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スキデス ハナミズキ

この地域に移り住んで10年近いが、「こんな道があったのか」という出会いがある。

子どもの習い事の付き添いで、子どもらを先頭にして、自転車でついて走っていると思いも寄らない道を通る。

「お母さんに教えてもらった」とその子らが言う道は、住宅街を通る道で、細く、車も人通りも少ない。さすが地元の人が使う道だ。

先日、いつも利用している商店街の外れに大きな石碑があることに初めて気づいた。自転車を止めて読んでみると、「この地域には、渡来人が多く渡り住んでおり、多くの豪族の墓である古墳が多いのだ」と力強い口調で書かれていた。

そういうわけで、古墳を避けてできた道が多く、真っ直ぐな道を走っているはずが、思いも寄らない場所に出ることも多く、時間もない為、冒険もできず同じ道ばかりを使っていた。

それから、商店街に行くのにこの道を利用することに。地元の神社を中心に形成されたであろうこの住宅街は、建っている家も小規模で、車の出入りを考えていなかった時代の造りであり、ふんだんに植物を植えている家が多い。塀のない家がほとんどなので、植木も外からよく見える。

この道を知ったのが、去年の秋頃だったので、今年の春になって初めて気づいたことがあった。

なんとも可憐な色の花をつけるハナミズキ。

日本人は、桜を異常に愛でるが、4月、ハナミズキもそこかしこで花をつけている。庭木としても人気で、この時期には、これもハナミズキだったのかと気づくことが増える。

そして、面白いのが、花の色が木によって違うのだ。我が家の向かいの家のハナミズキは純白の真っ白。葉もはっきりとした青みがかった緑。

自転車で走りながら、この家は濃いピンク、この家は緑がかった白。なんて、それぞれの家で個性的に咲き誇るハナミズキを見るのが楽しい。

そして、たぬきちの1番の好みの花色のハナミズキに出会った。それが、冒頭の子どもらに教えてもらった道にあるハナミズキ。

白い花びらの、花先だけがほんのりうすいピンク色をしていて、なんとも可憐なのだ。そして、葉の色も同じく葉先がほんのり赤みがある。

なんともかわゆい色合い。通りかかる度に、その可憐さに悶絶している。調べると、「ステラピンク」と言われる品種のようで、ハナミズキとヤマボウシのハイブリッドだそうだ。

赤ちゃんのふっくらしたピンクの頬のような色合いで、まるで機嫌の良い赤ちゃんがケタケタと笑うように、大ぶりな花が揺れる。

そんなどストライクなハナミズキに会うのが最近の楽しみ。

実はわが家もハナミズキを植えている。多くの家ではセメントを敷くであろうごくごく小さな土の部分に、無理やり植えているので、土の栄養も低いのか、かれこれ5、6年にはなるが、葉ばかりのハナミズキで、数年前からやっとポツっとひとつ、ふたつ花をつけるようになった。

冬の枯れ木の時期を過ごし、いつの間にか柔らかい新芽をつけた我が家のハナミズキが、今年は玄関の通り道の方まで枝を伸ばしていた。葉が着いた時に、思いのほか、危ない長さまで枝が伸びていることに気づいた。

ちょうど、子どもらの目の高さにあって、危ない。しかし、みずみずしいかわいい新芽をつけており、切るに忍びない。

こだぬきずらに相談すると、「俺たちが気をつけるから切らないで」と言ってくれた。開いたその葉先を見るとほんのり赤い。今年はいくつ花を咲かせてくれるか。

先日、枝の1番の高いところで、ポツンと1つ花が咲いていた。最も流通しているタイプのチェロキーチーフと言われるタイプで白地に花の端が濃いピンク色。

それでも1つ咲いたことが嬉しかった。また、栄養材を足しておこう。

満開に咲き誇るハナミズキでは無いけれど、我が家のハナミズキもこうして、家人を楽しませてくれる。

ハナミズキの花言葉は
「返礼」「永続性」「想いを受け取ってください」といった意味で、感謝や永遠の絆、相手への深い思いやりを象徴しているそう。

ハナミズキを思うこだぬきずらの気持ちにぴったりで、ハナミズキもまた、2人の成長を見守ってくれているようで、我が家のハナミズキもまたなんともいじらしいのである。

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