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CB Insights「生成AIバイブル」解説

スタートアップやVC投資に関する最新動向を提供する米CBインサイツ社より、「Generative AI Bible」との名前で生成AIに関する包括的なレポートが出ました。生成AI関連の動向を網羅的に学べる良い内容なので、以下解説していきたいと思います。

■生成AI発展の歴史
まずは生成AIの発展に関してです。チャートからわかるように、2015年頃から急速にAIによるコンピューターリソースの使用量が上昇しています。これはモデルが大きくなっていること、つまりAIが急速により高度に発展してきていることを示しています。

こうしたモデルのパフォーマンスは、同様の時期より人間のパフォーマンスを超えるようになってきました。

年表としては、2014年頃からAI技術の急速な発展が進み、DeepMindやGoogle、OpenAIにより、画像、音声、文章などの領域で発展を続けました。2020年にDeepfakesという偽動画が話題になったことも、こうした技術の活用が背景にあります。2022年には、現在でも話題の「文章ー>画像」のサービスが次々と出始め、クリエーティブ領域で注目されるようになりました。そして2022年の10月、OpenAIがChatGPTを公表したことにより、一気に生成AIへの注目が広がり、現在の生成AIブームへと至ります。

それはどれくらいの熱狂だったのか。よく使われるスライドはこちらで、100万人のユーザー獲得のためにChatGPTはたった5日だけだったというグラフです。ネット時代をけん引してきたスターのサービスでも数か月から数年かかっています。

そして熱狂を示すのがNvidiaの成長です。ゲーム向け半導体がAI半導体に活用可能とわかり、Nvidiaは90%を超える独占状態をキープしており、時価総額1兆ドルを超え、大手テック企業の仲間入りを果たしました。米テック大手はいまではGAFAではなく、NvidiaとTeslaを加えたM7(マグニフィセント・セブン)と呼ばれます。これは、黒澤明監督の「七人の侍」の米リメイク版、西部劇映画の「荒野の七人」を参照しこう呼ばれています。

■生成AIの投資動向
次に投資の動向です。生成AI領域の盛り上がりは投資実行の数字にも表れており、投資件数は右肩上がりで2023年現在では170件、金額は$17.4Bにまで達しています。(そのうち$10BがマイクロソフトによるOpenAIへの投資です。)

投資に関する領域は、こちらは重要なスライドと思いますが、金額ではインフラが一番トップで、件数では真ん中の汎用的なサービスがトップです。こちらは今後レポートでも述べられますが、セコイアなども言及している点で、まずインフラ(モデル)に巨額投資が集まり、徐々に汎用サービスも発展してきており、今後はいわゆるVerticalの業界特化型サービスが発展する、という展開が見て取れるスライドです。

ではいったい誰が巨額な投資しているのか。それは大手テック企業です。各社ネット時代の繫栄後の次のステージでも取り残されないように、モデル領域のスタートアップに巨額投資を進め、自社サービスのAI化、AIプラットフォーム提供を目指しています。

マイクロソフトもインフラからアプリケーションまで広い領域のスタートアップに投資し、アマゾンもAWSの生成AIアクセラレーターによりエンタメ、ヘルスケア、広告、教育から金融まで様々なエリアのスタートアップへの投資を進めています。

ここでも目立つのはNvidiaで、投資件数でも右肩上がりで、他のテック企業や著名VCを差し置いて投資件数はトップの位置にいます。これは半導体供給だけでなく、上流のモデルの領域など、広く生成AI領域全般での成長を目指す姿勢が伺えます。

■生成AIスタートアップについて
最後にスタートアップに関してです。実際にどのような企業があるのかについてです。前述のように、最も投資を集めているのはインフラ、モデルレイヤーの会社で、こうした会社がユニコーンに成長してきています。

またこうしたモデル企業の中でも、オープンソースかどうかでカテゴリーが分けられており、今後どのようにモデルが発展を続けるかに関して一つの注目の論点と言われています。

次にアプリケーションのレイヤーに関してです。ここでは汎用サービスは大手テックも同様のサービスを提供していることより、プレッシャーは大きいと言われていますが、その中でも、AIアシスタント、テキスト、画像や動画など、多様な領域で業界横断てきな汎用サービスへの投資が進んでいます。

ではスタートアップやVCにとっての投資機会はどこにあるのか。セコイアのレポートと同様、CBインサイツでもVerticalの業界特化型のサービスが注目領域と述べています。ここではヘルスケア、金融、小売の三つの領域が例として挙げられています。

医療の領域では、創薬、リサーチ、患者ステータスの複製、患者とのコミュニケーション、健康管理、データ合成、放射線画像精度向上の7つの領域での活用可能性が示されています。

金融ではアシスタントサービス・カスタマーサポート、財務・市場分析、合成データの3つが示されています。保険の領域では営業販売、引受、請求の3つの業務領域が示されています。

最後に、小売領域では、商品画像・3Dイメージ生成、カスタマーサポート、商品概要文章生成、マーケティング素材生成、ファッションデザインの6つの領域が示されています。

以上、CBインサイツのレポートのまとめでしたが、歴史、現状から個別事例まで良い感じでまとまっていていいレポートかと思われます。内容的にはセコイアやa16zと同様、インフラ、Horizontal、Verticalに関しては近い視点であることがわかります。またVerticalの領域では別途レポートがあるようで機会をみて詳しく解説していければと思います。


出典
Generative AI Bible: The ultimate guide to genAI disruption
(CBインサイツのレポート)

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