疑問が残る。
『… それにしても, いくら相手が大魔導師とはいえ死んだ後の事まで心配せにゃならんとは… 』
寝室の天井裏から秘かに覗いたトレボーの姿は盲執の悪鬼と化していたが, 微かに恐れも感じ取られた。
『何を… 』そんなに恐れる必要があるのか, 其処まで考えてホークウィンドは意図的に思考を遮断した。
自分達とは関係ない話だったからだ。
今は未だ…



















《ソフトーク》団の騎士身分への就任式の最中にトレボーは頓死した。
本当は "悶死" だったが敢えて事実は伏せられ, リルガミンは平静を装いながら新しい時代へと突入するのだ。
もたらされた一時の平和という儚い状況は全ての存在に等しく安静と快復の期間として機能する。

やがて旧き時代の亡霊が再び目を醒ますまでは…

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