成長著しいアフリカのフィンテック企業Safaricomの半期決算

ケニア最大の携帯電話キャリアであり、かつ同国最大シェアのモバイル決済・貯蓄・保険サービスを展開しているSafaricomの上期決算が公開された。

ケニアはインド洋に臨む東アフリカ沿岸に位置する。サバンナの国立公園が有名であるが、一人当たりの所得の増加、若い若年人口、都市人口増加に支えられて、近年急速に発展している国々の一つである。一人当たりGDPではインドと同程度であり、これからの10年で大いに発展することが期待されている。

ケニアの一人当たりGDP(出展:Google)

日本の携帯キャリアは契約人口の行き詰まりに直面しており、paypayやaupayのような決済サービス、dポイントのようなポイント経済圏を作ろうと模索しているものの、その成果は芳しくない。
一方でケニアのような国はATMや銀行支店が存在せず、靴下の中やマットレスの下が人々の預け先であった。しかしモバイル金融が登場したこと、中国や韓国の格安のスマホや基地局が普及したことで、先進国の金融システムを飛び越えたモバイル経済圏が登場した。
世界で進むインフレやドル高による自国通貨安で経済は傷んでいるものの、23年上期の決算では、M-PESAは昨年比で+45億ケニアシリング、モバイルデータは+27億ケニアシリング増加している。月間アクティブユーザー(MAU)も3,247万人と昨年比+2.3%となった。
Safaricomはケニアにおいて3分の2のマーケットシェアを持っており、ダントツの地位にある。とくにフィンテックサービスのM-PESAはほぼ独占的である。

フィンテックサービスのM-PESA、携帯データ通信料の増加が売上成長を支える(同社資料より)

Safaricomの中核プロダクトであるM-PESAは、ケニアの人々にとってなくてはならない金融インフラとなっている。M-PESAは下図の通り、個人間の支払い、貯蓄だけでなく、保険や納税、ビジネスでの当座預金、与信を担っている。ATMがなくとも、モバイル1台あれば人々は買い物や病院の受診、ローンの組成を行うことができる。

M-PESAは個人だけでなくB2B決済や納税、保険でも使われる(同社資料)

事業の成長は続いているものの、新興国リスク回避姿勢が強まっていること、インフレやウクライナ紛争による食料不安、ドル建ての収益性低下が懸念され、株価は軟調である。長い目で見ればケニアのマクロ経済の強さと、Safaricomのシェアの高さは株価を反転させる材料になるだろう。

株価は軟調傾向(WSJ)

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