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生成AI関連領域の今後の発展について

生成AIに関しては今年は様々なサービスの誕生や巨額の投資など、色々な動きがありました。今後、どのような発展を辿るのか、スタートアップ投資としてはどのような領域が良いのか、セコイアキャピタルの議論を参照しながら説明したいと思います。

セコイアのプレゼンテーションでは、生成AI領域の発展が三段階に分けて説明されています。第一段階の現在では、半導体に関してはNvidiaのGPUシェアが90%以上となり、入荷に1年待ちなど、供給に制約がある状況となっています。同時に、OpenAIによるChatGPTが生成AIの代名詞として普及しているなど、汎用的なサービスが普及している状況です。

セコイアキャピタルの発表より

これが次の段階となると、引き続き半導体へのニーズは高いものの、AMDやインテル、GoogleもAI専用半導体の提供を発表するなど、徐々に供給側の制限は解決されていくと言われています。また現在の特徴ではLLMの開発が進み、そこへ巨額な投資がBig Techにより実施されているという状況ですが、ニーズを基に考えると、すべての用途にそれらの巨大なモデルが必要ということではなく、徐々に小型で効率的なモデルの開発と活用が進む形です。またインフラの部分ではベクトルデータベースという、従来の表形式のデータベースよりも効率的なデータベースの開発、活用が進むのも追い風という状況です。

こうした状況の中、引き続き、他社に先行して大手クラウド3社によるクラウドサービスの提供が発展し、スタートアップ等にとって生成AI活用の素地が整っていきます。同時にリソースの多様な大手テック企業による汎用的なサービスがより普及、定着していきます。これは直近ではMicrosoft Copilot、Google Bard、AI搭載アレクサ、セールスフォースのアインシュタインなどのイメージです。

では長期的にはどのように発展するのでしょうか。ここではソフトウェアの領域でも業界特化型のサービスを示す際に使われてきた概念である、いわゆるVerticalの領域でのサービスが普及すると言われています。これまでもSaaSにおいてVerticalの領域は一つの注目エリアだったのと近いイメージかと思われます。

ここには複数の理由があります。一つ目は上記で言及のインフラの改善です。クラウドサービスの発展でより生成AI活用に特化した製品が普及し、またモデルの小型化、データベースの効率化などにより、オペレーションのコストも低下すると言われている点より、スタートアップでも生成AIサービスの提供が容易になることです。

二つ目は、こちらはSaaSでも同じですが、表においても言及されているワークフローとデータに関する点です。ワークフローに関しては、Vertical SaaSではその業界の業務を知り尽くしたサービスでないと、現場ですぐに導入可能な製品の提供が難しかったのと同様、いくら生成AIが普及したとしても、現場の業務に合っていないと無駄な工数やコストが発生するだけで導入が進まないという点です。次にデータという点に関しても同様で、特にヘルスケアや産業領域では、一般のインターネットサービス関連の消費者行動のデータと異なり、データ保有者が限定されており、活用可能な事業者も限られています。これらが強みとなり、SaaSと同様のVerticalのサービスが普及すると言われています。

最後に、競合の環境です。現在の発展状況では大手テック企業による汎用サービスが普及しています。こうした企業、サービスと競合しても、投入リソースの差で非常に厳しい競争となることが想定されます。したがって起業の際にも、投資の際にも、この点には注意しつつサービス展開を考えていく必要があります。

このApp領域がHorizontalとVerticalにより構成される(a16zのレポートより)

以上が直近、生成AIに関して、特に海外の事例では様々な業界特化のサービスが出始めている背景と言えるでしょう。去年秋のOpenAIによるChatGPTの公開からまだ一年ほどという新しい業界なので、上記は現段階での仮設的な要素で、まだまだ様々な条件で今後の業界の発展や投資機会なども変わっていくと思われます。引き続き、業界の発展には注意しつつ、次回以降は実際の事例に関して個別に見ながら最新動向への理解を深めていければと思います。

出典
Generative AI’s Act Two
https://www.sequoiacap.com/article/generative-ai-act-two/

Who Owns the Generative AI Platform?
https://a16z.com/who-owns-the-generative-ai-platform/
(表紙画像もこちらのページ画像より)

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