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生成AI海外事例1

今後、生成AI関連の領域ではいわゆるバーティカル型の特有の業界に特化したサービスの普及が進むと言われています。

ポイントとなるのはデータとワークフローという二つの概念です。データに関してはこれまでのインターネットサービスの領域と同様に、ユーザーが利用するとデータが蓄積され、その活用によりより良いサービスを提供できるという点で重要な要素の一つとなります。とりわけ、医療など、データへのアクセスが難しい領域では、AIサービス展開における一つの強い優位性になると言われています。

もう一つがワークフローで、こちらもソフトウェアの領域と同様に、バーティカルのサービスでは、いかにその業界特有の日々の業務フローに則ったサービスが提供できているか、従業員が今すぐストレスなく活用できかつ業務量が削減できるかという点が重要です。生成AIを活用したサービスといえども、業界に特化した日々の業務フローにしっかりと合うサービスでなければ普及が難しくなります。この二点がスタートアップがMoatにとって重要と言われていますが、以下、具体的な事例を見ていきたいと思います。

一社目はHarvey社で、法律領域に特化したAIサービスを提供しています。2022年創業、本社は米サンフランシスコで、従業員は8人、これまでに$26M調達。シリーズAでOpen AIやセコイアキャピタル、Elad Gilなどから$21Mを調達しています。

Open AIの支援の下でChatGPTのテクノロジーをベースに、契約内容の分析、デューデリジェンス、訴訟、規制対応、コンプライアンス等の法務業務全般に関わるサービスを提供しています。3月にはPWCとのパートナーシップを発表し、同社の法務、税務プロフェッショナルの業務効率化と高度化への活用が期待されています。日々ChatGPTを使っている中でも、こうした専門領域でのサービスの発展はイメージしやすいと思います。

PWCウェブサイトより

会計、税務の領域ではpilot社が生成AIを活用したサービスの展開を始めました。同社は2017年に設立、本社は米サンフランシスコで、従業員は352人、現在のValuationは$1.2Bで、ジェフベゾス、セコイアキャピタル、アメックス、Index Ventures、Stripe、Techstarsなどが株主です。

pilotはこれまでスタートアップ企業を中心に1700社以上に会計サービスを提供してきました。今年OpenAIと提携し、記帳などの単純作業の効率化と、それによる会計士などのプロフェッショナルのより高度な業務に集中できるような状態を目指すと発表しています。この領域は日本でもマネーフォワードやUpsiderも同様のAIサービスの展開を目指しており、co-pilot的なサービス提供において一つの注目領域となっています。

pilot社ウェブサイトより

次は翻訳関連のサービスを提供するLilt社です。同社は2015年創業、本社は米カリフォルニアで、従業員は150人。現在のValuationは$385Mで、セコイアキャピタル、Intel Capital、Redpoint Venturesなどが株主です。

翻訳だけに限って言えばChatGPTやDeepLなどを活用する人は多いですが、Liltは主に企業向けのサービスを提供しています。様々な国でサービスを提供する企業にとっては、各国のウェブサイト、製品ページ、マーケティング、広報、IRの資料をすべて完璧に翻訳するのは中々手間のかかることで、完全に対応しきれていない会社が多いと思います。こうしたペインポイントの解決を目指し、Lilt社はサービスのワークフローやマーケティング業務の隅々までローカライズを完成させることを支援しています。


次はヘルスケアの領域です。創薬の領域でAI活用を進めるInceptive社の紹介です。2021年創業、本社は米国のカリフォルニアで、従業員は35人、現在のValuationは$500Mで、シリーズAでNvidiaやa16zなどから$100Mを調達しています。

元GoogleのAIエンジニアが創業者で、AIを活用し、分子の組み合わせの分析により創薬に活用するというAI x 創薬の中心的な領域で活躍しています。コロナのワクチンで有名なmRNAの分子の分析、設計のサービスを提供しており、ヨーロッパの大手製薬会社と感染症ワクチンの開発に取り組んでおり、700以上のプログラムを進めています。AIにより設計、検証された創薬用の分子のライセンスを製薬会社に供与するビジネスモデルです。

Inceptive社ウェブサイトより

同じくヘルスケアの領域で代表的なスタートアップと言われれるのはHippocratic AI社です。2022年創業、本社は米カリフォルニアで、従業員は42人、現在のValuationは$220Mで、シードラウンドでa16zやGeneral Catalystなどから$65Mを調達しています。

同社は医療領域特化のLLMの開発を進めています。医療の専門家もモデル開発に参加し、倫理に配慮した開発とサービスの提供が目指されています。医師の診断、患者とのコミュニケーション、医療従事者の学習支援等、様々な領域での活用が期待されています。米国では医療従事者の不足や不十分なサービス提供が大きな課題となっており、Hippocratic AIのような生成AIサービスが貢献する役割には大きな期待が寄せられています。

以上は一例ですが、今後ますます生成AIを活用したサービスが普及していくと言われており、これらの情報が起業アイデア、投資候補、自社製品開発などのためにお役に立てばと思います。

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